ノルウェー北方のバレンツ海で実施されていた、アメリカ海軍とイギリス海軍の共同訓練が2020年5月8日(現地時間)に終了しました。5月1日から1週間にわたり、対潜水艦戦闘(ASW)訓練や洋上補給の訓練を通じて、両国は北極圏特有の条件での戦技に磨きをかけています。

 今回の訓練に参加した艦船は、アメリカ海軍第6艦隊に所属するミサイル駆逐艦ドナルド・クック(DDG-75)とポーター(DDG-78)、そして高速戦闘支援艦サプライ(T-AOE-6)に相手役となる潜水艦数隻、そしてイギリス海軍フリゲートのケント(F78)。これにアメリカ海軍VP-4に所属するP-8A、アメリカ空軍のRC-135も哨戒機として参加しています。

 訓練にあたっては、アメリカ、イギリス両国はロシア国防省に対し、訓練の実施を事前通知しています。北極海の一部であるバレンツ海はロシアにも接しており、この海域で無用な軍事的緊張を高めることのないよう、細心の注意が払われました。

 アメリカ海軍の水上艦艇がバレンツ海を航行するのは1980年代の半ば以来。乗組員のほとんどは初めての経験となり、貴重な経験を積みました。

 イギリス海軍のフリゲート、ケントは搭載するヘリコプターのマーリン(第814海軍飛行隊)を使っての対潜水艦作戦訓練や、ドアガンでの射撃訓練を実施。また、アメリカ海軍の高速戦闘支援艦サプライから補給を受け、両国部隊の相互運用性も高めています。



 ケント艦長のポール・ホワイト中佐は「イギリス海軍は、北半球の高緯度地域における平和と安定に長年尽力しています。ケントがアメリカ海軍と協力し、透明性の高い開かれた形で訓練を実施することで、世界的な航行の自由と安全保障への関与を示すことができます」と、今回の訓練の意義についてコメントしています。

 ドナルド・クックとポーターが所属する、アメリカ海軍第60駆逐戦隊(DESRON 60)司令官のジョセフ・A・ガリアーノ大佐は「再びバレンツ海で訓練を実施できたのは素晴らしいことです。これは、我々が国際法に則って世界規模で活動する海軍であることを意味します。そして、イギリス海軍とともに訓練できたことは格別です」とコメントしています。

 この訓練に先立ち、ポーターは黒海でルーマニア海軍と、そして地中海でイタリア海軍、大西洋でフランス海軍と4月に連続して共同訓練を実施しています。ドナルド・クックも同じく、4月にバルト海でリトアニア海軍との共同訓練に臨みました。ヨーロッパ各国とアメリカの交流が活発化していることがうかがえます。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
イギリス海軍 ニュースリリース
Image:Crown Copyright 2020

(咲村珠樹)