バレエ界隈でときどき議論になる「バレエのお月謝は新札・ピン札で払うべきか」問題。
筆者の観測範囲内の話ですが、X(旧Twitter)では、バレエやピアノなどで「新札・ピン札で払う派」による問題提起を見かけることが多く、数年前に「お月謝を新札で払う文化」を知った筆者(バレエ歴20年超え)はかなり戸惑っていました。
「本当にみんな新札で払っているの?そうであるなら、私今まで失礼なことをしていたの……?」と。
そこで今回、XとInstagramのストーリーズにて、バレエ関係者に「お月謝の支払い方」に関するアンケートを実施しました。
支払う側(生徒・保護者)だけでなく、お月謝を受け取っている先生側にも「実際どう思っているの?」とたずねてみたので、きっと参考になるはずです。生徒側は約3400票、先生側は約1200票の回答が集まりました。
■ アンケートについて
本題に入る前に、アンケートの集計方法やアンケート項目を紹介します。
-- バレエのお月謝の支払い方に関するアンケート
【集計方法】
X(Twitter)、Instagramストーリーズにおけるアンケート機能にて
【アンケートの設問と票数】
▼ 生徒側(お月謝を支払う側)
・絶対に新札(ピン札)で払う
・なるべく or あれば新札(ピン札)で払う
・お札の状態は気にしていない or その文化知らない
・現金以外でお月謝を払っている・X(Twitter):3372票
・Instagramストーリーズ:98票
合計:3470票
▼ 先生側(お月謝を受け取る側)
・絶対に新札(ピン札)が良い
・できれば新札(ピン札)が嬉しい
・新札(ピン札)でなくても全く気にしない
・現金以外で受け取っている・X(Twitter):1238票
・Instagramストーリーズ:38票
合計:1276票
なお、新札やピン札でお月謝を払うという文化は、ピアノや茶道などほかのお稽古事・習い事でも見られるようです。しかし、今回は「バレエのお月謝の支払い方」にフォーカスしたかったため、バレエ経験者・お子さんがバレエを習っている方・バレエの先生のみ回答いただくようお願いしました。
■ 【生徒側】「お札の状態は気にしていない」「その文化を知らない」派が半数
まずは、お月謝を支払っている生徒(保護者)側の回答を紹介します。
▼ 生徒側(お月謝を支払う側)
・絶対に新札(ピン札)で払う……10.9%
・なるべく or あれば新札(ピン札)で払う……19.9%
・お札の状態は気にしていない or その文化知らない……54.0%
・現金以外でお月謝を払っている……15.2%
最も多かったのは、「お札の状態は気にしていない」もしくは「その文化を知らない」という意見。54%と全体の半数を占めています。(※現金での支払いに限った場合の割合は63.7%)
引用リポストでは「初めて聞いてびっくりした」「そんな話は保護者の間で出たことがなかった」など、初耳派の意見が多数見られました。
気にしない派・初耳派に続いて多かったのが「なるべく or あれば新札(ピン札)で払う」という意見。「絶対に新札(ピン札)で払う」派も合わせると、3割強の方がバレエのお月謝をなるべく新札(ピン札)で支払っていることがわかりました。(※現金での支払いに限った場合の割合は36.3%)
寄せられた意見の中には「親に新札で払うように言われていたから自分もそうしている」など、親がしていたから新札で払うのがマナーや常識だと思っていたという意見も。ただし、新札で払う派の人も「自分がそうするだけで、ほかの人の支払い方は気にならない」など、あくまで自分の中のルールと考えている人が多いようです。
なお「現金以外でお月謝を払っている」という意見は15%ほど。一部のバレエ教室やカルチャースクール、オープンクラスなどでは、銀行振込・引き落とし、クレジットカードや電子マネー決済などが導入されているようです。
■ 【先生側】新札を希望する先生は1割強。約半数は新札でなくても全く気にしない
続いて、お月謝を受け取る先生側の意見を紹介します。
▼ 先生側(お月謝を受け取る側)
・絶対に新札(ピン札)が良い……6.4%
・できれば新札(ピン札)が嬉しい……7.0%
・新札(ピン札)でなくても全く気にしない……53.5%
・現金以外で受け取っている……33.2%
最も多かったのは「新札(ピン札)でなくても全く気にしない」という意見。約半数の先生が「新札でなくても問題ない」と考えていることがわかりました。(※現金での支払いに限った場合の割合は80%)
長年、「新札お月謝文化」を知らなかった身としてはホッとする結果です。
なお、「新札(ピン札)でなくても全く気にしない」派の先生からは、「新札を用意してくれた手間に感謝しつつ、新札はくっついて数えにくいとも思う」という意見も。生徒側のアンケートでも「以前、先生から新札は数えにくいので控えてほしいと言われた」という意見も見られました。
続いて多かったのが「現金以外で受け取っている」という意見。先生としても集計作業が楽になりそうですよね。
一方で、13.4%と少数派ではありますが、新札(ピン札)を希望する・嬉しく感じるという意見も。(※現金での支払いに限った場合の割合は20%)「強制はしないけど、新札が来ると嬉しく感じる」といった意見が寄せられました。
お札の状態とは少しずれますが、先生が困るお月謝の支払い方として寄せられたのが「小銭がたくさん混ざっている」「毎月決まった金額であるにもかかわらず、ぴったりの金額を持ってこない(おつりが出る)」という意見です。
たしかに、クラスが連続していて時間がない場合、おつりが出るお月謝の支払い方は困ってしまうでしょう。それに、先生も常におつりを用意しているわけではありません。また、小銭がたくさん混ざっているのも、数え間違いに繋がる可能性があるため極力避けたほうが良さそうです。
■ 筆者個人の見解
筆者は「お月謝を新札(ピン札)で払う文化がある」と知ったあとも、実は新札(ピン札)ではお月謝を支払っていません。筆者の場合、複数の千円札もしくは五千円札が必要になるため、普段の買い物などで必要枚数の新札は手に入りにくいですし、やはり毎月のこととなると銀行窓口で両替するのが大変だからです。
しかし、シワシワのお札や破れたお札など、受け取ったときに「ちょっとこれは……」と不快な思いをさせる可能性があるお札は使いません。手持ちのお札の中でなるべくきれいなお札を、表が上にくるように向きを揃えてお月謝袋に入れるようにしています。そして、お月謝を渡すときは必ず両手を添えて「お願いします」と言っています。
現代社会で毎月新札・ピン札を用意することは大変です。そして、アンケート結果からもわかるように、現金での支払いに限った場合、8割の先生方が「新札でなくても問題ない」と考えています。
そのため、筆者はお札が新札か否かより、お月謝の渡し方に敬意を持たせるべきではないかと考えています。
とくに小さなお子さんは、お月謝についてよく分かっておらず「お母さんが渡してって言ってました」「先生、はいこれ」などと渡してしまうかもしれません。バレエ女子・男子の保護者の方は、本稿をきっかけにお月謝の渡し方について一度お子さんと話してみてはいかがでしょうか。
(上村舞)