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医療従事者支援で40億円集めたイギリスのキャプテン・トム 100歳誕生日に空軍が祝賀飛行

 イギリスで、新型コロナウイルスとの最前線で奮闘する医療従事者を支援する募金で3000万ポンド(約40億円)を集めた元陸軍大尉に対し、100歳の誕生日に名誉大佐の称号が授与されました。あわせて自宅上空を空軍のスピットファイアらが祝賀飛行しています。

  •  この元陸軍大尉は、ヨークシャー出身のトム・ムーアさん。第二次世界大戦中は、デューク・オブ・ウェリントン連隊の第8大隊に所属していました。

     近年はがんの治療や腰の骨折などで、イギリスの医療制度の根幹をなすNHS(国民保健サービス)を利用しており、日頃からNHSの医療従事者たちの献身に感銘を受けていたそうです。そのため、今回の新型コロナウイルス禍で懸命に働くNHSの医療従事者に何か手助けができないかと、募金を呼びかけることを思い立ちました。

     この趣旨に賛同した人々から集まったお金は、3000万ポンド(約40億円)あまりにもなりました。募金の過程や、足腰が弱り歩行器具が手放せない自分自身に課した「自宅と庭までを100往復する」様子が報道され、いつしかイギリスの人々から「トム大尉(キャプテン・トム)」という名で親しまれるように。

     この献身的行為はイギリス陸軍の誇りであり、国民の良きロールモデルである、ということから、王室とイギリス陸軍は、トム・ムーア退役大尉の100歳の誕生日となる2020年4月30日付で、ハロゲイトにある陸軍幼年学校(Army Foundation College)初めてとなる名誉大佐(Honoraly Colonel)の称号を贈ることを決定。

     ほかにもヨークシャー連隊記念メダル(ヨークシャー連隊で目覚ましい功績を挙げた個人に授与されるメダル)や、第二次世界大戦中に受章したものの紛失してしまっていた防衛章についても、75周年となる対独戦勝記念日(V-E Day)に着用できるように、と女王陛下の計らいで再度贈られています。


     イギリス各地からは、トム大尉の100歳を祝うバースデーカードが山のように贈られました。その数およそ14万通。おそらく100歳でも、これほど多くのバースデーカードを贈られた経験はなかったでしょうね。


     トム大尉の100歳の誕生日を祝うため、イギリス空軍はトム大尉と同じく第二次世界大戦を戦ったホーカー・ハリケーン、スーパーマリン・スピットファイアという2機の戦闘機で、ベッドフォードシャーのマーストン・モレテインにある、トム大尉の自宅上空を飛ぶ祝賀飛行を実施しました。これも事前にイギリス軍統合参謀総長が女王陛下に上奏し、直々に許可を得たものです。


     当日の朝、コニングスビー空軍基地から飛び立ったハリケーンとスピットファイアは、イギリス空軍が動態保存している「バトル・オブ・ブリテン・メモリアル・フライト(BBMF)」に所属する機体。ハリケーンには隊長のマーク・ディスコンビ少佐、スピットファイアにはアンディ・プリース大尉が搭乗し、トム大尉の自宅上空を編隊飛行しました。


     この祝賀飛行について、バトル・オブ・ブリテン・メモリアル・フライト隊長としてハリケーンを操縦したディスコンビ少佐は「トム大尉の100歳を祝い、その素晴らしいNHSへの支援に空軍なりの方法で応えられて、とても爽快で、光栄な気持ちです」とコメントを残しています。

     この様子はBBCによりイギリス全国に生中継され、全国の視聴者もトム大尉の100歳をお祝いしました。まだまだ新型コロナウイルスとの戦いは続きますが、イギリスもNHSを中心に、心を1つにして立ち向かっています。

    <出典・引用>
    イギリス陸軍 ニュースリリース
    イギリス空軍 ニュースリリース
    Image:Crown Copyright 2020

    (咲村珠樹)

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