ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンはポーランドのアウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館に、同社のミニバスを2台寄贈したと2019年6月28日(現地時間)発表しました。このバスは今後、博物館の教育プログラムなどで使用される予定です。

 ナチスが行ったホロコーストに関連する施設の中で、最も有名なアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。ポーランド南部のオシフィエンチム(ドイツ語名アウシュヴィッツ)と、隣接するブジェジンカ(ドイツ語名ビルケナウ)にあるこの施設は、第二次世界大戦後の1947年に博物館として生まれ変わりました。1976年にはユネスコの世界遺産にも登録され、世界中から訪れる人々にホロコーストの惨劇を今に伝えています。

 フォルクスワーゲンは1987年以来、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の記憶を次代に継承するため元収容者によって設立された国際アウシュヴィッツ委員会(IAC)とともに「アウシュヴィッツ――その記憶と責任」という活動を行っています。これまでに3000人以上のドイツとポーランドの若者たちが現地に集まり、収容所跡の保全整備活動や、元収容者らの証言を聞き取る活動に従事してきました。



 今回寄贈される2台のミニバスは、同社のマルチバン(7人乗り)をベースにしたもの。これまで利用されてきた車両(同じくフォルクスワーゲンが寄贈したもの)を置き換えるものとなります。最寄りのクラコウ空港から収容所跡へ、高齢化した元収容者や障害者など助けの必要な人々を送迎する用途などに使われることになっています。

 ドイツ、ベルリンで行われた贈呈式では、フォルクスワーゲンのギュンナー・キラン氏から国際アウシュヴィッツ委員会の代表者2名に車両と、目録が引き渡されました。

 キラン氏は贈呈式で「フォルクスワーゲンと国際アウシュヴィッツ委員会は、30年にわたってともに歩んできました。私たちはこの残虐な出来事や、収容者が味わった苦しみを決して忘れて欲しくないと願っています。この想いこそが、オシフィエンチム(アウシュヴィッツ)での若者たちのミーティングを主催している理由であり、同時に私たちにとっての最重要課題であり続けているのです」とコメントしています。

 国際アウシュヴィッツ委員会のアンジェイ・カコルジャク氏(アウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館副館長)は「寄贈していただいた新しいミニバスは、世界中からの若者たちの関心を集める収容所跡で開かれる国際セミナーなどで、大きな力を発揮してくれるでしょう」と、新しいミニバスの寄贈に感謝するコメントを残しています。

 ドイツの企業であり、ナチスの国民車構想Kdfに出自を持つフォルクスワーゲンにとって、ホロコーストの記憶を風化させない取り組みは、同社の重要な使命となっています。今回寄贈された新しいミニバスも、その取り組みに寄与することでしょう。

<出典・引用>
フォルクスワーゲン プレスリリース
アウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館 プレスリリース
Image:Volkswagen

(咲村珠樹)