ボーイングは2020年3月3日(現地時間)、アメリカ陸軍の次期軽攻撃/偵察機(FARA)計画に提案する試作機のデザインを公開しました。これで主要メーカーが提案する候補機が出そろいました。
アメリカ陸軍は老朽化して退役したOH-58カイオワ偵察・観測ヘリコプターと、その軽攻撃型カイオワ・ウォリアーの後継機として、次期軽攻撃/偵察機(Future Attack and Reconaissance Aircraft=FARA)計画をスタート。各メーカーに提案を募集していました。
ボーイングが公開した候補機のデザインは、6枚の複合材製メインローター1つを持つ2人乗り(縦列複座)単発機で、機体後尾部に推進用プロペラを設け、従来のヘリコプターより高速を実現するといいます。シングルローター式なので、メインローターのトルクを相殺するためのテールローターも存在します。固定武装として、機首にAH-1コブラと同様の3銃身式ガトリング砲を装備。
コクピットはタッチパネル式の多機能ディスプレイ(MFD)を採用。高度な自動化も進めるとしています。オープンアーティテクチャーのシステムを採用し、就役後の機能追加などにも柔軟に対応。自己診断システムも搭載しているため、整備面での省力化も実現します。
ボーイングのプロジェクトチーム「ファントムワークス」のゼネラルマネージャ、マーク・チェリー副社長は「我々が提案するのは、通常のヘリコプター以上のものです。効率的で統合されたシステムにより、陸軍の現在、そして将来の任務に適合します。我々は豊富な回転翼機開発経験と、創意工夫に満ちたイノベーションを織り交ぜ、非常に競争力の高いものを提案するに至りました」とコメントしています。
このFARA計画に候補機を提案しているのは、ボーイングのほか、シコルスキー、ベルといったヘリコプター開発に実績あるメーカーに加え、新興メーカーのAVX/L3、カレム(Karem)。有力な候補と目されているのはボーイング、シコルスキー、ベルで、現時点ではシコルスキーのS-97レイダーのみが実機による飛行試験まで進んでいます。
シコルスキーS-97レイダーは、二重反転ローターに推進用プロペラを組み合わせたレイアウトで、通常レイアウトのヘリコプターより段違いの高速を実現できますが、これまで本格的に実用化されていない方式なのがマイナス点。ベルの候補機である360インヴィクタスは、通常のヘリコプターに加え、揚力の一部を担う小さな主翼を設けた設計で、ミサイル等の兵器は胴体に収納して高速を実現します。
OH-58の後継機計画は、過去にも数回にわたって立案されましたが、なかなかアメリカ陸軍の要求する項目を満たせず、いずれもキャンセルになりました。今回は、寿命を延長しつつ運用していたOH-58が退役してしまったこともあり、いよいよ新しいヘリコプター採用になるのではないかと予想されます。
陸上自衛隊で老朽化が進むAH-1Sの後継機選定にも大きな影響を及ぼしそうな、アメリカ陸軍のFARA計画。2020年代後半には、その全容が具現化していくスケジュールとなっています。
<出典・引用>
ボーイング ニュースリリース
Image:Boeing/Sikorsky/Bell
(咲村珠樹)