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【うちの本棚】165回 遊星仮面/楠 高治

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは楠 高治の『遊星仮面』です。

アニメ本編のキャラクターデザインを担当した作者によるコミカライズであり、アニメがそのままマンガになった感も強い本作。単行本化の機会もなく、40年の時を経て初めて単行本化されました。

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遊星仮面-上 遊星仮面-中 遊星仮面-下

  • 『遊星仮面』は1966年6月から1967年2月に掛けて放映されたテレビアニメで、本作はアニメのキャラクター設定を担当した楠 高治によるコミカライズ作品。

    地球と太陽の反対側を同じ軌道で回っているピネロン星が発見され、そこに住む人々とも交流ができ、地球人とピネロン人との結婚も珍しくなくなっていたとき、ピネロンの大都市の上空で核物質を積んだロケットが爆発。それを地球からの攻撃と受け取ったピネロンが、地球に対して戦争を仕掛ける。爆発したロケットに乗っていた地球人の息子で、ピネロン人の母を持つピーターは地球のピネロン人収容政策によって母とも離ればなれにされ、ソクラトン教授の家に引き取られることになった。そして、父から託されたコスチュームをまとい正義の使者「遊星仮面」となって一方的なピネロンの攻撃から地球を守りつつ、戦争を止めようとするのだった。

    アニメのキャラクターを担当した作者によるコミカライズということでビジュアル的に違和感がない上に、複数の雑誌掲載も同じ作者が担当しているということも本作の特徴と言っていいだろう。また、同じエピソードを重複して描くということがないのも本作品の特筆すべきところだろう。

    アニメを制作した「TCJ(現・エイケン)」の作品では、ほかにも『遊星少年パピィ』、『冒険ガボテン島』でもそれぞれキャラクター設定を担当した井上英沖、久松文雄がコミカライズを手がけていた。

    このような例は案外少なく、近年では貞本義行の『新世紀エヴァンゲリオン』や中村嘉宏の『オーバーマン キングゲイナー』などがある程度だと思う。
    『遊星仮面』といえば、「誰だ!」「人呼んで遊星仮面」という決めゼリフも有名だが、アニメ本編では遊星仮面をみた人々にそう呼ばれ、本人が「人呼んで~」と名乗るようになる過程も描かれているようだが、コミック版ではそれはなく、いきなり「人呼んで~」のセリフと共に登場している。

    作画を担当した楠 高治はほかにも実写テレビドラマ『恐怖のミイラ』のコミカライズなども手がけていた。『8マン』の桑田次郎のアシスタントを務めていたこともあり、キャラクターが似ている以外にも、シャープな描線やスピード感のあるコマ運びも影響を受けているようだ。

    単行本化されないままになっていたが、アップルBOXクリエートから自費出版の形で刊行されたあと、パンローリングのマンガショップシリーズで複数雑誌掲載の全ての作品が全3巻にまとめられた。
    「戦争を止めろ!」というストレートな主張と共に、いま読み返してみるべき作品のひとつだと思う。

    遊星仮面/楠 高治(原作・仁田信夫/脚本・足立 明)
    初出/集英社「少年ブック」(1966年7月別冊付録~1967年3月号別冊付録、4月増刊)、小学館「小学館ブック」(1966年8月号~1967年3月号)、小学館「小学三年生」(1966年9月号~1967年3月号)、「よいこ」「幼稚園」
    書誌/パンローリング・マンガショップシリーズ(全3巻)2007年12月3日初版発行(3巻共)
       アップルBOXクリエート

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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