国際宇宙ステーションに人員を運ぶ民間宇宙船の1つ、スペースXの「クルードラゴン」が5月27日、初めて宇宙飛行士を乗せて打ち上げられることが2020年4月17日(現地時間)に発表されました。搭乗する2名のうち、1名はスペースシャトル最後の搭乗者です。
民間の再利用型宇宙船を使用して、国際宇宙ステーションへ人を往復させる、NASAの「コマーシャルクルー・プログラム」。ボーイングのCST-100スターライナーとともに選定されているのが、スペースXのクルードラゴンです。
クルードラゴンは、国際宇宙ステーションへの物資輸送で実績豊富な、ドラゴン補給船をもとに開発された有人宇宙船。ロシアのプログレス補給船が、有人宇宙船であるソユーズをもとに開発されたのと、ちょうど逆の関係にあります。
2019年3月には、実際に国際宇宙ステーションまで飛行し、宇宙船としての機能を確かめる無人の「デモ-1」ミッションを実施。クルードラゴン(シリアルナンバー:C201)は自動制御で、国際宇宙ステーションの「ハーモニー」モジュールにドッキングすることに成功しました。
その後、国際宇宙ステーションから離脱したクルードラゴンは、無事に予定されたフロリダ州沖の大西洋に着水。試験飛行は成功しました。
無人の「デモ-1」ミッション成功を受け、NASAとスペースXは、有人の試験飛行「デモ-2」ミッションに向けた検討作業を続けてきました。そして、トラブルに見舞われたアポロ13号が月から地球に無事帰還して50年となる4月17日、最終試験となる有人飛行の打ち上げスケジュールを発表したのです。
クルードラゴンの有人打ち上げ飛行試験「デモ-2」ミッションに搭乗するのは、ロバート(ボブ)・ルイス・ベンケン宇宙飛行士(元アメリカ空軍F-22テストパイロット/工学博士)と、ダグラス(ダグ)・ジェラルド・ハーレイ宇宙飛行士(元海兵隊テストパイロット)の2名。2人は同じ2000年に選抜されたNASA18期宇宙飛行士「The Bugs」のメンバー(ベンケン宇宙飛行士はミッションスペシャリスト、ハーレイ宇宙飛行士はパイロットとしての選抜)です。
ミッション全体のコマンダーを務めるのはベンケン宇宙飛行士。初の宇宙飛行は、2008年3月のスペースシャトル・エンデバーでのSTS-123。この時はJAXAの土井隆雄宇宙飛行士とともに、日本の実験モジュール「きぼう」の最初のパーツを運びました。2010年2月には再びエンデバーでのSTS-130に搭乗し、国際宇宙ステーションの展望台的施設である「キューポラ」などを運んでいます。
クルードラゴンのコマンダーを務めるのはハーレイ宇宙飛行士。2009年7月にスペースシャトル・エンデバーでのSTS-127で初の宇宙飛行を経験し、日本の実験モジュール「きぼう」の船外実験プラットホームと実験パレットなどを運んでいます。2011年7月には、スペースシャトル計画全体での最終飛行となったアトランティスでのSTS-135にパイロットとして搭乗。現在のところ、アメリカから宇宙に行った最後の4人のうちの1人です。
NASAから発表されたスケジュールでは、ケネディ宇宙センター39A打ち上げ施設からの打ち上げは、アメリカ東部時間の5月27日16時32分。ドラゴン補給船と同じく、スペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられます。
打ち上げからおよそ24時間後、クルードラゴンは自動操縦で国際宇宙ステーションにドッキング。2名の宇宙飛行士は国際宇宙ステーションへ移ります。国際宇宙ステーションでは、滞在している第63次長期滞在クルーとともに、いくつかの研究をはじめとした作業を実施することとしています。
今回のデモ-2ミッションでは、クルードラゴン(シリアルナンバー:C206)は最大110日間宇宙に滞在できる設計になっているとか。この期間のうち、適切なタイミングを見計らってクルードラゴンは国際宇宙ステーションを後にし、大気圏に再突入したのちフロリダ州沖の大西洋上に帰還する予定です。
有人の試験飛行であるデモ-2ミッションが成功すると、次はJAXAの野口聡一宇宙飛行士ら第64/65次長期滞在クルーが搭乗する「USCV-1」と呼ばれる実任務の飛行となります。こちらに使用される仕様(シリアルナンバー:C207)では、最大210日間の宇宙滞在ができる設計になっているとのこと。現在のところ、2020年夏以降の打ち上げが計画されています。
<出典・引用>
NASA ニュースリリース
スペースX ニュースリリース
Image:SpaceX/NASA
(咲村珠樹)