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この人ヤバイ(ほめ言葉) 野生のアナハイム社員が「全自動変形バンシィ」を遂に完成させる

 「全身自動変形のバンシィ書くとこないからとりあえず見て」というつぶやきとともに、つとむニキさんがTwitterで公開した約30秒の動画。そこには、ガンダムシリーズ作品「機動戦士ガンダムUC」に登場するMS(モビルスーツ)「バンシィ」こと、ユニコーンガンダム2号機の姿が。

  •  動画ではバンシィが、「ノーマルモード」から「デストロイモード」へ変形する様子が紹介されています。ところがそれが全自動にて作動しているのです。さらには「サイコフレームの露出」とも呼ばれる、全身が発光する仕掛けも披露。

    動画冒頭のバンシィ。ノーマルモードのいで立ち。

    全身を発光させつつ、デストロイモードへ「変形」。

     本物そっくりの見た目に、一連の動作のスムーズさ。多くのTwitterユーザーが目を奪われた結果、4万近いいいねと、40万を超える再生回数を記録しています。

     あまりにもの完成度に、「最近のホビーはスゴイな」と思われる方が多いかもしれません。が、これはつとむニキさんが3DCADを用いて1から作り上げたファンアート作品。デストロイモードへの移行やサイコフレームの露出は、内部に搭載したセンサーやサーボモーターを駆使して、原作を忠実に再現しています。

     つとむニキさんは、自作で「動くガンダム」を作り上げるスクラッチビルダー。

     一般の社会人ながら、「野生のアナハイム社員」とも称されるプロ顔負けの技巧で度々注目されています。製作過程を紹介しているYouTubeチャンネルでは、動画再生回数が時に100万回を突破することも。

     高等専門学校出身で、在籍時にはロボコンを専攻していたという経歴があるとはいえ、「本当は玩具メーカーの社員さんなんじゃ?」という“疑惑”がかけられるほど、作品に対して多くの方が魅了されており、編集部でも今から約半年前(2021年4月)に特集しています。

     その際は、上半身のみ完成している状態での紹介。今回「完全体」となったこともあり、筆者は再度つとむニキさんに取材を申し込み。作品の詳細や、今後の活動について話をうかがいました。

    ■ 全てにおいて「ユニコーン」を上回る

     つとむニキさんは、バンシィ以前に「ユニコーン」ことユニコーンガンダム1号機も製作。本作は2機目の作品となります。

     元々「REAL EXPERIENCE MODEL ユニコーンガンダム(AUTO-TRANS edition)」という、自動変形するユニコーンガンダムの胸像部分のガンプラが発売されることを知り、購入を試みたものの、当の商品が2021年11月に発売予定だということが判明。

     しかしながら、どうしても手に入れたかったというつとむニキさん。「なら、自分で作ればいいじゃないか」という発想で、約半年かけてユニコーンガンダムを「開発」。ちなみに胸像だけでは飽き足りず、結果全身をスクラッチビルドされています。

    バンシィ以前にユニコーンを製作していた投稿者。

    バンシィ同様に「全自動変形機能」を搭載。

     今回のバンシィは、ユニコーン完成直後の2020年10月から製作開始したもの。2021年10月の公開までには約1年もの期間がかけられています。

    編集部で以前記事にした際は上半身のみでした。

     作品としてこだわった部分はというと「全て」とのこと。

     「『ここはユニコーンの方が良かった』と思ってしまう部分を作らないことを重視したんです。機構の設計とモデリングも全体的にブラッシュアップしていますよ」

     また、限りなく原作通りの変形を再現できるように、プロポーションに関しても徹底的にこだわっています。前作のユニコーンは、全体的にずんぐりむっくりとした体なのですが、今作のバンシィに関しては、アニメや小説の世界から具現化したかのような姿に「スリム化」。

    ややずんぐりむっくりした体のユニコーンと比べ、バンシィはスリム体型に。

     今回新たに製作した下半身ユニットについては、「基本的に各部位のサイズが大きいので、機構自体の設計はそこまで大変ではありませんでしたよ」とのこと。サラッと語っていますが、当然ながら容易にできるものではありません。

     つとむニキさんは、ユニコーン・バンシィ双方のボディ部分を、「積層型」と呼ばれる3Dプリンタを用いて、デザインをしたのち出力しています。ただ、出力したボディは、ざらざらした触り心地の積層痕が残留。ガンプラのようなすべすべした表面にするために、ヤスリなどで削る作業を行っています。

    3Dプリンターでパーツは出力。さらにヤスリなどを用いて表面を整えます。

     全身が発光する機能については、事前に設定したプログラムによって表面に取り付けたLEDが光り、結果「サイコフレームの露出」という演出に。これが前作のユニコーンと同様の仕組みなので、手慣れたつとむニキさん的に「大変ではない」という感想になります。

    内部のセンサーが作動することで、表面に取り付けたLEDが発光。

     ただ……お察しの方は多いと思いますが、これは努力と根性、そしてとてつもない模型スキルに、飽くなき探求心があわさったからこそできた作品。また「探求心」は、「原作通りに変形するにはどうしても不満で」と、前回記事で紹介した『顔』部分は新たに作り直したというエピソードにも反映されています。よもやよもやだ……

     そんな姿勢で臨んだからこそ、今作のバンシィは前作のユニコーンから大幅なグレードアップを果たしています。

    徹底したこだわりにより、前作ユニコーンから大幅なグレードアップを果たしたバンシィ。

     とはいえ、ユニコーンも決して劣っているということではありません。むしろ、最初から作り上げたことを考えれば驚きのクオリティ。ユニコーンという「過程」があったからこそ、バンシィという「傑作」が生み出されています。

    とはいえ、全ては完全ゼロベースで作り上げたユニコーンあってのバンシィ。

     そんなつとむニキさんですが、バンシィの完成によりものつくり活動は一段落。ただ、この2年あまりの期間で生み出された「ユニコーン」と「バンシィ」に魅了された方は多数。今後の動向が注目されるところです。筆者は最後にその点について聞いてみると、“らしさ”を感じる答えをいただきました。

    「ひょっとしたら、今後私が作る作品は、今見ていただいている方が期待されていないものになるかもしれません。ですが、もしそうだとしても、これからも『自分が作りたいもの』を自分のペースで作っていきたいですね」

    <記事化協力>
    つとむニキさん(Twitter:@foresttail924/Instagram:@tsutomumorio)

    (向山純平)

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