12月18日の決勝戦に注目が集まるサッカーW杯カタール大会。しかし、悪い意味で注目を集めてしまったのが、アルゼンチンとクロアチアの準決勝終了後にアルゼンチン選手のインタビューで不適切な表現をしてしまった日本語通訳。そこで今回はTwitter上でトレンド入りした「放送禁止用語」を解説します。
そもそも放送禁止用語とは、差別に該当したり卑猥であったりするなどの理由で、テレビ局やラジオ局が使用の自主規制をしている言葉です。
意外と思われるかもしれませんがあくまでも自主規制であり、法律には「電波法」108条に「無線設備又は第百条第一項第一号の通信設備によつてわいせつな通信を発した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」とあるだけです。
このため「放送禁止用語」ではなく、「放送注意用語」「放送自粛用語」と呼ばれることもあります。
民放各局が指針にしているものの1つが、NHKが2008年に発表した新放送ガイドライン。「NHK新用字用語辞典」や「NHKことばのハンドブック」などに準拠するというもので、これらに記載されていないものが“実質的”に放送禁止用語という考え方もできます。
上記以外では視聴者からのクレームで適宜、各テレビ局やラジオ局が判断しているようです。さらに番組のジャンルやその視聴者、放送される時間帯などによっても自粛する言葉は変わってきます。「バラエティー番組」と「ニュース番組」、主な視聴者層が「子ども」と「大人」では自粛する言葉が変わっても当然と言えば当然かもしれません。
珍しいケースでは、一般的には問題ない言葉でも、放送される地域によっては卑猥な言葉になる方言があるため、使用されないこともあります。当たり前ですが、地方局の番組スタッフが全員その地方の出身というわけではありません。卑猥な意味を持つ方言とは知らずにそのまま使用してしまわないように注意が必要です。
その言葉や表現によって不快に感じたり、傷つく人を出さないためにメディア側が使用を規制している放送禁止用語。インターネットの普及によってグローバル化が進んだことや、価値観が多様化していることもあり、放送禁止用語は今後増えていくことが予想されます。また、一般の方も、自分の周りにいる人がどんな言葉や表現に傷つくのか、大切な人をうしなわないためにも知っておくことは重要です。
差別用語や卑猥な言葉以外にも、相手を侮辱したり犯罪を肯定して助長したりするような表現、いわゆる公序良俗に反する言葉は常に変化していきます。時代時代にあった表現を、メディア側はもちろん、SNSを通じて発信力をもった視聴者側もアンテナを張り巡らせてアップデートし続ける必要があると言えるでしょう。
【リサーチ次郎:筆者プロフィール】
静岡県出身、東京都在住。前職は、テレビ番組のリサーチャーとしてテレビ業界に約10年従事。その間ゴールデンタイムの番組やスペシャル番組などを数多く担当し、番組で扱うネタを提供。
現在はWEB記者として番組スタッフではなく、読者にネタを提供している。