NASAは2020年1月6日(現地時間)、太陽系の外にある惑星を観測するために打ち上げた人工衛星TESSと、スピッツァー宇宙望遠鏡の観測で、地球と似た条件を備えた、地球とほぼ同じサイズの惑星を新たに発見したと発表しました。

 NASAの太陽系外惑星観測衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)は、2018年4月18日にスペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられました。地球の周りを周回しながら、太陽系の外にある惑星を発見し、その様子を観測しています。

 今回見つかった惑星は、南天の星座「かじき座」方面にある「TOI 700」という小さな星の周りを公転する惑星。地球からは約100光年離れています。TOI 700の星系は、TESSのミッション最初の年に観測した13セクター(1セクターあたり27日間観測)のうち、第11セクターで発見されました。

 新しく見つかった惑星は、仮の名称として母星の名前とともに、軌道の内側から順にa、b、cという記号(一番内側は母星の光にまぎれて見落とす可能性があるので、通常はbから)を組み合わせて命名されます。このうち、一番外側を周回する「TOI 700d」の交点軌道が、液体の水が存在でき、生命存在の可能性がある「ハビタブルゾーン」に入っていることが分かったのです。

 当初は母星のTOI 700が、太陽と同じくらいの表面温度を持つと考えられていたのですが、高校生や大学院生を含む研究チームが観測データの補正を行った結果、TOI 700は太陽と比較して約40%の大きさと質量、そして表面温度は太陽の半分ということが判明。これにより、公転軌道が近すぎると考えられていたTOI 700dが、ハビタブルゾーンに入るようになりました。

 TESSの観測データに加え、スピッツァー宇宙望遠鏡の観測により、TOI 700dの軌道周期の測定誤差を56%向上させ、惑星自体の大きさも38%誤差を小さくすることに成功。さらに地上のラスクンブレス天文台(LCO)ネットワークの望遠鏡でも観測し、TOI 700cの軌道周期と大きさの測定誤差も、それぞれ30%、36%向上させて信頼度を高めました。

 それによると、TOI 700dは大きさが地球より20%ほど大きく、公転周期は37日。自転周期も37日なので、地球に対する月のように、常にTOI 700の方を向く昼間の「表面」と常に夜の「裏面」が存在します。表面が母星のTOI 700から受けるエネルギーは、地球が太陽から受けるエネルギーの86%ほどと見積もられています。

 将来のミッションでは、このTOI 700dに大気が存在するかどうかの特定も行うとのこと。もし大気の存在が確認できた場合には、その組成についても測定し、惑星の気候モデルが作れるかもしれないそうです。

 TOI 700dは自転速度が地球と違い、常に光を受ける側と影になる側が存在するので、大気があってもおそらく地球のような大気循環モデルが形成されず、雲や風といった気候の状態は地球とかなり違ったものになりそうだと研究者は考えているようです。

<出典・引用>
NASA ニュースリリース
Image:NASA

(咲村珠樹)