おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

エアバスが「空のF1」に参入 2020年開始のエアレースEを完全サポート

 航空機が速さを競うエアレース。FAI(国際航空連盟)認定の世界選手権であるレッドブル・エアレースのほかにも、世界には様々なエアレースが存在します。その中の一つ、フォーミュラ1クラスのプロペラ機が速さを競う「空のF1」エアレース1が、新たに2020年から始める電動飛行機による世界初のエアレース「エアレースE」に、エアバスが“オフィシャル・ファウンディング・パートナー”として全面協力することになりました。2019年2月5日(ヨーロッパ中央時間)、エアバスが発表しました。

  •  1930年代の「ミゼット・レーサー」という小型機レースに源流を持ち、1947年に制定された「フォーミュラ1(F1)」と呼ばれる機体規格に沿って作られた小型プロペラ機によるエアレース、それが「エアレース1」です。アメリカのリノ・エアレースにおけるフォーミュラ1クラスのレースから派生し、独自のシリーズとして2014年から開催が始まりました。これまでにアメリカをはじめスペイン、チュニジア、タイで開催され、2018年には中国で初めてのレースが行われました。

     レースのフォーマットは単純明快。1周5km(20km×250m)の周回コースを最大8機のレース機が同時に飛び、順位を競います。スタートの合図と同時に8機が横並びになって離陸し、周回コースに入っていく様子は迫力満点。スピードは最大で時速400マイル(640km)、最大3Gのターンを繰り返しながら、8周にわたって抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げます。


     そのエアレース1が2020年の初開催を目指して、新たに電動飛行機による世界初のエアレースを始めます。その名も「エアレースE」。機体の規格はエアレース1と同じフォーミュラ1に準じて、エンジンではなくバッテリーとモーターでプロペラを駆動するレース機が、エアレース1と同じ1周5kmの周回コースで速さを競います。エアレース1が「空のF1」なら、エアレースEは「空のフォーミュラE」といったところ。

     電気自動車に比べ、電動飛行機はまだ実用化に向けて研究が続けられている状況でレースを行うわけですから、レース機の開発から行う必要があります。これまでエアレースEでは、イギリスの王立航空協会やノッティンガム大学の協力を得て、レース機の試作を行うと発表していました。そして今回、実際のレース機を作るパートナーとして、エアバスが手を挙げたというわけです。

     エアバスのチーフ・テクノロジー・オフィサー、グラツィア・ヴィッタディーニ氏は「我々は、電気推進システムやコンポーネント技術の様々な面を一度に実証できるような、意欲的な製造者を求めていました。このパートナーシップを通じて、電気推進や新しいエコシステムの分野で、我々が最先端に居続けることの証明となると確信しています」と、エアレースEへの取り組みについて語っています。

     エアレースEを統括する、エアレース1のジェフ・ザルトマンCEOは「エアバスを我々のオフィシャル・ファウンディング・パートナーとして迎えることができ、喜びを禁じ得ないとともに、明るい将来がひらけていると感じています。このパートナーシップは、電動航空機の発展において、非常に大きなマイルストーンです。我々はともに、この種の電気推進において主流となるプラットフォームを作り、その発展を加速していくことでしょう」と、エアバスのエアレースE参入を歓迎するコメントを発表しています。

     自動車やバイクの世界では、機械にとって極限状況であるレースに使われた技術が、のちに市販車に活用されてきました。エアレースEも、レースで必要とされる軽くて強力なバッテリーやモーター、より電力消費を抑制する制御機器、効率の良いプロペラなど、これからの電動飛行機に必要な技術がいっぱい。エアバスとしては、将来の電動航空機時代を見越して、技術的チャレンジを積み重ね、アドバンテージを築きたいという考えがあり、それがエアレースEの理念と合致したということなのでしょう。

     エアバスは今後、試作機の開発を手がけているノッティンガム大学など、エアレースEのパートナー組織と協力し、エアレースEにおけるレース機の開発作業を行います。完成した試作機をもとに、このレースの細かい規格やレースのルールが、2020年のレース開始までに整備されるということです。

    Image:AIRBUSAIR RACE EAIR RACE 1

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 新たなエアレース「AIR RACE X」コンセプト発表(画像:(c) AIR RACE X)
    宇宙・航空

    初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」…

  • ファン感謝イベントでフライトする室屋選手のレース機
    宇宙・航空

    “2022年仕様”のレース機も飛行  室屋義秀エアレースチームのファンイベント

  • 2022年のエアレース世界選手権開催断念を伝えるツイート(スクリーンショット)
    宇宙・航空

    エアレース世界選手権2022年の開催断念 新型コロナウイルスと世界経済激変で

  • フランス国家憲兵隊の特殊部隊とH160(画像:Airbus)
    宇宙・航空

    フランス国家憲兵隊に新ヘリコプターH160 パリ五輪に備え2024年より受領開始…

  • NTTドコモの実験をしたエアバスのソーラー無人機ゼファー(画像:Airbus)
    宇宙・航空

    NTTドコモ エアバスのソーラー無人機を使用しての移動基地局実験に成功

  • 室屋選手(右)と佐藤プレジデント((c) Lexus Pathfinder Air Racing / Suguru Saito)
    宇宙・航空

    室屋義秀の新エアレースチーム参戦会見 LEXUSとの「ワークス」体制

  • 離陸するソーラー無人機ゼファーS(画像:Airbus)
    宇宙・航空

    エアバスのソーラー無人機「ゼファーS」 クラスの高度世界記録を樹立

  • プレアデス・ネオ3号機が撮影したエジプトのピラビッド(Image:Airbus)
    宇宙・航空

    地球観測衛星プレアデス・ネオ3号機 宇宙からとは思えない超高精細画像を公開

  • 2021シーズンキックオフ会見での室屋義秀選手((c) Pathfinder)
    宇宙・航空

    新エアレース世界選手権に正式参戦!室屋義秀2021シーズンキックオフ

  • 空中給油試験中のEC725(H225M)とA400M(Image:DGA)
    宇宙・航空

    エアバスA400M輸送機 ヘリコプター2機への同時空中給油に成功

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

  • 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み
    エンタメ, 芸能人

    松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み…

  • 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

  • 11月17日からの平日限定で、「かっぱの挑戦 感謝祭」をスタート
    イベント・キャンペーン, 経済

    かっぱ寿司、おにぎりとかけうどんが平日限定で各82円に 「かっぱの挑戦 感謝祭」…

  • 「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる
    エンタメ, 映画

    「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる

  • ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月18日18時、新たな投稿を…
    2. 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      俳優の松山ケンイチさんが11月17日、自身のXアカウント「松山ケンイチ(@K_Matsuyama2023)」でユーモア企画「誰も傷つけない悪…
    3. 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月17日、作品の掲載順に関す…
    4. 今年もやってきた“本番環境の事故録” Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      本番環境などでの失敗談が集結 Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      稼働中のサーバーでの作業ミスによるトラブルの顛末をつづる「本番環境などでやらかしちゃった人 Advent Calendar 2025」が12…
    5. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト