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灼熱から極寒、嵐まで!アメリカ空軍新型救難ヘリの環境試験

 墜落した航空機の乗員を救うため、厳しい環境でも出動するアメリカ空軍の捜索救難ヘリコプター。アメリカ空軍は2020年4月7日(現地時間)、新型のHH-60Wジョリー・グリーンIIについて、任務を行う際の環境試験を終了したと発表しました。

  •  アメリカ空軍の展開する範囲は、赤道直下から北極圏までほぼ全世界にわたります。当然、捜索救難(SAR)任務に就くヘリコプターも暑い場所から寒い場所、そして悪天候でも機体が対応しなければ、役に立つことはできません。

     フロリダ州のエグリン空軍基地には、航空機や装備品の環境試験を行う「マッキンリー気候実験場」があります。航空機の環境試験に使われるメインチャンバーは、アメリカ空軍最大のC-5M輸送機がすっぽり入る長さ約80m、幅約77m、高さ約21mという世界最大級の環境試験場。

     ここに運び込まれたHH-60Wジョリー・グリーンIIは、様々な気温や天候を模した環境で、搭載する機器が問題なく作動するかを確認されました。気温に関しては、北極圏を想定した摂氏マイナス51度から、赤道直下を想定した摂氏49度まで。さらに強烈な紫外線環境にもさらされました。


     また、嵐の中でも機器が問題なく作動するかを確認するため、風速20m(時速45マイル)の風と毎分492ミリ(130ガロン)の降水量を模したシャワーを浴びせます。ヘリコプターにとって、このような天候で飛ぶのは現実的ではありませんが、駐機中に嵐に見舞われ、そこで救難命令が出た際、機器が壊れていては任務を果たせません。いつでも飛べる状態にあるかを確認しておく必要があるのです。

     環境試験を担当した第88試験開発飛行隊のパイロット、ライアン・コート中佐は「高温や超低温、暴風雨といった過酷な環境でシステムの動作状況を確認することは、世界中の様々な環境下で救難任務を実施するヘリコプターにとって、実際の環境に即したデータを入手することにつながります。これは我々運用する側が、確実に機材を活用するために必要なことなのです」と環境試験の重要性を語っています。

     環境試験はヘリコプターの機体だけでなく、評価する側の人間にとっても過酷なものです。パイロットはこれらの過酷な条件下でコクピットに乗り込み、各種機器の操作を行います。特に低温環境下では防寒のため、フライトスーツも着ぶくれする状態になっているので、そのような状況でも機器を問題なく操作できるかという点を確認しなければなりません。

     今回の環境試験終了後、HH-60Wは再びフロリダ州ウエストパームビーチにあるメーカー(シコルスキー)の試験場へ戻されます。環境試験で得られたデータを分析し、さらに改良が加えられる訳です。

     第88開発試験飛行隊とともに環境試験を担当した、第413試験飛行隊のウェイン・ダークス中佐は「今回の試験はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の困難な条件下で実施されました。このような変化する情勢の中でも、試験のスケジュールを遅滞なく進めることができました。これはまさに、関係者の試験に対する姿勢と意欲の表れであるといえるでしょう」と、今回の環境試験について総括しています。

    <出典・引用>
    アメリカ空軍 ニュースリリース
    Image:USAF

    (咲村珠樹)

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