アメリカの偵察衛星を載せたULAのデルタIVヘヴィロケットが、2020年12月10日20時9分(日本時間11日10時9分)にフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられました。アメリカ偵察衛星の打ち上げは、11月13日に実施されたULAのアトラスVロケットによるNROL-101以来のことです。
アメリカ国家偵察局(NRO)が運用する偵察衛星の打ち上げは、2020年では初めてニュージーランドからロケットラボのエレクトロンロケットで実施した1月のNROL-151ミッションに始まり、今回のNROL-44ミッションで5回目。打ち上げ地は衛星の軌道や打ち上げを受注した企業によって異なり、NROL-44ではフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地(2020年12月9日付で空軍基地から宇宙軍基地に改称)にある、ULAの第37打ち上げ施設(SLC-37)が選ばれました。
偵察衛星は機密情報に満ちているので、詳しい情報は明らかにされませんが、打ち上げに使用されるロケットが大型のデルタIVヘヴィ(低軌道打ち上げ能力28.37トン/静止遷移軌道打ち上げ能力13.81トン)であることから、それなりに大型の衛星であることがうかがえます。ミッションパッチは、アメリカやイギリスなど5か国の諜報機関が入手した情報を相互利用する、UKUSA協定(ファイブ・アイズ/FVEY)を表す5頭のオオカミがデザインされたもの。ミッションポスターも遠吠えするオオカミがデザインされ、遠吠えを通じて群れにいるほかの個体に情報を伝達するオオカミの習性をUKUSA協定に例えています。
今回ULAでは、デルタIVヘヴィの組み立て塔をスクリーンに、プロジェクションマッピングも実施。星条旗や、マーキュリー宇宙船で地球を周回したジョン・H・グレンの姿を投影し、宇宙の歴史がこの打ち上げでも紡がれていくということを表現しました。
打ち上げに際し、アメリカ国家偵察局長のクリストファー・スコールズ博士は「商業における能力や技術の進歩、そして政府が開発したシステムのコンビネーションにより、供給のベースを拡大し、パフォーマンスを改善してコストを削減し、回復力を強化することができます」とのコメントを発表。打ち上げを民間委託することによる様々な効果を強調しています。
現地時間12月10日の20時9分(日本時間11日10時9分)に打ち上げられたロケットは順調に飛行し、予定通り衛星を分離。打ち上げは成功しました。
打ち上げ成功を受け、ULAで官民プログラムを統括するゲーリー・ウェンツ副社長は「空軍基地からケープカナベラル『宇宙軍』基地と改称されて、初めてとなる打ち上げを担当することができて光栄です。この重要な国家安全保障を担う衛星打ち上げに至る技術的課題に取り組んだ、ミッションパートナーの協力とチームワークに感謝します」とコメント。打ち上げに至るまで、再三にわたって技術的問題からスケジュールが延期されたことに触れています。
次回のアメリカ国家偵察局の偵察衛星打ち上げは、12月下旬に予定されているNROL-108ミッション。ケープカナベラル宇宙軍基地に隣接するNASAケネディ宇宙センターから、スペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられることになっています。
<出典・引用>
ULA ニュースリリース
Image:ULA
(咲村珠樹)