最近、木枠の窓に備え付けられた「捻締り錠(ねじしまりじょう)」の写真がSNSでアップされて話題になっています。それに対し、若い世代の人からは「何これ?」「使い方わかんない……」という反応がほとんど。

 逆に知っている人は「小学校の建物でこれをみた」「昔の家についていた」という古い建物に触れた経験のある人の声がほとんどでした。

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 確かに記憶をたどると戦前に建てられた小学校の校舎で見た記憶が……。でも気づけば見る機会はめっきり減っています。そう考えると、一体いつから使われていたのか、なぜこんな数奇な形になっているのか、誰が発明したのか気になってしまいました。そこで鍵に関する団体「日本ロック工業会」に取材してみました。

■日本独特の金物

 今回取材を申し込んだ「日本ロック工業会」は錠前の製造業者で構成される組織。事務局に上記の疑問をたずねたところ、会員企業いくつかに事情を知る人がいないか確認してくれました。

 まず、昭和4年創業で捻締り錠の販売もしている株式会社ベスト(東京都千代田区)の担当者の方が会社にある過去の資料をあたってくれました。すると資料の中に「ネジ締りは日本独特の金物で、引き戸ばかりであった日本建築だからこそ発明された金物であるといえる。」(建築金物ガイドブック/昭和49年発行)とその由来について書かれていたそうです。そして、使用されはじめた時期については「大正時代」との話。気になる開発者については「調べてみましたが発明者までは明記されておりませんでした」とのことでした。

 次に明治23年創業で、大正からオリジナルの錠前・建具金物も手がけている堀商店(東京都港区)は「捻締り錠の発明者や歴史などについては良く分かりません」としつつ、過去の自社カタログを調べた結果を教えてくれました。大正2年に発行されたカタログには掲載されておらず「当時のカタログは洋風金物一色」だったそうです。しかし、昭和10年のものには掲載を確認することができ、1.5寸(約4.5cm)のものが95銭、1.2寸(約3.6cm)のものが64銭と掲載されていたそうです。

 発明者や発明された時期については結局分かりませんでしたが、少なくとも大正から使われはじめ昭和10年よりちょっと後ぐらいまで新しくつけられていたことは分かりました。また「日本独特のもの」ということも。なんだか少しあの鍵に誇らしさを感じますね。

■アルミサッシの登場で消えていった

 捻子締り錠は昭和7年にアルミサッシがビルに採用されたことを皮切りに、昭和30年代に向けて採用が縮小されていったと考えられます。昭和35年にはアルミサッシの採用が本格化し40年代にはほぼ100%ということから、その時期には捻子締り錠の姿も前時代の遺物と化してしまったのかもしれません。

 編集部でも数名の実家に捻子締り錠があるとのことで、その建築された年代を調査してみたところ、ほとんどが昭和初期建築であることが確認できています。

 最近の建物ではめっきり見ることがなくなってる捻子締り錠。しかしながら、現代ではレトロな雰囲気を好む人も多く、捻子締り錠はいくつかのメーカーから未だ販売が行われています。消えてしまったと思いきや、実はながーく愛されているようです。鍵はどんどん進化し複雑化していますが、もし機会があれば一度どんなふうに施錠するのか、その味ある仕組みを楽しんでみるのもいいかもしれません。

【協力】
日本ロック工業会
堀商店 HORI ROCKS
株式会社ベスト

【参考】
株式会社松本建築金物店「窓の施錠の歴史
大阪板硝子販売株式会社「既製サッシの製品動向

(大路実歩子)