ロシアが「大祖国戦争」と呼ぶ、第二次世界大戦での独ソ戦勝利75周年を祝う軍事パレードが、2020年6月24日にロシア各地で実施されました。モスクワの赤の広場で実施されたパレードではプーチン大統領が出席し、動態復元された当時の主力戦車T-34やSU-100自走砲も参加しています。
一般に第二次世界大戦の欧州戦線は、1939年9月1日のナチス・ドイツによるポーランド侵攻を始まりとしますが、ロシアが「大祖国戦争」と呼ぶものは、1941年6月22日にナチス・ドイツが独ソ不可侵条約を一方的に破棄して侵攻した「バルバロッサ作戦」を始まりとしています。
終戦のタイミングも、ほかの欧米諸国がアメリカ軍のアイゼンハワー元帥とドイツ国防軍のヨードル上級大将が降伏文書に署名し、停戦が発効した1945年5月8日としているところ、ロシアではソ連のジューコフ元帥とドイツのカイテル元帥が降伏文書に署名したタイミングが日付をまたいだため、5月9日です。
通常なら5月9日に実施される戦勝記念の軍事パレードですが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大にともない、日程が延期されていました。当時従軍した人々が存命でいられる最後の大きな節目と考えられるため、今年の軍事パレードは戦争当時を振り返る演出が見られました。
ロシアの国旗と合わせ、ハンマーと鎌を組み合わせたソ連時代の赤い国旗が登場。そして当時の軍服に身を包んだ兵士が行進します。
また、当時の主力戦車だったT-34が11両、そしてSU-100自走砲が7両も登場。昔にタイムスリップしたような雰囲気とともに、現代の人々との組み合わせは、まるでアニメ「ガールズ&パンツァー」に登場するプラウダ高校のようにも見えてきます。
もちろん、現代の軍服に身を包んだ兵士も行進。その様子をプーチン大統領が見守ります。
このようなパレードには、防衛外交の側面もあります。祝賀部隊として、中国人民解放軍やインド軍なども参加し、パレードに花を添えます。
装備品の行進では、主力のT-72B3M戦車やICBMの姿も。
航空機ではMi-8ヘリコプターやIl-76輸送機、曲技飛行チーム「ルースキエ・ヴィーチャズィ(ロシアンナイツ)」と「ストリージィ(スウィフツ)」の混成編隊、Su-25攻撃機らが参加。
ロシアの曲技飛行チームはスモークを使用しないのですが、通常迷彩のSu-25にはスモーク発生装置が取り付けられており、ロシア国旗の色である赤・青・白のスモークで空を彩ります。
夜になると、市内中心部を流れるモスクワ川周辺で花火が打ち上げられました。クライマックスは、打ち上げる高さを計算して作られた、ロシア国旗を表した花火。花火師の高い技術が感じられます。
新型コロナウイルスにより、当初の予定からは1か月以上も遅れてしまった戦勝75周年記念行事でしたが、晴天に恵まれ、とても華やかなものとなりました。
※初出時一部表記に誤りがありました。通常ロシアで戦勝パレードが実施されるのは5月9日です。
<出典・引用>
ロシア国防省 ニュースリリース
Image:ロシア国防省
(咲村珠樹)