飛行中に排気ガスを出さず、クリーンな電動飛行機。旅客機に使えるような速度を出せる亜音速機を実現するため、NASAが動力システムの開発・製造を担当する業者を募集することになり、アメリカ国内企業を対象に提案要求を公開しました。動力システムの出力はメガワット級と、従来の電動飛行機とは桁違いの出力を必要としています。

 NASAでは2035年の実用化(就航)を目指し、モーターによる統合電気推進(EAP)旅客機の研究を進めています。自動車が徐々に電気自動車へとシフトしていくのと同じように、旅客機の分野でも電動化を進め、気候変動に影響を与える二酸化炭素の排出を減らしていこうというものです。

 電動旅客機が実現できる市場として、NASAと業界団体は現在ターボプロップ機やリージョナルジェット機が使われている、短距離路線用の小型機を想定。国際線のような長距離路線は現実的ではないので、アメリカやヨーロッパの単距離国内線や島々を結ぶ路線を念頭に置いており、NASAのほかにも、EUで「MAHEPA」というハイブリッド電動旅客機開発計画が進んでいます。

 今のところ、実用化され型式証明を受けている電動飛行機は、ほとんどが出力100キロワット未満の軽飛行機レベル。速度も遅く、旅客機に使えるような「亜音速」と呼ばれるマッハ0.3~0.8程度の速度で飛行できる規模の機体は実現できていません。

ヨーロッパで型式証明を受けた電動飛行機アルファ・エレクトロ(Image:ヨーロッパで型式証明を受けた電動飛行機アルファ・エレクトロ(Image:PIPISTREL))

 このため、NASAでは電動旅客機の実現を目指して、亜音速で飛行できる大型の電動飛行機を開発することに。その心臓部である、メガワット級という大出力の動力システムを開発・製造する企業を公募するため、提案要求を公開したのです。

 NASAでこのプロジェクトを統括する、統合航空システムのプログラム・ディレクタ、リー・ノーブル氏は「この提案要求の公開は、NASAが業界と連携し、メガワット級の動力システムを飛行させることによって実証し、EAPの技術をさらに熟成させるステップとなります。この実証飛行は、アメリカが次世代民間機における競争力を促進する、持続可能で高効率な動力システムに大きく寄与します」と、今回の提案要求について語っています。

 この提案要求は、アメリカ国内企業のみが対象で、国外からの応募はできません。提案の受付締め切りは、アメリカ東部標準時の2021年4月20日となっています。

<出典・引用>
NASA プレスリリース
アメリカ連邦政府契約関連総合サイト NASA電動飛行機用動力システム提案要求
Image:NASA/PIPISTREL

(咲村珠樹)