本連載では、数多くある漫画から選りすぐりの1冊をピックアップ。その「第01巻だけ」レビューをお届けしています。
「魔法少女って…ふざけてんのかよ…!?」
主人公・貴衣(きい)のセリフですが、筆者も同感。
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平凡な毎日を送る高校生・貴衣は、ある朝校門に現れた「魔法少女」が導くまま異世界へ旅立つことに……はならず、謎の生物「魔法少女」が生徒たちを虐殺する学校から脱出するハメに。え、これだけ? と思うかもしれませんが、あらすじは以上! 基本的に本作は理不尽&不条理を貫いており、その周りで多くの登場人物たちが無残に命を奪われていきます。
美少女が変身して悪を懲らしめる素直な「魔法少女もの」が、『魔法少女まどかマギカ』でひっくり返されて以来、同ジャンルへの“盲信”は少しばかり見直された気がします。とはいえ『まどかマギカ』でさえ主人公は美少女、可愛く変身、いちおうマスコットも登場など、最低限「魔法少女もの」らしさは守られていました。
しかしながら本作『魔法少女・オブ・ジ・エンド』は魔法少女と銘打ちながら、そういった「らしさ」はほとんど存在しないどころか、むしろスプラッター! パニック、パンデミック、ゾンビ、ホラー要素が満載なのです。
「まじかるー」「まじかるー」と作中に出てくるものの、本作にまったくマジカルな要素はなく、どちらかといえば「かゆ…うま……」に置き換えたほうが良いんじゃないかと疑うレベル。「チャンピオン」史上最大級のタイトル詐欺かもしれません。……いや、いい意味で!
本作のような「パニックホラー」では、迫力と緊張感を生むために描写力が肝心ですが、その点は見事なもの。少年誌なのに「よくここまでやれた」グ●描写を随所に散りばめながら、たまに嬉しいエロ描写を織り交ぜ、駆け抜けるように物語は進んでいきます。むしろ、同誌掲載の『グラップラー刃牙』シリーズのようにテンポ良く読めすぎて、1話ずつじゃ物足りないくらい。複数話楽しめる単行本がありがたい。
さて、第01巻では貴衣と幼馴染・つくねを中心とした高校生グループが学校から決死の脱出をはかり、これまたゾンビもの定番のショッピングモールに逃げ込むまでが描かれます。依然、襲いかかる「魔法少女」たちの正体は不明なままで、分からないことこそ「ホラーのスパイス」なのだと実感させられつつ、ページをめくる手がはやります。
『魔法少女・オブ・ジ・エンド』は、人を食ったようなタイトルや、過激かつ刺激の強い描写が目立つため、異色作と目に留まるかもしれません。ただ筆者は、読者の本能に訴える、とにかく次のページが読みたくなる作品こそ「少年漫画」の王道と思います。その意味で本作ほど少年漫画らしい作品も、近年珍しいのではないでしょうか。肝試し、怪談のお供にもおすすめです。まじかるー!
記事・画像協力:『魔法少女・オブ・ジ・エンド』
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