フィルムカメラのお話毎度風水的にはきっとダメダメなお話をおとどけしています不定期連載の「エドガーの無所可用、安所困苦哉」。27回目は「愛用のカメラ」について語ってみようかと思います。

これまで紹介させていただいた鉄道ネタの回の写真の多くは、ずっと以前に写したものがほとんどです。そしてそれらの写真は、同じカメラで撮影しています。このカメラ、「アサヒペンタックスSP」という機種で、今でも中古屋に行けば、相当コンディションの良い物でも数千円で売られています。


初回発売は1964年。バリエーションを含めると340万台が売れたという世界的ベストセラー。
このカメラは叔父からお年玉として譲り受けた当時、すでにかなり旧型化していました。

さて、主な特徴を記しますと、
・レンズは、「スクリューマウント」、要するにネジのようにまわして装着。
・露出計を内臓した初の一眼レフ
・露出計以外には電池を使わない完全機械式。露出計を内臓したカメラとしては最初期のもの。
・ピント、絞り、シャッタースピードのすべてが手作業。

アサヒペンタックスSP

このカメラを入手した頃は、露出に関しては一眼レフでもオート化が進んでいた時代でした。
当時、既にクラシックなカメラだったのですが、叔父から譲り受けたという事もありワタシには大切なカメラとなりました。

ただ、ちょっと困ったのは、付けられるレンズが製造されていなかったこと。
中古店を回っても状態のいいレンズは少なく、50mmレンズ一本で数年間使い続けます。

自分のお金に余裕が出てきた頃、珍しく買ったカメラカタログ(付けられるレンズの新品は無いので、カタログを買うことは無かったのです)で、マウント部分を交換できるレンズメーカーがあるのを知りました。
実物を見たら、ちゃんとスクリューマウントにも対応しています。すばらしい!と、念願であったズームレンズを入手し、75~210mmという画角を入手したのです。

レンズ

以後、デジタル一眼を買うまでの間、延々と使い続けました。
ある年にはニコンのFM2というこれまた全部手作業のカメラを買うのですが、使い慣れたSPのほうが稼働率が高かったです。
すべて手作業で設定できるので、厳しい条件でも撮影しました。

良く撮っていたのはいわゆる「逆光」です。
おたくま画廊に投稿しオタコレ2010で入賞したこの写真も逆光です。鉄道写真なのに車両はまっくらです。鉄道写真ではこういう撮り方はあまり好まれません。当時は写真を撮るのが楽しく、自分で考えた露出での出来上がりが楽しみでした。全く自己満足だけだったのですが、十数年の時を経て評価をいただいたのはうれしい限りです。

この写真はきれいに決まってくれていますが、失敗した逆光写真は全部が真っ暗とか全部が真っ白とかもよくありました。今はカメラによっては逆光だとシャッターが下りない仕様のものもあるようです。ミスの防止というニーズなのでしょうが、写真の個性という点ではどうなのかなぁと思います。
電池を使っていないという点では、冬に北海道へ友人と出かけた際、友人のカメラが寒さでシャッターが下りなくなってしまったのに、ワタシのSPは普通に使えていました。このときは野鳥を撮影していたのですが、友人は双眼鏡で見ているだけになっていました。

ずっと使ってきたSPですが、パソコンとデジカメの時代になり、デジタル一眼・ニコンD70を入手しました。オートフォーカスに露出も自動と、なにも考えなくても写真が撮れます。SPでは非常にきつかった「咄嗟の一枚」が撮れるところは感動しましたが、一方で写真が平板になることがままありました。ピントをきちんと合わせるところと意図的にボケを出したいところを制御しずらいのです。
露出計とシャッタースピード調整とシャッターボタンしかなかった本体をずっと使っていたので、たくさんのボタンに慣れるのにも結構な時間を要しました。しかも考えていたような仕上がりにならず、どうもすっきりせずにおりました。
ある日、写真の道ン十年という方とそんな話をしていたら、「フルマニュアルのカメラのイメージで使いたかったら、D70じゃムリ」と言われました。このクラスのカメラはミドルレンジ向けなので、ワタシが当たり前と思っていた「露出を計って絞りとシャッターを決めるという面倒な操作」には向いていないのだと。要するにもっと高いカメラじゃないと、マニュアル機のような使い方はできないよと。
しかしD70の上となると本体だけでも20万円近くするものです。このお値段はさすがになかなか手が出ない。ということで、数年かかってD300sまでたどり着きました。
D300sは高機能で、操作を覚え切れていません。これもまた慣れですので、稼動の機会を増やして少しずつ慣れていかねばと思います。

アサヒペンタックスSP

■ライター紹介
【エドガー】

鉄道、萩尾望都作品、ポール・スミス、爬虫類から長門有希と興味あるものはどこまでも探求し、脳みその無駄遣いを楽しむ一市民。そのやたら数だけは豊富な脳みその無駄遣いの成果をご披露させていただきます。