この夏、古代ギリシャがまとめて日本にやってくる……。
東京・上野の東京国立博物館で、6月21日より特別展『古代ギリシャ -時空を超えた旅-』が開催されます。紀元前7000年紀の新石器時代から、ヘレニズムを経て古代ローマ支配下の時代にいたるまで、およそ7000年にわたるギリシャの文物や美術品の歴史を概観する、日本ではほぼ初めてとなる展覧会です。
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一般的に「古代ギリシャ」といった場合、多くの人は紀元前8世紀ごろ、アテナイやスパルタなど種々のポリス(都市国家)が群雄割拠し覇権を競った時代を想像するでしょう。古代ギリシャの文化が大きく花開いたのがこの時代だったことは確かですが、それが突然勃興した訳ではなく、その源流が脈々と息づいていたことを忘れてはいけません。
展覧会は、新石器時代の文物から始まります。ここから時代の流れを追っていくように展示が構成され、古代ギリシャの文化がどのように発達し、周辺に影響を与えていったのかを通史として見ていくことができます。
ギリシャの彫刻というと大理石を想像しがちですが、紀元前7000年紀の新石器時代には獣骨を材料に用いたものもあり、道具の発達に応じて加工する材料が変化していった様子も判ります。その後に続くエーゲ海のキュクラデス文明、ミノス(クレタ)文明、ミュケナイ(ミケーネ)文明の出土品を見ていけば、単純で抽象的な造形から徐々に写実的で、しかも細かい細工など高度化された加工技術の発展を見ていくことができるでしょう。
暗黒時代を経てポリス(都市国家)の時代となると、東方との交易から新たなモチーフを獲得し、古代オリエント様式を取り入れたデザインや「アルカイックスマイル」と呼ばれる微笑をたたえた像が作られるように。そして共和制の時代を迎えると、古代ギリシャ文化は大きく花開き「理想の美」を反映した、作品と呼ぶべきものが目立ちます。マケドニアのアレクサンドロス王による東征やその後のヘレニズム期には、ギリシャ文化は各地へと伝播していきました。ローマ時代にギリシャの美術や文化が有力者に支持されたのは、それまでの歴史で培われた豊かな表現があってこそなのでしょう。国が衰退しても、文化の力は衰えなかったのです。
また今年は、1896年にアテネで第1回近代オリンピックが開催されて120年となります。この為、会場では古代オリンピックを特集したコーナーも設けられ、当時の競技をモチーフにした様々な文物を展示し、人々の中で古代オリンピックがどのような位置付けがなされていたのか、その一端がうかがえます。
今展覧会は、ギリシャ共和国文化・スポーツ省の協力により、ギリシャ国内40カ所以上の国立博物館などの収蔵品から厳選された約300件の文物で構成されます。しかもこのうちの9割以上が日本初公開となる貴重なもの。今まで知り得なかった「古代ギリシャ」を会場で体験できるのです。
東京国立博物館での会期終了後、展覧会は秋に長崎県美術館、冬に神戸市立博物館へと巡回します。お近くの会場へ足をお運びください。
■「古代ギリシャ -時空を超えた旅-」
6月21日~9月19日 東京国立博物館
10月14日~12月11日 長崎県美術館
12月23日~2017年4月2日 神戸市立博物館
URL http://www.greece2016-17.jp/
(文:咲村珠樹)