従来より3倍の測距精度を誇るアメリカの次世代GPS、GPS IIIの4号機が2020年11月5日18時24分(現地時間)、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地からスペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げられました。衛星は予定した軌道への投入に成功し、打ち上げは成功しています。

 アメリカの測位衛星GPSは、高度2万kmの軌道に周回する人工衛星で構成されるシステム。現在31機と予備の3機が軌道上にあり、軍事用だけでなく、カーナビやスマホの位置検出などにも広く利用されています。

 現在主力となっているブロックIIシリーズに代わり、次世代の衛星として設計されたのがGPS III。ロッキード・マーティンによって製造されています。

 GPS IIIシリーズは従来と比較し、測位精度が3倍に向上するだけでなく、信号の伝送についても8倍強固なものとなっています。また、EUが運用している測位衛星システム「Galileo」とも互換性のある民間用信号も使えるようになり、ユーザーにとっては複数の測位衛星システムを利用した受信端末を利用することができるようになりました。

 GPS IIIの1号機は、2018年12月にスペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられました。2号機が2019年8月にULAのデルタIVロケットで、そして2020年6月30日にはスペースXのファルコン9で3号機が打ち上げられています。

 4号機の打ち上げは、ファルコン9を使用する3度目のもの。ケープカナベラル空軍基地から現地時間の11月5日18時24分に打ち上げられたファルコン9は、およそ1時間半後に衛星を分離。予定した軌道への投入に成功しました。

 メーカーのロッキード・マーティンでナビゲーションシステムを統括するトーニャ・ラドウィグ副社長は「GPS IIIにおいては、アメリカ宇宙軍に最高精度の測位・航法・時刻を迅速に提供することを主眼に置いています。打ち上げ成功を誇りに思うとともに、すでに5号機も完成し、打ち上げを待っている状態です。多くの人々が毎日GPSを利用しており、GPS III/IIIF衛星の新たな機能により、GPSが測位・航法衛星システムの『ゴールドスタンダード』であり続けるでしょう」とのコメントを発表しました。

 ケープカナベラル空軍基地を管轄するアメリカ空軍宇宙ミサイルセンターで、打ち上げ任務を統括するロバート・ボンジョビ大佐は「今回で、国家安全保障任務における83回目の打ち上げ成功となりました。次なるスペースXとの協業も楽しみにしています」とコメントを発表しています。

 4号機は機能の確認が行なわれたのち、予定されたポジションに入り、運用が始まります。まだ4機しかないGPS IIIですが、今後数を増やすにつれ、ナビゲーションの精度が上がったことに気づくかもしれません。

<出典・引用>
アメリカ宇宙軍 ニュースリリース
ロッキード・マーティン ニュースリリース
Image:Lockheed Martin/SpaceX/United States Government

(咲村珠樹)