史上初めて太陽の南極と北極の様子を接近して観測するという探査機、ソーラー・オービターが2020年2月9日23時3分(日本時間2月10日13時3分)にフロリダ州ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられます。この様子はネットで生中継される予定です。
ソーラー・オービターは、欧州宇宙機関(ESA)とNASAが共同で行う太陽観測プロジェクト。いまだに謎が多い太陽の活動について知見を深め、太陽風など地球に影響する「宇宙気象」のメカニズムを明らかにするミッションです。
宇宙機は2.5m×3.1m×1.2mの本体に、2.1m×1.2mの太陽電池パネルが6枚(展開した全幅18m)、そして観測機器を搭載した全長4mのブームと、6.5mのアンテナを3本装備しています。総重量は1800kg。
ソーラー・オービターには、太陽から放出される荷電粒子を測定する太陽エネルギー粒子線測定器(EPD)や極端紫外線イメージャ(EUI)、磁力計、コロナグラフ(太陽コロナ観測装置)、電波・プラズマ波動観測器(RPWI)、コロナ放射スペクトロ・イメージャ(RPW)、X戦スペクトロメータ・望遠鏡(STIX)、太陽風プラズマ測定器(SWA)など、ヨーロッパとアメリカの研究機関が開発した10の観測機器を搭載。周期168日の太陽周回軌道に乗り、太陽まで最大2600万マイル(約4200万km)まで接近して観測します。
太陽に接近して観測するという探査機では、2018年8月に打ち上げられたNASAのパーカー・ソーラー・プローブがあります。2020年1月には4回目の太陽最接近を果たし、その際に太陽風が生まれる音を観測しています。ソーラー・オービターは、このパーカー・ソーラー・プローブと連携して、それぞれ別の分野の観測を行って太陽に関する多くの知見を得ようというミッションなのです。
太陽から620万kmの距離まで接近するパーカー・ソーラー・プローブほどではありませんが、ソーラーオービターも太陽の高熱にさらされます。地球を周回する人工衛星に比べ、最大で13倍にも達する高熱に耐えるため、観測機器は耐熱シールドに守られているほか、太陽電池パネルも太陽への接近時は熱の影響が少なくなる角度へと調整されます。
そんなソーラー・オービターを打ち上げるのは、ULAのアトラスVロケット。固体燃料ロケットブースターを1本だけ追加した「411」という、過去5回しか行われたことのない、ちょっと珍しい仕様で打ち上げられます。ブースターが1本だけで推力が偏るため、メインエンジンの噴射方向を調整して真っ直ぐ飛行するというテクニックがポイントで、過去の打ち上げでは全て成功しています。
遠く離れた太陽へは、金星と地球の引力(重力)を利用したスイングバイで加速し、軌道を調整します。現在の予定では、2020年12月26日に最初の金星スイングバイをして、2021年2月には太陽まで0.5天文単位(太陽と地球の中間距離)まで接近。そこから2021年8月8日に2回目の金星スイングバイ、2021年11月26日には地球スイングバイを実施して、観測態勢に入ります。
金星スイングバイを重ね、軌道角を徐々に変化させながら太陽の周囲を22周するうちに、2025年3月から2029年7月にかけて17度、24度、30度、33度の軌道角で太陽の北極と南極を観測。まだ誰も知らない太陽の極で何が起きているのか、搭載する観測機器でデータを収集することになっています。
注目の打ち上げ生中継は、ESA WEBチャンネル、YouTubeなどのNASA TVで日本時間2月10日12時30分から開始予定。現地時間(アメリカ東部時間)の日曜深夜、日本ではちょうど月曜日のお昼休み頃となります。
<出典・引用>
ESA ニュースリリース
NASA ニュースリリース
ULA ニュースリリース
Image:ESA/NASA/ULA
(咲村珠樹)