2018年7月16日(現地時間)、イギリスのロンドン郊外にあるファーンボロ飛行場で始まった世界最大級の航空見本市(エアショウ)、ファーンボロ国際エアショウの冒頭でイギリスのウィリアムソン国防相は将来計画「航空戦闘における戦略:未来への意欲的ビジョン」発表に関しての講演を行い、その中核を担う次世代のステルス戦闘機のコンセプトモデルを発表しました。

 2018年に創設100周年を迎えたイギリス空軍。その将来における戦略をまとめた冊子である「航空戦闘における戦略:未来への意欲的ビジョン(Combat Air Strategy:An ambitious vision for the future)」は、これまで航空戦力の流れを形作ってきたイギリスが、将来の航空戦力のあり方についてどう考えているのかを判りやすくまとめたものです。特に2020年代~2030年代に関するコンセプトが中心となっています。

 その中心的役割を果たすものとして、イギリス空軍とヨーロッパのメーカー4社が共同で開発に取り組む次世代戦闘機のコンセプトモデルがお披露目されました。イギリスでは2018年からF-35の導入が進んでいますが、今回公表された新世代戦闘機は、F-35の次に導入する戦闘機として構想されているものです。

 イギリス空軍とともにこの次世代戦闘機を開発する「チーム・テンペスト」の顔ぶれは、機体設計と全体の取りまとめを担うBAEシステムズ、エンジン周りを担当するロールスロイス、センサーやアビオニクスなどを開発するレオナルド、ミサイルなど搭載火器を担当するMBDAの4社。チーム名の由来となった「テンペスト」とは、第二次世界大戦で活躍したイギリス最速の戦闘機、ホーカー・テンペストを思い起こさせます。ホーカー・テンペストはもともと「タイフーンMk.II」として開発が始まった経緯があり、ユーロファイター・タイフーンの後継機と目されるこの次世代戦闘機を開発するチーム名としては、実に象徴的です。

 公開されたコンセプトモデルのモックアップは、独特の形状をしたデルタ翼機。随分と平べったい印象で、正面からの見た目は、アメリカでF-22とのコンペに敗れたもののF-22よりもステルス性が優れていたと言われるノースロップ・グラマンYF-23にイメージが似ています。

 あわせて発表された資料によると、機体各所には様々なセンサーが内蔵されており、コクピットには3D表示が可能なディスプレイや、用途に応じてフレキシブルに変更できる内蔵兵装システム、さらにステルス性を維持した状態で外部に様々なものを増設できたりと、まさに未来の戦闘機。そして、ほぼ同サイズの無人機も計画しているとか。

 ウィリアムソン国防大臣は講演において「今回のニュースは工業だけでなく軍、国、そして我々の同盟にとって、我が国が航空戦闘の分野において新たな世代に移行することで、より高く飛翔することを示すものと信じてやみません」と語っています。

 国防大臣に次いで登壇したイギリス空軍制服組トップのヒラー空軍参謀長は、チーム・テンペストについて「確実に我々の可能性を構築することに関与し、我々の持つ歴史と経験を引き出して新世代戦闘機へと活かしてくれるでしょう」と述べています。

 この次世代戦闘機に関しては、初期要求性能を2020年までに取りまとめ、2025年に開発計画の最終決定を行うこととしています。開発計画が承認されて進めば、2035年の実戦能力獲得を目指すとしています。

 日本はイギリスと次世代戦闘機についての開発検討を共同で行う覚書を交わしており、導入から40年近く経って老朽化したF-15や、2000年から導入されているF-2を置き換える戦闘機は何になるか……という将来予測も始まっています。共同開発する際には日本が主導権を取る形で、という要望もありますが、イギリスの「チーム・テンペスト」が発表したこの新世代戦闘機がどのような影響を日本に与えるでしょうか。

Image:MOD Crown Copyright 2018

(咲村珠樹)