アメリカ海軍海洋システムコマンド(NAVSEA)は2020年12月11日(現地時間)、NAVSEAの支援する研究チームが、メキシコのバハ・カリフォルニア半島沖の太平洋で、新種とみられるクジラの一群を発見したと発表しました。

 この発見のきっかけは、アメリカ海軍がカリフォルニア州南方沖に設定している「南カリフォルニア訓練海域」周辺で、知られているペリンオウギハクジラとは異なる特徴的な、アカボウクジラ科に属するクジラと思われる鳴き声を聞いたことだったといいます。

 アカボウクジラ科は小型のハクジラで、大型哺乳類の中では不明な点の多いものの1つ。一部の種はここ20年ほどの間に発見されたばかりであり、まだまだ未確認の種が存在していると考えられています。

 アメリカ海軍は、この鳴き声の正体を探るべく、隣国メキシコの国立自然保護区委員会や、アメリカ国内の研究機関と共同で調査を開始。その中で、これまでに知られているアカボウクジラ科に属するクジラとは、少し違った形態と鳴き方をするクジラ3頭を発見しました。

 アメリカ海軍の情報機関、海軍情報戦センター(NIWC)の海洋研究者、エリザベス・ヘンダーソン博士は「今回の調査は、記録された鳴き声が過去にストランディング(クジラなどが浅瀬や砂浜へ迷い込み、打ち上げられること)した生物と関係していないかを調べるものでした。その代わりに、これまで知られているものとは異なる鳴き声を持つ、全く新しいアカボウクジラ科の種を発見した可能性があります。これは驚くべきことです」と、意外な発見に興奮を抑えきれない様子。

 今回の調査はアメリカ海軍の環境保護活動である、NAVSEA海洋モニタリングプログラムの一環で実施されました。このプログラムでは、海軍の訓練が海洋生物に与える影響を調査するため、訓練海域やその周辺で、保護されるべき海洋生物の様子を観察しています。

 プログラム・マネージャのベンジャミン・コルバート氏は「NAVSEAは海軍の活動を支援すると同時に、自然環境の保護もしています。私たちが国民の信頼を得続け、自然環境の良心的保護者であり続けるため、海洋生物への影響を最小限とし、関連法規を順守するべく、海洋生物に関する知見を増やすことに取り組んでいます。私たち海洋モニタリング・プログラムが、海をより深く理解する研究に貢献していることを誇りに思いますし、次に待ち受けていることをワクワクしながら待っています」と、今回の発見にコメントしています。

 アメリカ海軍によれば、今回撮影された3頭の写真や鳴き声の音響データを見る限り、これまで知られているアカボウクジラ科とは違う特徴を備えているとのこと。研究チームは種の同定につながる環境DNA(eDNA)サンプルを採取しており、今後は遺伝学的調査が実施されます。

 訓練区域における海軍の環境保護活動が、新種のクジラ発見につながったかもしれない、という今回の報告。遺伝学的調査の結果が論文として発表されるのを待ちたいと思います。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)