NASAは2020年1月11日(現地時間)、第22期宇宙飛行士13名が養成課程を修了し、宇宙飛行士に認定されたとして、テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターでお披露目されました。月や火星の有人探査「アルテミス計画」発表後、初の新人宇宙飛行士です。

 NASAの第22期宇宙飛行士は、2017年6月に宇宙飛行士候補者(ASCAN)として、NASAでは過去最高となる1万8000名以上の応募者から12名、カナダ宇宙庁からは2名が選抜されました。訓練が始まるタイミングでハリケーン“ハーベイ”が上陸し、ジョンソン宇宙センターが浸水したことから「タートルズ(カメ)」の愛称がつけられています。

 訓練の途中で1名が一身上の都合により辞退しましたが、残る13名は様々な訓練を受けています。宇宙船が予定と違う場所に着陸、もしくは着水した場合のサバイバル訓練や、巨大な水槽での船外活動訓練、弾道飛行による無重量状態の体験などが代表例。




 ジェット練習機T-38による飛行訓練も行っています。あまり知られてはいませんが、T-38の整備も訓練に含まれます。


 また、国際宇宙ステーションにあるロボットアーム(カナダアーム)の訓練も行います。

 第22期のメンバーは、月や火星への有人探査計画を前提に選抜された最初の宇宙飛行士候補生。このため、月や火星でのサンプル採取に必要な、岩石を実際に採取する地質学のレクチャーも受けています。

 1年あまりの訓練を修了し、宇宙飛行士に認定されたのは、女性はカイラ・バロンさん(元潜水艦乗りの海軍大尉)、ジェシカ・ワトキンスさん(地質学者で元7人制ラグビーアメリカ代表選手)、ジャスミン・モーベリさん(AH-1パイロットの海兵隊少佐)、ゼナ・カードマンさん(海洋生物学者)、ローラル・オハラさん(元ウッズホール海洋研究所研究員)の5名。

 男性はジョニー・キムさん(元海軍特殊部隊ネイビーSEALチーム3大尉)、フランシスコ・ルビオさん(元ヘリコプターパイロットの陸軍少佐で医学博士)、ボブ・ハインズさん(空軍出身のNASAテストパイロット)、マシュー・ドミニクさん(テストパイロットの海軍少佐。最終所属は厚木基地・空母ロナルド・レーガンのVFA-115)、ラジャ・チャリさん(テストパイロットの空軍大佐)、ワレン・ホバーグさん(元マサチューセッツ工科大学工学科航空力学科准教授)の6名。

 カナダ宇宙庁の宇宙飛行士2名は、男性がジョシュア・クトリクさん(テストパイロットの空軍中佐)、女性がジェニー・サイディーさん(流体力学や低温燃焼を専門とする工学博士)です。

 NASAのブリデンスタイン長官は、お披露目の式典で「彼らはアメリカ最良の人材であり、また彼らにとっても宇宙飛行士の一員になれたという、とても素晴らしい瞬間を迎えています。2020年は、アメリカの宇宙飛行士がアメリカの地から、アメリカのロケットで再び宇宙へ向かうという記念すべき年で、月、そしてその先へ向かうアルテミス計画にとっても重要な年でもあります」と挨拶し、第22期生が新しい時代の幕開けとなる存在であることを強調しています。

 第22期生が宇宙飛行士として認定され、NASAの現役宇宙飛行士は48名となりました。この中から2024年に月へ着陸する男女(女性が月へ降り立つのは初めて)、そして2030年代半ばに計画されている火星への有人探査を行う宇宙飛行士が選抜されることになります。

<出典・引用>
NASA ニュースリリース
Image:NASA

(咲村珠樹)