TBS系列で12%台という高視聴率をマークしている火曜ドラマ「義母と娘のブルース」。作中ではバリバリのキャリアウーマンの主人公・亜希子(綾瀬はるか)が、小学3年生の娘のみゆき(横溝菜帆)をもつ良一 (竹野内豊)と再婚をし、亜希子がバリキャリの雰囲気もそのままに義理の母としてみゆきへの母性を開花させていくさま、夫婦としての絆を少しずつ強めていくさまなどを丁寧に描いた描写が人気ですが、妻を病気で亡くしている父良一は、自身も余命宣告されるという衝撃的な展開を第4話で迎えました。

 個人的には久々にドはまりするドラマでドキドキしながら見ていた筆者でしたが、作中で良一に告げられていた病名は「スキルス胃がん」。この病名に衝撃を受けた人は少なからずいたはず。胃がん全体の10%を占めるスキルス胃がんは特に悪性度が高く、進行が速い事で知られています。スキルス胃がんは胃粘膜の表面には病巣が見えにくく、粘膜の底の方で広がっていくので胃内視鏡検査でも発見率は低めの事が多いと言われています。では、職場や自治体で行う健康診断は果たして意味があるのでしょうか。

■ がん検診の意味

 ドラマに出てくるスキルス胃がんは極めて予後が良くない疾患として有名となっていますが、スキルス胃がんを含めた胃がん全体の5年相対生存率はステージ1では97.3%、ステージ2では65.7%、ステージ3では47.2%、ステージ4では7.3%(全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2016年2月集計)による)と、初期であればあるほどその生存率は高くなっています。早く見つける事ができればその分寿命は延びるとも言う事ができるのです。

 筆者の母の話になりますが、自治体の無料健診の年齢となったので特に自覚症状はなかったが、とりあえず受けてみようと検査を受けたらがんの疑いが濃厚との検査結果。二次検査を行いその検査結果を聞きに行ったらあっさりと「がんですね。切りましょう。」と言われそのまま手術の日取りが決められ入院、手術。それからかれこれ20年近く経ちますが、今では何事もなかったかのようにぴんぴんしています。

 無自覚のうちに、早期発見、早期治療の為に行うのが、がん検診の大きな意味なのです。

■ 胃がん検診について

 胃がんの検診で現在有効とされているのが、バリウムを飲んでレントゲン撮影を行う上部消化管造影検査(胃X線検査)と、口や鼻からカメラを入れる通称胃カメラと呼ばれる、胃内視鏡検査の二つ。

・胃X線検査では、X線で間接的に胃の粘膜の病変を見る事ができ、粘膜表面には表れにくい病変も探しやすいメリットがあります。直接的に観察を行う訳ではないので胃がん以外の病変を拾う事もしばしばあります。デメリットとしては、バリウムによる便秘や呼吸器に誤って入ってしまう誤嚥が挙げられます。

・胃カメラ検査では直接胃の粘膜を目視できる為、炎症や潰瘍を見つけやすくなります。また、見つかった病変部からピロリ菌有無を調べる検査もできたり、粘膜の一部を採取して病理検査に出す事もできるというメリットがあります。デメリットとしては、胃カメラを挿入した際、胃の粘膜を採取した際などにごく稀に胃粘膜に穴が開く(穿孔)事がある、カメラを挿入する際に使用する麻酔剤によるアナフィラキシー症状などが挙げられます。

 どちらの検査もメリットデメリットがあるので、検査を受ける際には医師に相談してから決めるのも良いかと思います。

■ 自覚症状がないからこそがん検診を

 先述の筆者母は、全く自覚症状がありませんでした。お腹の痛みや食欲不振など、自覚症状が出た頃にはがんはかなり進行した状態にあると言えるのですが、そういう症状を自覚する前に検査を行う事に意味があります。がんは日本人の死因ワースト1ですが、検診によって早期に治療を開始する事で救われている命も大勢います。

 各自治体では年齢ごとに無料で検診を受ける事ができる制度があります。また、ひとり親家庭や生活保護受給者も自己負担なしで受ける事ができますので、お住まいの自治体の広報誌やホームページなどで確認してみて下さい。

<引用・参考>
胃がん治療の選択:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
がん検診について:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
がん情報サイト PDQ日本語版 Cancer Information Japan
他多数

(梓川みいな/正看護師)