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9割以上の酪農家が経営難 中央酪農会議が実態調査を実施

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 一般社団法人中央酪農会議が日本の酪農家197人を対象に、酪農経営に関する実態調査を実施。9割以上が経営悪化を感じ、このままの環境が続いた場合、半数以上が「酪農経営を続けられない」と回答したという衝撃の結果が発表されました。

 牧場の経営状況は6割以上が「赤字」と回答しており、日本の酪農は岐路に立たされているようです。

  •  中央酪農会議は、1962年に当時の農林省事務次官通達に基づき、酪農関係の全国機関によって設立された酪農指導団体。「畜産経営の安定に関する法律」に基づく指定生乳生産者団体と、酪農関係全国機関とで構成されています。

     調査は2022年6月9日~6月14日に、国内の酪農家197人を対象にアンケート形式で実施。経営環境についての質問では、過去1年間に「経営を困難に感じた」と回答したのは全体の92.4%、現在「経営の悪化」を感じている酪農家は97.0%にも及びました。

     また、直近1か月での経営状況に関しては、黒字が26.4%に対し、赤字と答えたのは65.5%。酪農家が厳しい経営環境に置かれていることが分かります。このような環境が今後も続いた場合、酪農を「続けられない」とした酪農家も全体の55.8%を占め、日本の酪農が存続の危機に瀕していることが明らかになりました。

    中央酪農会議による酪農家への調査結果

     厳しい経営環境にさらされている日本の酪農。経営悪化の要因について複数回答で聞くと、輸入飼料の価格高騰につながる「円安」を挙げたのが89.8%、ヨーロッパ有数の農業大国であり、飼料の原料を供給しているウクライナでの情勢(85.3%)、それにともなう原油高(84.3%)が上位3つとなりました。

    経営悪化の要因

     このほかにも、今なお続く新型コロナウイルス禍(70.6%)、それに関係する休校にともなう学校給食用牛乳の休止(48.2%)、飲食店の休業(38.6%)も挙げられました。長引く新型コロナウイルス禍で経営体力を削り取られてきた上で、ウクライナ情勢による急変が追いうちをかけたようです。

     酪農経営において、減少を感じた収入源(複数回答)を問うと「牛販売の収入の減少(67.0%)」と「生乳販売の収入の減少(61.9%)」を挙げる酪農家が多いという結果。どちらも主要な直接収入であり、経営努力でカバーするのが難しい要素です。

    減少を感じた収入源(複数回答)

     収入が減少し、経営環境が悪化する状況は、どのような影響があるのでしょうか。複数回答のトップとなったのは「将来に向けた牧場投資の減少(67.0%)」、ほとんど差がなく「貯金の切り崩し(66.5%)」が続きます。

    経営悪化による具体的な影響

     生活費の切り下げ(47.7%)や借入金の増加(45.2%)という回答も続き、全体的に将来への展望がひらけず、縮小する方向へ向かっているようです。この状況が続けば、さらに将来への不安が増大しかねません。

     酪農は多くの生き物(乳牛)を相手にするため、基本的に休みも取りにくい上、敷地の確保など初期投資も大きく新規就農をしづらい面が挙げられます。現在の状況が続けば経営が成り立たず、酪農家が減少して乳製品の流通量が減ることも予想され、日本の経済に大きな影響を与えるかもしれません。

    情報提供:一般社団法人 中央酪農会議

    (咲村珠樹)

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