ボーイングは2020年7月31日(現地時間)、アリゾナ州のデイビスモンサン空軍基地にアメリカ空軍と官民共同のF-16無人標的機改修ラインを構築し、その改修1号機を完成させたと発表しました。F-16を改修した無人標的機は、今後フロリダ州のティンダル空軍基地を拠点に、ミサイルなどの開発で標的として使用されます。
ミサイルの開発では、どれくらいの命中率で、どの程度目標にダメージを与えるのかを判定する際、最終的に対象となる航空機と同サイズの標的を必要とします。もちろん無人で遠隔操縦されるもので「フルスケール・ターゲット(実物大標的機)」と呼ばれるこの種の航空機は、規定の飛行時間を過ぎて実戦には適さなくなった機体を改造して用意されます。
これまでフルスケールの無人標的機は、実戦部隊から引退したF-4EファントムIIを改造したQF-4Eが使用されてきました。トータルで5000機以上が生産され、改造母機も豊富だったQF-4でしたが、機体の老朽化と消耗(開発試験での撃墜)が進んで引退しました。
QF-4に代わって無人標的機の改造母機となったのは、F-4に負けず劣らず生産数の多いF-16。無人標的機への改修はボーイングが受注し、2015年から改修作業が始まりました。
標的機へ改修されるF-16は、一旦アリゾナ州ツーソンにあるデイビスモンサン空軍基地に集められます。ここで第309航空機整備再生集団(AMARG)によって仕分けされ、フロリダ州ジャクソンビルにあるボーイングの工場へ送っていたのですが、デイビスモンサン空軍基地でも補助的な改修ラインを官民共同で稼働させることになったのでした。
第309航空機整備再生集団司令官のジェニファー・バーナード大佐は、デイビスモンサン空軍基地での改修1号機完成に寄せて「AMARGによって改修されたこの最初のQF-16は、ボーイングと官民共同パートナーシップを結んだ際に期待していた、協力的かつ相乗的な関係を証明するものです。ドローン(無人機)への改修パッケージを取り付けるというのは、私たちにとって比較的新しい取り組みですが、私たちはコスト効率と能力を活用し、パートナー同士双方に利益をもたらすことを望んでいます」とのコメントを発表しています。
ボーイングでQF-16プログラムを統括するクレイグ・デミースター氏は「ボーイングとAMARGとのパートナーシップは、兵士に素早く能力を提供するために重要です。これは素晴らしいチームワークの一例であり、今年、そして来年にもっと多くのQF-16を引き渡すことになっているため、この改修1号機はほんの始まりに過ぎません」とコメントしています。
アメリカ空軍は、2015年の契約によれば120機以上のQF-16を調達する予定です。現時点では、そのうちの40%ほどが改修を終え、引き渡されているとのこと。改修拠点が2つに増えたことで、引き渡しのペースも今後増加していくことでしょう。
<出典・引用>
ボーイング プレスリリース
Image:USAF
(咲村珠樹)