新型コロナウイルスの感染が広がるアメリカ。重症肺炎患者は、地元医療機関の収容能力を超えるまでになっています。この状況を打開するため、トランプ大統領はアメリカ海軍の保有する病院船2隻をロサンゼルスとニューヨークに派遣。患者の受け入れを始めています。
アメリカ海軍は2隻の病院船を保有しています。カリフォルニア州サンディエゴを母港とするマーシー(T-AH-19)がインド太平洋地域、そしてバージニア州ノーフォークを母港とするコンフォート(T-AH-20)が大西洋カリブ海地域を担当。どちらも、全長272mの7万トン級タンカーを改装して建造されました。
2隻の病院船は、それぞれ最大1200名の医療要員が乗り組んでいます。1000床のベッドに加え、独立した手術室が12、X線撮影室が4、CTスキャナも1台備えており、まさに海に浮かぶ巨大病院。1986年から、第二次大戦中から活躍していたヘイブン級病院船に代わって就役しています。
アメリカ海軍の病院船は、19世紀初めのバーバリ戦争(アメリカと現在のリビアにあったカラマンリー朝との間に勃発した戦争)で、エドワード・プレブル提督のアイデアにより、ボムケッチ(臼砲艦)イントレピッドを負傷者収容船として使用したことに始まります。これまで1920年に就役したリリーフ(AH-1)を除き、輸送船やタンカーなどを改装して建造されてきました。
普段は自然災害などに見舞われた国で、人道支援活動を行っているマーシーとコンフォートですが、今回はアメリカの危機を救うために派遣されることになりました。第1陣として、マーシーが母港のサンディエゴを出港し、ロサンゼルスに接岸。カリフォルニア州を中心とした西海岸地域の重症患者の手当にあたります。
コンフォートは2020年3月28日(現地時間)、母港のノーフォークで、トランプ大統領やエスパー国防長官に見送られ、ニューヨークへ向けて出港。コンフォートがニューヨークで医療活動を行うのは、2001年のアメリカ同時多発テロで派遣された、9月14日~10月1日以来のことです。
2隻の病院船派遣に際し、アメリカ軍は予備役の招集も行いました。海軍作戦援護センター(NOSC)によって、今回の任務に適した予備役兵が選抜され、マーシーには約60名、コンフォートには120名以上の予備役兵が応召して乗り込みました。
ロサンゼルス港に接岸したマーシーでは、現地時間の3月29日から患者の受け入れを開始。マーシー船長のジョン・ロトラック大佐は「これほどの短期間で患者受け入れ準備を整えた乗組員たちを、心の底から誇りに思います。同時にカリフォルニア州、ロサンゼルス、ロサンゼルス港との密接な連携なくしては実現しえませんでした。我々はこの地での医療体制を強化し、ご期待に応えたいと思います」とコメントしています。
このほかにもニューヨークでは、マンハッタンにあるジェイコブ・K・ジャヴィッツ・コンベンションセンターが、臨時の病院に模様替え。2000名以上の州兵が動員され、3月25日から病床や医療機器の設置作業を実施したほか、医官や看護官による医療を提供。州兵による医療は、アメリカ各州でも展開されています。
ノーフォークを出発したコンフォートは、3月30日にニューヨークに到着し、接岸する予定。翌31日から患者の受け入れを開始することになっています。
<出典・引用>
アメリカ国防総省 ニュースリリース
アメリカ海軍 ニュースリリース
アメリカ陸軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy/U.S.Army
(咲村珠樹)