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僕らオッサンは『私がモテてどうすんだ』つっこみながら読むよ?/第01巻(だけ)レビュー

 本連載では、数多くある漫画から選りすぐりの1冊をピックアップ。その「第01巻だけ」レビューをお届けします。

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     「王子様の隣にはお姫様なんて 誰が決めたのかしら?」
     「王子様の隣には王子様 それがいいじゃない!!」

     ……などと体育の時間、バレーボールをしている男子クラスメイトを見て脳内カップリングを愉しむ女子高生・芹沼 花依(せりぬま かえ)。アニメ・ゲーム・声優など2(.5)次元にとどまらず3次元の、身の回りの男子すらも「スキあらば カップリング」の対象にしてしまう、いわゆる腐女子な女の子です。

     そんな花依がひょんなことで変身してみたら、実はうん千年に一人レベルの超絶★美少女でした。登校したら、カップリング対象の美男子4人から同時に告白されて困っちゃうーっ。というプロローグですが、激ヤセした原因が「好きだった男が死んだから※アニメ」、「イケメンにモテてたくない。イケメン同士がイチャつくのを見たい」と、変身を遂げてなおこの「腐り」っぷり。

     まさかのモテ期到来もまったく無意味! もはや清々しいぞ!! ――そんなわけで今回は、『私がモテてどうすんだ』(以下、『私モテ』)です。

    私がモテてどうすんだ

     けっきょく美男子4人とは、1対4デートを敢行する花依。さわやか真っ直ぐスポーツ男子・五十嵐、元サッカー部でちょっとワルい感じ・七島、物静かな文学青年風の先輩・六見(むつみ)、トゲもあるけど可愛い後輩キャラ・四ノ宮と、お相手はバラエティ豊かな面々。
     これに対して花依の腐仲間・あーちゃん曰く「乙女ゲーか」。いやいや、普通そこは「ハーレムか」とか「バランス悪い合コンだな」とか言うでしょ! まったくこの腐女子たちは~ と読みながら心の声でつっこんだ瞬間、筆者は思い至ったのです。オッサンが『私モテ』を120%楽しむには、「つっこみ」ながら読むのが良いのかも、と。

     当年とって33歳をむかえるオッサン=筆者にとっては正直、腐女子の方々と価値観にかなりの「溝」があり、心底「いいね!」「そうだね!」と言えない場面も多々あるのです。……が! 本作『私モテ』を読んで考えるに「つっこむ」ことでその「溝」さえも楽しんでしまう、そんなポジティブな姿勢で向き合うのもアリなのでは? というわけで、つっこみながら読んでみましょう。

    ▼腐仲間・花依&あーちゃんの台詞 より▼

    「七島ってやっぱりミラ・サガのシオンに似てるよねーっ」
    ⇒いや、リアルの人間を2次元で例えるなよ。というか“やっぱり”って、どんだけ妄想してきたんだ……。

    「美少年は気高くツンであるほど おいしいでしょー?」
    「ウフフフ…」
    ⇒おいしいって、この文脈で使うとなんてイヤらしい響きだよっ! 笑いも邪悪でヌメヌメした含みしか感じない!

    「見た!? 七島がやったことなのに 五十嵐が謝ったよ!!」
    「カップル? カップルなの!? カップルだよ!!」
    ⇒ツレの代わりに謝っただけでカップル認定かい!? おちおち謝罪もできないよっ! 友だち減るわっ!

    「七島くんを見ると シオンを思い出しちゃう…!」
    ⇒いや、だからリアルの人間を……。というか、シオン好き過ぎるだろ! いつまで引きずってんだ!?

    「男の傷は… 男でしか埋まらないのよ」
    ⇒だーかーらっ! その男ってシオンだろォォ!? 埋めたくても埋められないの、その傷はーっ!!

    「新ジャンル『彼氏』に萌えるんだよ 花依ちゃん!」
    ⇒「彼氏」はジャンルじゃねーっ! 現実<リアル>の存在! 萌えるんじゃなくて、恋せよ乙女ーっ!!

    「ごめんなさい 実は私 オタクなの」
    ⇒知ってましたーッ!!

    「これ(抱きまくら)を買い逃したら 一生後悔する!!」
    ⇒そこまでぇーーっ?!

     ――はい。というわけで、つっこみながら読んでみましたが、第02話までで8ヵ所もつっこんでしまいましたね。特に後半、荒ぶってしまってスミマセン。

     第03話以降は、女子サッカー部に助っ人として参加したり、自宅で勉強会を開催するなど、変身前とは一変したリア充・高校生活を送る花依。ただし、彼女に恋する美男子4人も全員同行するものだから、事態はたいへん複雑に。
     よくある恋愛モノの展開としては、ひとつのエピソードでひとりのキャラと親密になっていきますが、あくまで『私モテ』では男4人を全員登場させるというカオスな状況を保ちつつ、その内のひとりに焦点をしぼったエピソードを展開します。毎回がお祭り騒ぎというか、オールスター全員集合的なにぎやかさも、本作の魅力でしょう。

     死んだキャラクターの遺影を仏壇に置く、オタグッズで自分の部屋が「腐海」になる――など強烈なエピソード群は、作者・ぢゅん子氏自身や友人の実話が基となっているらしく、まだまだ片鱗に過ぎないでしょうが、腐女子世界の凄みを味わわされた次第です。巻末のオマケ漫画で明らかになったところでは、ぢゅん子氏は本作以外に「BL系タイトル」も手がけているらしく、なるほど花依が妄想するシーンの完成度も納得しました。
     この『私モテ』、掲載誌『別冊フレンド』では異色の連載かと思いきや堂々表紙を飾ったり、ドラマCD付きの単行本も発売されるなど、すっかり人気作として定着している模様。こうなると、アニメ化も期待しちゃいますねぇ。

     さて、今回はオッサンによる「腐女子のリアル乙女ゲー ラブコメ漫画」のレビュー(つっこみを添えて)という、超ニッチな連載をお届けしました。需要があることを切に祈りつつ、また次回お会いしましょう!

    画像協力:『私がモテてどうすんだ』http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/70006/

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