夏場は熱中症対策としてよく水分補給が呼びかけられますが、実は暑さを感じていなくても、人の体からは知らない間に水分が減っていっています。意識しないとなかなかとれない水分だけに、今、目盛り付きの水筒がツイッターで話題になっています。

 「『ヤバい、水飲まなきゃ』と、オシャレな先輩が打ち合わせで持ってた水筒。時間の目盛りが付いてて、何時にどこまで水を飲むのかが書いてある。水分摂り忘れる人にいいね。かわいいアイデア」というコメントとともに、紹介された水筒。

 水筒は、金色のキャップに半透明のボトルというシンプルなものですが、「Full」から8時、9時、10時、11時、12時、そして「Refill」と英語で目盛りが表示されています。午後までの間に、どれくらいの水分を補給したらよいのかが分かりやすいというもの。

 これを目にした人たちからは、「時間良いアイデアですね!」「この時期、お水飲まなくなりがちなのでナイスアイデアですね」などといった声が。そして、「高齢者の熱中症防止に使えると思いました」「高齢者や定期的な水分補給が必要な人にも使えそう」「痛風予防の水分摂取にも使えそう」といった声も。

 人間の体から排出される水分の量は、尿や汗以外にも呼気などにも含まれるものを全てまとめると、平均して約2.5lが1日に失われています。一方、食事や体内で消化・分解される際にできる水分は平均して約1.3l。最低でも1日に必要な水分の補給量は1.2lとなります。

 さらに、活動や体温調節により平均以上に水分が汗として出て行ってしまうことも考慮すると、毎日1.5lは水分を補給した方が良いといえます。特に気温の変動が激しいこの時期は、室内外の温度差によって気づかないうちに汗をかいていることもありますので、通勤通学などで活動量が多い人は1日2lを目安としてもいいかもしれません。

 水分が不足すると、血液の流れは粘度が高くなるため滞りやすくなります。そのため、体中に血液を行きわたらせるために、心臓は強い力で血液を流さなければならなくなります。これが高血圧となる原因。高血圧や高脂血症などの人に対して、水分をしっかりと補給するように呼び掛けられるのは、血液の粘度を水分で薄めてさらさらにし、心臓への負荷を少なくする必要があるからです。

 そして、高脂血症や高コレステロール血症があると、コレステロールの塊が血管の内側にへばりつき、だんだんと成長していきます。これが血栓と言われるものとなり、心臓からの強い押し出す力によって血管内にできた血栓がはがれ、血流に乗って脳の血管を詰まらせることがあります。これが脳梗塞の原因。

 脳梗塞は冬場に発症しやすくなる傾向がありますが、寒さによる血圧の変動とともに、水分が十分に足りていない状態が重なることで、より発症しやすくなります。

 人間の体は、一定以上の水分をキープできないので、こまめに水分をとる必要があります。しかし、意外とのどの渇きというのは自覚がないもので、「のどが渇いた」と感じている状態はすでに、脱水状態の一歩手前。時間ごとに目盛り分の量の水分をとるということは、血液の水分量を一定以上の状態にするのに役に立つというわけです。

 寒くなると、なかなか保温の利かないボトルの水を飲みにくい……という人もいるかもしれません。そんな人は、時間ごとに目盛り分の水分をマグカップなどに移し替えて、軽くレンチンしてから飲むと、冷え防止にもなりますよ。

※本稿は投稿者の許可を得て掲載しています。

(梓川みいな/正看護師)