蒸気機関やガソリンエンジンなど、熱を利用して動く機関の中で、最も効率が良いとされているスターリングエンジン(スターリング機関)。海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦にも採用されていますが、これを使ったとても役に立つ(?)装置がTwitterに投稿されました。
飲み物の熱を利用し、スクリューで自動的にかき混ぜてくれる装置。これで手を使わずにかき混ぜられるよ!
この装置を作ったのは、エンジニアのyoheiさん。科学実験の教材として市販されているスターリングエンジンを使用し、作り上げました。
スターリングエンジンとは、19世紀の初めにイギリス人技師のロバート・スターリングによって発明された熱機関。シリンダー内の気体が外部からの熱によって膨張し、また外気によって冷却され収縮するサイクルを繰り返すことでピストンが往復運動する、温度差を利用した機関(エンジン)です。
外部から熱が供給され、温度差が生じる限り動き続けるという、大変高効率な機関ではありますが、ある程度以上のパワーを発揮させるには装置が大規模になって効率が低下する欠点があり、現在では科学実験教材や小規模な発電設備などに利用されるくらいの存在。海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦では酸素を必要としない特性を利用し、気体にヘリウムを使って潜航時に発電機を動かす動力源として用いられています。
yoheiさんが装置に利用したのも、科学実験教材用のスターリングエンジン。大小2つのシリンダーがクランクで大きな弾み車に接続され、大きなシリンダーの方に熱を加えるとピストンが動き、弾み車を回すという仕組みです。
このままでは単に弾み車がクルクル回るだけなのですが、yoheiさんは実用的な装置にするため、回転する弾み車から力を取り出す機構を設計して3Dプリンタで出力。「設計に2日、製作に2日くらいです。ただ、設計して部品を出力したあとに一旦興味を失い、1年ほど寝かせていました」と話してくれました。
熱源として熱い液体を用意し、スターリングエンジンを載せます。設計通り、熱によってピストンが作動し、回転する弾み車につながった液体中のスクリューを回すことに成功。
スターリングエンジンは、熱が供給されるシリンダーと、外気に触れて冷却されるシリンダーとの温度差がある限り(厳密にはピストンとシリンダーの摺動、回転部に生じる摩擦もブレーキとなります)、基本的に動き続けます。今回の実験では「熱湯からスタートして、約9分ほどで止まりました」とyoheiさん。
液体が冷めるまで静かに動き続ける「かき混ぜ装置」。しかし、残念なことに実用には程遠い、とのこと。
「実は味噌汁をかき混ぜることを目的に作ったのですが、かき混ぜる能力が足りませんでした。出力を上げることは難しい気がするので、伝達部の摩擦損失を減らすことや、スクリュー形状の改良に、気が向いたら取り組むかもしれません」
どうやら味噌汁では液体の粘性が高すぎ、きれいに混ぜられるほどの力でスクリューが回らなかった模様。この辺りは高負荷に弱いスターリングエンジンの欠点が出てしまったようですね。
さらに改良され、見事に「自動味噌汁かき混ぜ機」は誕生するのでしょうか。ほかの方がブレイクスルーなアイデアで完成させても、面白いかもしれませんね。
飲み物の熱で飲み物をかき混ぜる装置つくった pic.twitter.com/CUAcLdEyvj
— yohei (@Y0HEl) May 4, 2022
<記事化協力>
yoheiさん(@Y0HEl)
(咲村珠樹)