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イギリス陸軍ロイヤルスコットランド連隊の元マスコット、クルアチャン3世死す

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 2018年2月27日(イギリス時間)、イギリス陸軍ロイヤルスコットランド連隊の元マスコットである、クルアチャン3世退役下級伍長がこの世を去りました。30歳でした。イギリス国防省が発表しました。

  •  クルアチャン3世は青鹿毛のシェトランドポニー。1995年9月にアーガイル&サザーランド・ハイランダーズ第1大隊(当時)に配属され、陸軍でのキャリアをスタートしました。隊と共にスコットランドやイングランドでの任務につきました。この中にはスコットランド、アバディーンシャーにあるバルモラル城でのロイヤルガード(衛兵)と共に任務についたこともあります。

     また、イギリス国内だけでなく、隊に帯同してバルカン半島や北アイルランド、イラクなど海外での任務にもつきました。この間、クルアチャン3世はNATOの旧ユーゴスラビアメダル、イラクメダル、ゼネラルサービスメダル、北アイルランドクラスプといった勲章も授与されています。2006年にスコットランドの各連隊をを統合してロイヤル・スコットランド連隊が誕生した際、初代マスコットとなったのです。

     スコットランドの陸軍連隊における、シェトランドポニーをマスコットにする伝統は、1929年にルイーズ王女がアーガイル&サザーランド・ハイランダーズにシェトランドポニーのクルアチャンをプレゼントしたことから始まりました。そして代々下級伍長の階級を与えられてマスコットを務め、現在はクルアチャン4世がマスコットの任務についています。

     2012年、エリザベス女王の在位60年(ダイヤモンドジュビリー)記念式典に参加し、その年のロイヤル・エディンバラ・ミリタリータトゥー終了をもってクルアチャン3世はマスコットを引退。後任のクルアチャン4世に引き継ぎました。

     引退後は現在のマスコットであるクルアチャン4世と共に、連隊本部のあるエディンバラのレッドフォード・バラックスの厩舎で余生を過ごし、チャリティイベントなどにその姿を現していました。2016年には英国馬事協会(BHS)から年度代表馬に選出され、その証であるタラゴン・トロフィーを授与されています。この他にも2017年には退役軍人協会から、チャリティ活動の協力を讃えるヒーローメダルを授与されています。このメダルを授与されたのは、わずか100人しかおらず、馬としては最初のケースでした。

     年齢を重ねて、クルアチャン3世は全身の関節痛に苦しむようになりました。その痛みが限界を迎え、2018年2月27日、安楽死の処置が取られたということです。

     ずっとマスコットの飼養を担当する「ポニー・メジャー」の任についているマーク・ウィルキンソン伍長は、クルアチャン3世の死を受けて、次のような談話を発表しています。

    「一緒に行事に参加しなくなっても、クルアチャン3世は引退してからの5年半の間、後任のマスコットであるクルアチャン4世の調教に協力し、クルアチャン4世をリードしてくれました。彼の協力がなければ、調教はもっと困難なものになっていたでしょう。彼はいつでも、私に軍と多くの市民との間を橋渡しする機会を与えてくれました。女王陛下をはじめ、みな彼の姿を見ると微笑まずにはいられないのです。これは、彼が多くの人から愛された証拠だと思います。ここ数年は体の具合が悪くて苦しんでいましたが、それでも彼はそれに打ち勝とうと懸命に努力していました。しかし、とうとう力尽きてしまったのです。動物が先頭で兵を従えて歩く様子は、多くの人に対し軍で働こうというきっかけを作ってくれました。もうそのいななきも、毎朝顔を飼い葉まみれにして食べる姿も見られないんですね。今はただ『おやすみ、安らかに』という言葉しかありません」

     ロイヤルスコットランド連隊も、クルアチャン3世の死に寄せて次のような追悼文を発表しています。

    「連隊にとって最も思い出深いキャラクターに別れを告げねばならないというのは、非常に悲しいことです。彼はとても利口で、何年もの間、行事で失敗することはありませんでした。まさにスコットランド兵の美徳である『揺るがず、強く、変わらない』を体現する存在だったと言えるでしょう。普段の彼のいたずら心については、連隊の誰もが知るところで、それを好ましく思っていました。多分、世話をしているポニー・メジャーはそんな気にはならなかったかもしれませんが。引退してからも、彼は連隊の一員として、クルアチャン4世に対して、良きロールモデルになってくれました。連隊の誰もが、彼の死を惜しんでいます」

     クルアチャン3世はこの後、アーガイル&サザーランド・ハイランダーズゆかりの地であるスターリング城に埋葬されるとのことです。

     Image:Crown Copyright

    (咲村珠樹)

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