地震などの災害時、転倒して手や足を骨折してしまう場合があります。そうでなくても転んで手をついたら、手首のあたりを骨折してしまった、ということも少なからずあります。そんな時、病院に行く前の応急処置として、食品用ラップを用いた簡易固定法が注目を浴びています。

 警視庁警備部災害対策課がツイッターで提案しているこの方法。

 「災害時にも色々と重宝する食品用ラップ。骨折が疑われる場合、ラップを長めに引き出して芯を添え木代わりにきつく巻くだけで固定できます。腕の場合、首に回して巻けば三角巾を兼ねた状態にして固定できます。病院搬送等で必要無くなれば、使った分だけ切り取って残りは他の用途にも使用できますよ」と、その方法を画像付きで説明しています。

 まず、骨折かどうか疑わしい場合が多いと思いますので、看護師ライターの筆者が見極め方を軽く紹介しておくと、明らかに骨の断端がずれている場合、その部分の皮膚に隆起が見られる場合があります。他には、骨折していると思われる部分がひどく内出血している、腫れがどんどん酷くなってくる、などが骨折の兆候です。

 こんな状態であればすぐに整形外科へ行く事をお勧めするのですが、移動する前に簡易的にでも固定をしておくと痛みが少しマシになり、骨折部のズレを大きくさせることが減ります。そこで、警視庁警備部災害対策課が紹介している方法の出番です。

1.食品用ラップを長めに出しておきます。
2.出したラップの芯の方に患部を当てます。
3.長く出したラップを芯ごとぐるぐると巻いて固定していきます。ラップは貼り付きやすいので、二人で行うときれいにできるかと思います。
4.巻きつけ終わったら出来上がり。腕に処置を行う場合、芯に患部を当てて数回巻いた後に、首からタスキをかけるように巻きつける事で、三角巾で腕を吊る感じに固定できます。この場合、かなり長めにラップを出しておくのが良いです。

 ラップを巻いた後は、指や足先のしびれやむくみが出ていないか、紫色に皮膚が変色してきていないか時々確認しながら、なるべく早めに受診しましょう。しびれやむくみ、紫色の変色は血行障害を起こしているかどうかの見極めのポイントとなります。

 また、高齢者や骨粗しょう症患者に特に多い、足の付け根の骨折(大腿部転子部骨折)にはこの方法は使えません。この骨折が起きているかどうかの見極めには、まず立つことが可能かどうか、立った時の痛みがあるかどうかで判断します。

 この骨折の場合、立ち上がると股関節に強い痛みが出ます。無理に移動させようとすると、骨折部が大きくずれてしまい、手術が大変になることもあり得るので、骨折部を動かさないように担架で運ぶのがベスト。大腿部転子部骨折は、日常でも高齢者によく起こる骨折ですので、覚えておくといざという時に役に立つと思います。

 骨折が疑われる場合は、どの部位でも、基本的に動かさないことが大切です。腕や足など、動かすことが多い場所には応急処置をしてから整形外科での治療となりますので、まず患部を動かさない様、気を付けて固定するようにしてみてくださいね。

<引用>
警視庁警備部災害対策課(@MPD_bousai)

(梓川みいな/正看護師)