コロナ禍でリモートワークの時間が増えて運動不足になり、筋肉が落ちたと感じる人も多いのではないでしょうか。一般社団法人Jミルクが筋肉に必要不可欠な「タンパク質の『質』と効果的な摂取法」をテーマに立命館大学の藤田聡教授を迎え、6月28日にメディアミルクセミナーをオンラインで開催。運動不足が気になる筆者も参加しました。
著書に「図解 眠れなくなるほど面白いたんぱく質の話」(監修)や「体育・スポーツ系指導者・学生のためのスポーツ栄養学」などがある藤田教授。セミナーでは、まず「筋肉の役割と筋量低下の弊害」について説明しました。
筋肉の量は20代や30代をピークに少なくなるとのことで、たとえ継続的に運動を続けている人でも筋量は加齢とともに徐々に減っていくのだとか。この加齢による筋量と筋機能の低下減少を「サルコペニア」というのだそうです。そして筋量が減少すると、高齢者は歩行機能に影響が出て転びやすくなるなど、要介護の状態になる一歩手前「フレイル」にも陥りやすくなると話していました。
他にも、筋量が減って内臓脂肪量が増えることにより糖尿病の発症リスクが増加したり、心疾患リスクを高めたりするなど、様々なデメリットについて教えてくれました。筋肉量は2週間の活動低下で減少してしまうそうで、運動不足が続くと簡単に筋肉は減ってしまうのだとか。
逆に同じ体重であっても筋量が多いと、必然的にそれだけエネルギーを消費しなければいけないので、より太りにくい体になるとのこと。筋肉って本当に大切なんですね。筋量の目安としては、両手の人差し指と親指で輪を作り、ふくらはぎの一番太いところがそれより細いと不足気味なんだそうです。
では、そんな筋肉を増やすには、どうしたら良いのか?問題はそこですよね。藤田教授によると「筋量や筋力の維持、そして向上には食事からのタンパク質摂取が重要」なのだとか。さらにタンパク質の中でも重要なのは必須アミノ酸で、その中でもロイシンという成分が重要とのこと。
運動やダイエットをする時に「やる気スイッチ」を自分で押すのが何よりも大切だったりしますが、筋量を増やすのに大切な筋タンパク質の合成を制御するシグナル因子、いわば「筋肉のやる気スイッチ」を押す時に重要なカギを握るのが、このロイシンという必須アミノ酸のようです。また、加齢にともなってロイシンへの抵抗性が上がってしまい、より多く必要なんだとか。
ちなみに、筋肉を増やすのに必要なタンパク質の摂取量には最低ラインがあり、朝食・昼食・夕食の3食それぞれで20gの摂取が目安。1食でもタンパク質の摂取量が20gを下回ると、筋量低下のリスクが高くなるそうです。
昼食や夕食なら大丈夫だと思いますが、朝食で必要な分だけのタンパク質を摂取するのは大変だろうなぁ……と思っていたら、案の定そういう傾向を示す調査データも。やはり「朝食でのタンパク質は不足しがち」と藤田教授も解説していました。
そして食事と同じくらい大切なのがレジスタンス運動(筋トレ)。筋トレをすることにより、アミノ酸やタンパク質摂取の効果を高めるんだそうです。
筋トレというと、重いバーベルを何度も両手で持ち上げるようなことをイメージしてしまいます。しかし、それはケガをする危険性が高くなり、継続することも難しくなってきます。藤田教授曰く、筋トレの効果は筋肉の仕事量(負荷×回数)に比例するそうで「軽い負荷でも回数を増やせば大丈夫」とのこと。
ちょっと安心した人もいるかもしれませんね。さらに、筋トレの効果は2日間持続するので毎日やる必要は無く、月・水・金とやるだけでもOKなんだそうです。筋トレの内容については、伸縮性のあるゴムバンドを用いた運動を例に挙げていました。無理のない範囲で長期的にやることが最も大切なことのようです。
最後に藤田教授は今回のテーマでもある、筋トレの効果を最大限に引き出す「タンパク質の『質』」について紹介。運動後は大豆タンパク質よりも、カゼインなど乳由来のタンパク質を摂取した方が効果があり、前述の必須アミノ酸であるロイシンの含有量が多い食品として「普通牛乳」「低脂肪乳」「ヨーグルト全脂無糖」「ヨーグルト脱脂加糖」「プロセスチーズ」などを取り上げていました。
また、筋トレの効果を最大に高めるタンパク質の摂取量は、体重1㎏あたり1日1.62gとのこと。セミナー終了後の質疑応答ではタンパク質の摂りすぎによる害についても質問がありましたが、藤田教授は「(体重1㎏あたり1日)1~2g程度の摂取では腎機能の低下は、まず無い」と説明されていました。
コロナ禍で(だけが理由というわけではありませんが)運動不足になり、年齢による筋肉の衰えも感じていた筆者にとっては、大変参考になる藤田教授の講演でした。同じ悩みを抱えていた人も参考にすると良いかもしれません。
取材協力:一般社団法人 Jミルク
※画像は一般社団法人 Jミルク公式ホームページのスクリーンショットです。
(佐藤圭亮)