外資系のIT企業に勤務するふっきさんは、ここ最近、オフィスで仕事をする機会が増えたそうです。そこで同僚とやり取りしていくうちに、リアルで人が集まることの重要性を痛感。

 その「気づき」を踏まえた考察に、注目が集まっています。

「リモートワークの一番の弊害は『業務上必須ではないが、何かの役に立つかもしれない会話』が激減したこと。オフィスにいれば”目的のない軽い雑談”から、会社の動きや他部署の仕事について情報を得たり、新しいアイディアが生まれることもある。必要最低限のコミュニケーションしか無い組織は弱体化する」

 上記のつぶやきを発信したふっきさん。さらに続く投稿では、リモートワークの良し悪しについても考察しています。特に「フルリモート」のリスクを切り口にしています。

「リモートワークは確かに効率は良いが、効率を追求した結果、組織の『のりしろ』のようなものが無くなっていく。目先の業務に関すること以外の雑談や会話が極端に少なくなり、そこから本来生まれたかもしれない仕事の機会や人との繋がりが減っていく。フルリモートの継続は組織の創造力を殺していく」

 ちなみに普段のふっきさんは、主にリモートワークで従事しています。つまり、上記の効率性などの「利点」は、身をもって体感済み。

 改めて実感した「気づき」に対し、リプライ(返信)欄では賛否様々な反応が寄せられています。

 結果として1万を超える反響となりましたが、それに対してふっきさんは「思ったより共感の声が多かったですね」とのこと。当初は、否定的な声が大半を占めると想定していたそうです。

■ フルリモート下で実践している「コミュニケーション術」

 ちなみに筆者は、フルリモートワーカーです。かれこれ2年半ほど継続していますが、ふっきさんの「組織の想像力を殺していく」という指摘には頷ける部分がありました。

 もっとも私の場合、複数企業と契約するフリーランス(パラレルワーカー)のため、「組織」という概念が厳密にはないのですが、これは「個人」で置き換えても成り立つ話です。

 私は現在、おたくま経済新聞編集部のライターや、企業のマーケティング支援やSNS運用アドバイザーなどを生業にしています。それらの仕事に共通して必要なことは、「考えること」と「コミュニケーション」です。

 前者はごく当たり前のことなので割愛しますが、後者は常に考えさせられる部分です。

 幸い、おたくま編集部は、専用通信アプリでの「テキスト」にはなりますがコミュニケーションは活発です。そして程々の雑談もあります。

 それは実に他愛のない話なのですが、しかしそこから生まれる仕事(記事)が時折あったりするのです。私も会話がきっかけで、何度か記事を執筆したことがあります。

 これは「メディア」という業態が、コミュニケーションの権化みたいな場所だからかもしれません。それにフルリモートといっても、「取材」という仕事も都度発生しますから。

 一方で、他の仕事をしている時は、そういうわけにもいかないものです。私はクライアントワークのため、週に1度のオンラインミーティングでコミュニケーションは取れるのですが、逆にそこまでの段取り(テキスト)も欠かせません。

 ただ、「顔が見えない」「タイムラグがある」という「無呼吸空間」のやり取りのため、メッセージには“ミス”がないようにしなければなりません。送る際の「セルフ校正」は茶飯事です。

 またクライアントがリアル空間でイベントを開催していたら、時間を作って顔を出すこともあります。定期的に食事をする機会なども設けています。それは「業務上必須ではない」のですが、後々振り返ると、関係性の構築に役立っていたりします。

 今回の反響により、「最初は快適に感じたフルリモートも、長期化してくると、『ストレス』に感じている人も増えているのかもしれません」と推察するふっきさん。

 私も、投稿を見て「出社も適度にあれば、よりええのかもしれへんなあ」と感じる反面、「オンラインと雑談の両立はできないのかな?」という疑問もあります。

 これは、リプライでも多く寄せられた声でもあるのですが、先述の日頃の編集部のやり取りを鑑みると、決して不可能ではないと思います。

 ただ、弊社は「リモートワーク???ハァ???」と創刊当初(2008年)は、不審者扱いされていた時期があって14年後の今があったりします。そう考えると、コロナ禍による「3年」の時間ではまだ不足しているのかもしれません。「働き方」に対して、未整備である企業の方が依然として大半を占めます。

 「『出社を前提としない雑談作りの場』は、今後考えがいのあるテーマですね」

 今回の取材に対し、ふっきさんは最後にこのように振り返っていました。

<記事化協力>
ふっきさん(@yumenbiz)

(向山純平)