飲酒運転で取り締まりを受けると、刑事罰・行政罰を受けるほか、家族・仕事・周囲からの信頼など、たくさんのものを失います

 筆者は、以前検察事務官として働いていたときに飲酒運転の事件・事故を多数取り扱い、「たくさんのものを失った人たち」を見てきました。飲酒運転は本当に悲惨な結果しか生みません

 年末年始は、帰省、旧友との集まりなど、普段よりお酒を飲む機会が増える人が多いでしょう。そこで、今一度確認しておきたいのが「アルコールが抜けるまでにかかる時間」です。

 アルコールが抜けるまでの時間を知っておかないと、飲んだ翌日に「二日酔い運転」をしてしまう可能性があります。飲酒運転は、重大な事故に繋がる可能性が高く、極めて危険な行為です。

 年末年始の楽しい時間が悲劇にならないよう、お酒を飲む機会がある人はぜひ最後まで読んでみてください。

■ アルコールは何時間で抜ける?

 アルコールの分解時間を把握するには、まず「アルコールの単位」を知っておく必要があります。アルコール1単位は、純アルコール量20g前後です。

▼アルコール1単位の例▼

・ビール(アルコール度数5%)……500ml(中ビン1本)
・ウイスキー(アルコール度数40%)……60ml(ダブル1杯)
・ワイン(アルコール度数12%)……120ml(グラス1杯)
・日本酒(アルコール度数15%)……180ml(1合)
・焼酎(アルコール度数25%)……100ml(約0.5合)
・缶チューハイ(アルコール度数7%)……350ml(1本)

-----------------------

 一般的に、体重60kgの成人男性がアルコール1単位を分解するのにかかる時間は、約4時間と言われています。女性の場合はさらに遅くなり約5時間です。

 つまり、体重60kgの成人男性が「ビール中ビン2本、日本酒1合」を飲んだ場合、アルコール3単位分の摂取となるため、分解には約12時間かかります。お酒を飲んでから半日経っても、まだアルコールが体内に残っている可能性があるのです。

 また、アルコールの分解時間は、体質や年齢などによる個人差も大きいため、一概に「〇時間経過したら大丈夫」とは言えません。普段お酒が強い人でも、年末年始の飲み会続きで肝臓が疲れ、普段よりアルコールの分解に時間がかかることもあります。

■ 飲酒運転に関する罰則等

 道路交通法では、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」についてそれぞれ罰則を設けています。刑事罰以外にも、運転免許の停止や取消しなどの行政処分もあります。

▼酒気帯び運転の罰則等(運転者)

【刑事罰】
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

【行政処分】
・呼気1リットルあたりのアルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満……免許停止90日(※)
・呼気1リットルあたりのアルコール濃度0.25mg以上……免許取り消し、欠格期間2年(※)
※処分前歴がない場合

▼酒酔い運転の罰則等(運転者)

【刑事罰】
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
【行政処分】
免許取り消し、欠格期間3年(処分前歴がない場合)

-----------------------

 なお、酒気帯び運転の罰則が適用されるのは、基準値(※)を超えるアルコールを保有した状態で運転した場合ですが、酒酔い運転の罰則は「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」で運転した場合に適用されます。

 そのため、仮に基準値未満でも、警察官が酒酔い状態と判断すれば、酒酔い運転で検挙される可能性があります。お酒に弱い体質の方は要注意です。

 また、飲酒運転で事故を起こした場合は、さらに罰則が重い「過失運転致死傷罪」や「危険運転致死傷罪」が適用される可能性があります。

※基準値:アルコール濃度が血液1mlあたり0.3mgまたは呼気1リットルあたり0.15mg

■ 年末年始は特に注意

 「どうせ見つからないだろう」「少し飲んだだけだから運転できる」こんな判断が、自分や周囲の人、事故の被害者やその家族の人生を大きく変えてしまいます。

 年末年始はお酒を飲む機会が増えます。アルコールの分解時間をしっかりと把握したうえで、お酒の飲み方には十分気をつけましょう。
 
(上村舞)