切り絵というと、シルエットを切り抜いたり、描線を切り残したりする平面的な作品を思い浮かべる方が多いと思います。ところが、平面的な作品だけでなく、紙を切って立体的な作品も作り続けているアーティストがいます。
自らを「我流切紙人」と称する川崎利昭さん、小さい頃から取り組んできたという、その独特の作品についてうかがいました。
川崎さんが「切紙」作品を作り始めたのは、なんと幼稚園時代からというから驚きです。「当時は今のカプセルトイのようなリアルなものがなかったので、自分で作っちゃえ~!という感じでしょうか(笑)」と、きっかけを振り返ってくれました。
現在のようなリアルな作風が確立されていった過程をうかがうと、始めた当時は図鑑などを見ながら模倣していたそうです。「そこからオリジナリティを出して好き放題、さらにリアルな仕上がりを求めて、アレンジを加えながら再度模倣し、現在はまた好き放題といった感じです」とのこと。
プロとなった今では、販売する作品や水族館などからの依頼品などもあり、作品数は数万点にのぼるのではないか、という川崎さん。幼少期は昆虫が多く、中でもチョウやクワガタが多かったそうで、プロになってからは昆虫館や水族館からの依頼が多かったこともあり、虫や水棲生物、海藻などを作ることが多いんだとか。
また、平面作品と立体作品は、作り始めた頃からほぼ同時に作っているんだそうで「立体作品と平面作品の作風がかなり違うのはそのためです」。平面から立体に移行したのではなく、それぞれが独自に発展していったのが現在の形になっているようです。
個人的にお気に入りの作品をうかがうと「サソリ、カマキリ、海藻、リーフィーシードラゴン(タツノオトシゴに似た魚)。このあたりは展示会でも好評をいただいています」。サソリは体長数mmという米粒大の作品もあります。
カマキリは羽を広げ、威嚇するような姿。ジオラマ風に作られた水棲昆虫の作品も、数々の種類があって目を楽しませてくれます。
また、アメリカザリガニは脱皮したての半透明な体が、トレーシングペーパーを用いて特徴的に表現されています。一瞬、紙であることを忘れさせる出来栄えです。
素材は画用紙からスタートしてタント紙、様々な紙を経て、現在はほぼトレーシングペーパーで全ての作品を作っているとのこと。「基本的には紙とハサミとピンセットが主な道具で、接着は木工用ボンド、最近はレジン(樹脂)を組み合わせることが多いです」
作品は「生物そのものの特徴はいかしつつも、独自のアレンジを加えたり、ちょっとした遊び心をさりげなく表現しています」と語るように、リアルでありつつ、切紙作品として成立するようになっているといいます。作品を鑑賞する際は、どのあたりがどのようにアレンジされているのか、探してみる楽しみもありそうです。
これまでにも様々な展覧会や、デザインフェスタのようなイベントに参加している川崎さんですが「8月以降、東京中心にイベントラッシュの予定です」と嬉しい情報も教えてくれました。一部のイベントでは作品の即売も行われるので、Twitterをチェックしておくとよさそうです。
また、ツイートした作品の通販や受注品の制作も常時受け付けているとのこと。気になった作品があれば、TwitterのリプライかDMでご依頼くださいとのことです。
#RTで通知爆発祭り
紙の可能性無限大✨ pic.twitter.com/2SKpKL1eYT— 我流切紙人 (@garyukirigami) May 23, 2022
<記事化協力>
我流切紙人(川崎利昭)さん(@garyukirigami)
(咲村珠樹)