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小さい会社のウェブマーケティングって何が違うの?著者の森野誠之さんにきく(深水英一郎氏寄稿)

 こんにちは、深水英一郎です。

 本の著者さん自身に著書を紹介していただく「著者著書紹介」。今回は小さな会社がウェブサイトを作り、活用していくために必要な事をコンパクトにまとめた書籍「『未経験・低予算・独学』でホームページリニューアルから始める小さい会社のウェブマーケティング必勝法」の著者である森野誠之さんにお話をききます。

  • 【著者 森野誠之(もりのせいじ)さんプロフィール】

    ウェブ制作の営業など数社を経て2006年にフリーランスとして独立後、名古屋を中心に地方のウェブ運用を支援する業務に取り組む。Google アナリティクスなどのアクセス解析を活用したサイト改善支援に限らず、企業全体のマーケティングから社員育成まで幅広くサポートしている。徳島ヴォルティスが好き。
    https://www.uneidou.com/

    ■ 小さい会社のホームページ担当者のための本

    ——よろしくお願いします。さて今回の著書、どのような内容のものでしょうか?

    【森野さん】

     この本は、大都市圏に所在地がない、社員数が5~50名程度の企業に所属する企業経営者、ホームページ担当者向けに書いたものです。本のタイトルに未経験・低予算・独学とあります。そんな環境でウェブマーケティング、つまりホームページの活用に取り組もうとされている方の最初の一歩として読むべき本、をイメージしています。

     世の中に出回っているウェブマーケティング本の多くは東京の企業を対象として書かれていますので、予算規模もやっていることも差がありすぎてピンとこないものになっています。これらを読んでも頭でっかちになってしまって、「だから地方は良くない!」とか、「うちの会社ももっとデジタル化しないと!」とおかしな方向に行ってしまいがちです。どっちが良いとか悪いではなくて、場所や規模にあったやり方があるのですが、それが世の中であまり知られていないのが問題です。

    ——確かにウェブマーケティングの本を読んでると、これ小さな会社で全部できるのかなと感じることがあります。「場所や規模にあったやり方がある」というのはおっしゃる通りだと思います。

    【森野さん】

     私もこうした相談に対応しているうちに、小さな会社のホームページ運用がうまくいかない原因がわかってくるとともに、うまくいくようにする方法もわかってきたんです。今回の本ではそのノウハウをまとめました。

     ノウハウといってもSEOのテクニックは書いていませんし、見栄えの良いデザインにする方法も書いていませんし、クリックされるボタンについても書いてません。担当者の育成方法、社内基盤の整え方、外部パートナーの探し方、コンテンツの更新方法など、個人ではなくて組織として行うウェブマーケティングの方法を書いています。この点だけは先にお伝えしておきたいです。

    ——なるほど、地方の小さな会社が、組織でおこなうウェブマーケティングのノウハウがまとまっているということですね。

    【森野さん】

     文章も可能な限り専門用語を使わないようにしていて、巻末に用語集もつけています。本だけではカバーしきれない情報源や参考図書もジャンルごとに紹介しています。

    ——参考になる書籍やサイトの情報も多数掲載されており、はじめての人にとっては重宝しますね。個人的には森野さんの語り口も面白く、時々クスッと笑ってしまいます。

    【森野さん】

     ところどころで毒を吐いているというか、直球でズバッと書いている部分もあるのでそのあたりで共感してもらえるかなと思います。用語集は小ネタを盛り込んであるのでくすっと笑えるものになっているはずです。

     よくわからないITの本というよりは、地方のおじさんがオヤジギャグを散りばめながらウェブマーケティングについて説明している、面倒くさい本だと思っていただければいいかなと思います(笑)。

    ■ 外部パートナーも含めてひとつのチーム

    ——筆者として、特にここは読んで欲しいという部分はありますか?

    【森野さん】

     「第4章 ホームページリニューアルをやり切るために(3)  外部パートナーのディレクション」の章です。

     小さい会社では自分たちだけで完結することはなくて、外部パートナーの力を借りることになります。多くの場合、失敗したくないために選考に時間をかける傾向にありますが、それではうまくいかないです。バナーデザインやちょっとした文章など、少額の案件を発注して自社との相性を確認し、そこから徐々に広げるとうまくいきます。

     「いい業者を紹介してほしい」と言われることも多いですが、見ず知らずの企業を信頼できる人に紹介はできませんので、何事もちょっとした案件からコミュニケーションを始めるのが大切です。

    総じて、社外の人に何かを依頼するときは言葉とやりかたを合わせることから始めましょう。
    社内で通じる用語が通じないことが多いですし、社外の人が話す専門用語がわからないということもあると思います。相手の言っていることをお互いが理解できるようになって、稼働している時間やチャットが良いのか、電話が良いのかなどの仕事の進めかたも理解し、はじめて良い結果が得られます。協力して良いものを作り上げるという気持ちを忘れずに。

     127ページにこう書きました。お金を払っているからやらせるのが当然だと思ったらうまくいきません。かかわる人たちが気分よく動いてくれれば自分の仕事も減りますし、いい結果が出ます。チームとして良いものを作ることを考えてほしいですね。

    ——小さい会社のウェブ担当って、どういう人が向いているんでしょうか。

    【森野さん】

     自分で考えて動くことができる人→文章を書くのがうまい人→粘り強く継続してくれる人の順です。

     小さい会社ではウェブマーケティングのことを知っている人は社内にいないはずなので、わからないことを一つずつ解決していく必要があります。難しいからあきらめてしまう人には向いていません。

     ウェブマーケティングはブログやメルマガを書いたりSNSに投稿する必要がありますので、文章を書くのが上手い人がいるとスムーズに進みます。もちろん、日ごろは他の仕事をしていて文章だけうまい人にお願いするのもありです。

     パソコンが使えるとかネットに詳しいなどはあまり関係ありません。むしろ中途半端に知っているとそれが邪魔する場合もあります。パソコンに詳しいから任命されて根性で乗り切った人もまれにいますが、それはその人の頑張りでしかないで適任かと言われるとやはり違うとなりますね。

    ■ さらなる学びのために

    ——本書を読んだ読者がさらに一歩進むための情報源やコミュニティはあるでしょうか。

    【森野さん】

     情報源に関しては、本の60ページから参考サイト・書籍を紹介していますのでここを読んでいただけるといいですね。これらを追いかけるのが面倒だという人は、私が発行している「毎日堂」というメルマガを読んでいただけるとよいと思います。SEOなどの10のジャンルのニュースが平日の毎朝7時に届きます。500円/月なので新入社員の方でも読んでいただけます。

     コミュニティはコロナの影響で活動が止まっているところが多くなってしまいました。前述の書籍の著者やサイト運営者のTwitterをフォローしておくのが良いと思います。これらの人のツイートややり取りが参考になりますし、セミナー登壇情報も流れてきますので、参加して質問などすると徐々に仲良くなれるはずです。

    ——次に書きたい本はどんなテーマの本ですか?

    【森野さん】

     サッカーの分析から考えるウェブサイトの分析、名将の名言から学ぶウェブマーケティング、など自分の趣味と仕事を掛け合わせたようなテーマの本を書きたいです。サッカーや歴史などに興味がある人向けにウェブマーケティングの入り口になるといいなと思ってますが、1文字も書いていないですし発刊してくれる出版社もないと思います(笑)。

    ——今後どんなことをやっていきたいですか?

    【森野さん】

     業種業界を問わず実際に小さい会社のウェブマーケティングにもっと関わっていきたいと思っています。前述のようにスポーツや歴史が好きなのでサッカークラブとか歴史研究会などのウェブマーケティングができるといいですね。本を読んだだけではわからないこともあるはずなので、本の内容に沿って実際にサポートしていきたいと思います。

    ——本日はありがとうございました!

    (インタビュー了)

    【インタビューききて・深水英一郎 プロフィール https://nitsuite.jp/fukamie
    メルマガプラットフォーム「まぐまぐ」を個人で発案、開発運営し「メルマガの父」と呼ばれる。Web of the Yearで日本一となり3年連続入賞。新しいマーケティング方式を確立したとしてWebクリエーション・アウォード受賞。未来検索ブラジル社元代表を務めニュースサイト「ガジェット通信」を創刊、「ネット流行語大賞」やMCN「ガジェクリ」立ち上げ。シュークリームが大好き。

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