おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

超4コマ級。キャラ濃いぃ!『繰繰れ! コックリさん』/第01巻(だけ)レビュー

 本連載では、数多くある漫画から選りすぐりの1冊をピックアップ。その「第01巻だけ」レビューをお届けします。

  • 【関連:暖簾(ページ)を手繰れば本格味『ラーメン大好き小泉さん』/第01巻(だけ)レビュー】

     繰繰れ。…あや…あやつれ……? いや、グゥグゥれ? Googleれ?
     あっ『繰繰れ(ググれ)! コックリさん』って読むのか……!?

     といった具合に、以前から店先でタイトルを目にするたび、何て読むのかなーと気になっていたあたり、作者・遠藤ミドリ氏の術中に見事ハマっていたわけですね。作品紹介では「疲れたOLとかが読むといい全力脱力なハートフル?四コマ」だそうですが、32歳の疲れたフリーライターに読む資格はあるのでせうか? たぶん「とか」に含まれると思うので、読む。

    繰繰れ! コックリさん

     コックリさん コックリさん おいでください
     ハァ ハァ 呼んだか?(窓ガラーっ)

     そんな出オチで頭っから「オカルトホラーな空気」をブチ壊したあと、メタ発言、電波な会話と、やりたい放題で幕開けする本作『繰繰れ(ググれ)! コックリさん』(以下、『ググコク』)。自らを人形と称す電波系少女・こひなと、ノリで呼び出された「コックリさん」を中心に、物の怪たちとのオモシロ残念な日常が描かれていきます。

     平凡な日常を打ち破るのは、魔女や宇宙人など異世界からの訪問者が常ですが、『ググコク』では狐の霊であるコックリさんや、犬が転じた死霊・狗神など動物霊のような存在が多く、物の怪=アニマルたちと呼ばれるゆえんに。

     しかし、このアニマルたちの「個性の強さ」といったらない! そもそもケモ耳やシッポ、超常のチカラを持つ人外であることを前提とし。まずコックリさんは、家事全般が得意で食生活の心配も「カップ麺ばっかりじゃダメっ!」と言い放つオカン気質のうえ、年齢や小ジワのことが気になるガラスの心を持った中年、とは言われたくない微妙なお年頃 ※男性。血ヘド吐いちゃうくらいストレスも多く、胃薬で乗り切る毎日……。
     途中から居候する狗神にいたっては、細身のダークスーツに身を包んだ人間の姿でダンボールにちょこんと座り、雨に打たれ、虚ろな瞳で――

     可愛い ワンワンです。
     拾って 愛して下さい。(くぅーん?)

     と、ただただ変態。しかも、こひなの日常行動や骨密度まで把握している病的なストーカー気質に加え、霊になって間もないためか性別が時々入れ替わり、男女どちらの姿でも主人・こひなと主従以上の関係を結びたい……! という欲望が抑えきれない困ったワンコです。なんという呆れたキャラクター、個性の強さか。

     本作のコマ割り(※漫画のコマ構成)は常に規定通りではありませんが、いちおう4コマ漫画に分類されます。最近では、この4コマ漫画を原作としてテレビアニメやゲーム化、果ては劇場アニメ公開といったメディアミックス展開が行われることも珍しくなく、すっかり人気ジャンルに。ただ、取り上げられる作品の性格としては、キャラクターに強烈な個性を持たせるのではなく、どちらかと言えばユルい世界観の中でおだやかな日常を描く、といった方向性が多いように思えます。「日常系」と呼ばれる作品群です。

     そのような「日常系」4コマ漫画のキャラクターと真逆を行くのが、『ググコク』のアニマルたち。むしろ4コマ漫画という舞台は役不足に見えるくらい、ストーリー漫画に登場させても遜色ないほどキャラクターが濃く、主張してはばかりません。幾人もの漫画家たちが「良いキャラクターは一人歩きする」と創作の秘訣を明かします。強引に例えるならば、アメ車用のV8気筒エンジンを軽ワゴンに詰んで「爆走する」のが、本作のキャラクターたちなのです。

     濃いキャラクターは良いキャラクターであり、読者にとっては友人のような存在です。初対面では「なにコイツ」と思っても、ページを手繰って時間を仮初めにも共有するうちに、いつしか心の大きな部分に住み着くようになります。筆者はエンディング目前のTVゲーム(主にRPG)を投げ出して仕舞い込んでしまい、そんな説明のつかない行動をした時「コイツ(キャラクター)とお別れしたくないのかも」という、まぁ傍から見ればかなりキモい、気持ちになります。
     別れの時が近づけば、何となしに寂しさを感じてしまう。これこそが、読者としての筆者が思う「良いキャラクターの条件」であり、コックリさんたちに対しても同様だったのです。

     もちろん、『ググコク』は’14年11月現在コミックスが第07巻まで刊行中であり、10月からはテレビアニメも放送中ですから「別れの時」などは遠く、まだまだ楽しませてくれるでしょう。コメディーなのに、妙な感傷に浸るのもオカシな話ですから、今しばらくは、ゆるーく楽しませてもらいます。

     さぁ、第02巻では「どう見てもダメダメな生活破綻者の狸(居候という名の自宅警備員)が加わり、更にモフモフーンとした感じ」だそうで……イイネ。

    画像協力:『繰繰れ! コックリさん』http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/43212/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    バラしたいほどいい女……!『富江』のバイオグラフィー/第01巻(だけ)レビュー

  • コラム・レビュー

    めんど臭さもネ申クラス…『神のごときミケランジェロさん』/第01巻(だけ)レビュ…

  • コラム・レビュー

    その顔がほしい。処女作『累(かさね)』で晒す「美醜」の彼岸/第01巻(だけ)レビ…

  • コラム・レビュー

    にんげんっていいな『アルパカかあさん』優しい笑いに包まれて/第01巻(だけ)レビ…

  • コラム・レビュー

    僕らオッサンは『私がモテてどうすんだ』つっこみながら読むよ?/第01巻(だけ)レ…

  • コラム・レビュー

    漫画家マンガに「異界」出没!ドラマ放送中『東京都北区赤羽』/第01巻(だけ)レビ…

  • コラム・レビュー

    年末年始は全巻イッキ読み! おすすめ漫画10選/第01巻(だけ)レビュー【番外編…

  • コラム・レビュー

    オジさん(S57年生れ)は懐かしいの!『オイ!!オバさん』/第01巻(だけ)レビ…

  • コラム・レビュー

    暖簾(ページ)を手繰れば本格味『ラーメン大好き小泉さん』/第01巻(だけ)レビュ…

  • コラム・レビュー

    王道!『囚人リク』。脈々たる血の系譜を読むぅぅ/第01巻(だけ)レビュー

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で
    エンタメ, 舞台

    宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

  • 「3色の鳥・ゆうちょバス 年金受取口座」篇
    エンタメ, 芸能人

    岡田将生さんが再び“謎の男性”に ゆうちょ銀行「ゆうちょバス」CM第2弾が放送へ…

  • 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT …

  • 宝塚宙組「PRINCE OF LEGEND」公演、25日の東京公演が急きょ中止
    エンタメ, 舞台

    宝塚宙組「PRINCE OF LEGEND」、25日の東京公演が急きょ中止

  • 住まいを選ぶ際の考慮
    社会, 経済

    「春と秋、こんなに短かったっけ?」約9割が実感する“二季化”と住まい選びに与える…

  • テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か
    インターネット, サービス・テクノロジー

    テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダ…

  • トピックス

    1. 「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      人気アニメ「呪術廻戦」に酷似したスマホゲーム「特級呪術師」が配信され、SNSで物議を醸しました。公式…
    2. 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      東映は12月25日、11月に発表していた新番組「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」について、202…
    3. テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」でセキュリティインシデント 公式サイトのダウンロード導線に不正改変か

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは12月23日、公式サイトのダウン…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚歌劇団は12月26日、宙組が東京宝塚劇場で上演している公演について、主要な出演者の体調不良により公演の実施が困難な状況が続いているとして…
    2. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    3. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    4. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    5. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト