NASAが再び人類を月に送り、さらに火星の有人探査を目指すという計画が進んでいます。そんな中、この計画に参画しているロッキード・マーティンが、ドイツのブレーメンで10月1日~5日の期間で開催されている「第69回国際宇宙会議」で10月3日(ヨーロッパ中央時間)、再使用可能な有人月着陸船のコンセプトモデルを発表しました。
1969年に人類が初めて月の土(レゴリス)を踏んで、もうすぐ半世紀。現在NASAでは人類を再び月へ着陸させるプロジェクトを進めており、2019年度予算から本格的に動きだす予定です。新型有人宇宙船「オリオン(Orion)」を載せたロケットSLS(Space Launch System)の最初の打ち上げは2020年を予定。そして月周回軌道へ有人のオリオンを送るのは2023年を予定しています。
今回の有人月探査計画は、ただ行って帰ってくるだけでなく、月周辺で持続的な活動をすることが目的となります。この経験をもとに、火星への有人飛行を行おうという計画です。このため、まず月を周回する軌道上に月着陸用の宇宙ステーション「ゲートウェイ(GATEWAY)」を建設し、宇宙飛行士はそこを拠点に月との間を往復するという形をとります。ゲートウェイは建設後、いったん地球周回軌道(LEO)で機能点検をしたのち、月周回軌道へと送り込まれる予定です。
月と地球を毎回往復していたアポロ計画の時は、人類が何か月も宇宙にいるということは考えられない時代でした。毎回全てのものを持って往復するしかなかったので、月着陸船も使い捨て。月面から戻った宇宙飛行士をアポロ司令船に収容した後は、軌道上に置き去りにしていました。
しかし現在は、国際宇宙ステーションで宇宙での長期滞在について多くのデータを持っており、宇宙ステーションから月面を往復する形をとれば、月着陸船は何度も再利用ができるというわけです。月には大気がありませんから、大気圏再突入の熱で損傷するということもありません。
そんなわけで、ロッキード・マーティンが示した再利用型月着陸船は、アポロの頃に比べると非常に大きなもの。イラストに描かれた宇宙飛行士との比較で見れば、4回建てのビルくらいはありそうです。気になる着陸船の燃料は、同時に発表された論文によると、月の極地にあるとされる氷(水)を原料に作られるとあります。人間が吐き出す二酸化炭素(CO2)と水(H2O)を電気分解して作り出した水素(H2)を使って、メタンガス(CH4)を作ろうということみたいですね。
NASAと共同でプロジェクトを進めているロッキード・マーティンですから、この基本デザインは実際に使われる可能性は大です。思ったより大きなものなのでちょっと驚きましたが、月面に着陸した後は「月面基地」として、一定の期間宇宙飛行士の活動拠点となることを考えれば、必要な大きさかもしれませんね。
ロッキード・マーティンとNASA、そしてこのプロジェクトに携わる関係各社は、月での有人ミッションで得たデータをもとに火星への有人ミッションを行う方法の細部を詰める予定としています。小さい頃想像していた「月面基地」は、ドーム状の構造物が横に広がるイメージでしたが、あと数年でビルのような月着陸船の周りで活動する宇宙飛行士の画像に置きかわるかもしれません。
Image:Lockheed Martin/NASA
(咲村珠樹)