今や色々な小型機器に使われているボタン形の小さな電池。でも、発売された当初は「豆電池」なんて呼ばれ方をしていたようです。初期の頃からボタン形電池を作っている、マクセルのTwitterアカウントがアンケートを実施したところ、およそ2割強の人が「豆電池」と呼んでいる……という結果が出ました。

 クォーツ式の腕時計や、cds(硫化カドミウム)やSPD(シリコンフォトダイオード)を素子に使ったカメラの露出計用として一般的になった小さなボタン形電池。現在ではソーラー電卓のバックアップ用や歩数計、小型のLEDライト(キーライト)など、様々なものに電源として使用されています。

 使用する機器の普及にともなって取り扱う店も増え、コンビニでも欠かせない商品として並んでいるボタン形電池ですが、普及が始まった当時は珍しかったこともあり、名称にブレが生じていました。「豆電池」という俗称もそのひとつで、小さいことを示す接頭語の「豆(例:小柄な柴犬を示す「豆柴」や「豆電球」など)」をつけて、これまでとは違う「小さい電池」であることを表現したものです。

 今回Twitterアンケートをしたマクセルは、ブランド名が「最高の性能を持った乾電池」を示す「Maximum Capacity Dry Cell」に由来する通り、創業製品が乾電池の企業。1963年には国内初のアルカリ乾電池を作るなど、電池の世界でも様々な「初めて」を実現しています。

 小型の電池では、1981年に「CR」の型番で呼ばれるコイン形リチウム電池(二酸化マンガンリチウム電池)、そして1987年には世界最小径(直径4.8mm)の酸化銀電池「SR412SW」と「SR416SW」を商品化しました。

 マクセルの公式Twitterアカウントでは「『ボタン電池のことを豆電池って言ったら通じなかった……』というエピソードを聞いたので、皆様のご意見を」として、豆電池と「いう」か「いわない」かをアンケートで募集。993票が集まり、豆電池と「いう」が22.8%、そして「いわない」が77.2%という結果になりました。

 リプライ欄で「いう」場合は、住んでいる地域などを教えてください……としているのですが、寄せられた意見に「たぶん、世代だと思います」というものが。

 確かに、寄せられたリプライを見ていると、地域的な偏りよりも、親や祖父母が使っていた、という感じの傾向が見られます。小さい頃は「豆電池」だったけど、大人になって言わなくなったという意見もあり、家庭内で定着している呼び方が「豆電池」だったことがうかがえます。

 小さなボタン形電池は、一部の規格(R41・R43・R44・R48・R54・R55・R70)を除き、電池の化学構造を示す電池系の記号と丸形を示す「R」、そして直径と厚みの寸法を示す数字で型番が表記されています。たとえばアルカリ乾電池は「LR」、酸化銀電池は「SR」、一般的に「リチウム電池」と呼ばれる二酸化マンガンリチウム電池は「CR」で始まる型番で、リチウム電池は厚みが薄いため、その形状から「コイン電池」と区別される場合もあります。

マクセルのボタン型電池(マクセル公式Twitter提供)

 機器の小型化に貢献しているボタン形電池ですが、小さな子やペットなどの誤飲による事故が発生するのが難点。特にコイン形リチウム電池は電圧が高いこともあり、消化器の粘膜をおかして穴を開けてしまう危険性があります。

 メーカー側も対策を進めており、2016年に業界団体の一般社団法人 電池工業会から「コイン形リチウム一次電池の誤飲防止パッケージガイドライン」が発行されています。原則は「乳幼児が飲み込めないサイズ」と「乳幼児が素手で開封できないようにする」というもので、パッケージを接着する材料を工夫するなどし、事故を未然に防ぐよう気を配っています。

マクセルのコイン形リチウム一次電池誤飲防止パッケージの例(マクセル提供)

 また、不要になったボタン形電池を捨てたり、リサイクルBOXに入れたりする際や、未使用のものを保存する際は、ショートによる発火事故を防ぐため、表と裏の電極に粘着テープを貼り、絶縁するのが鉄則。ちょっと面倒な手間ではありますが、心がけるようにしたいものです。

<記事化協力>
マクセル 公式Twitter(@maxellJP)

<参考>
一般社団法人 電池工業会コイン形リチウム一次電池の誤飲防止パッケージガイドライン」第2版
一般社団法人 電池工業会 電池の規格について

(咲村珠樹)