オランダ空軍は2020年1月20日~24日(現地時間)の日程で、今年初となるF-16の爆撃訓練をオランダ北部のフリーラント島で実施しました。訓練は、周辺への騒音公害にも配慮した形で進められています。
F-16の爆撃訓練が行われたのは、オランダ北部フリースラント州のフリーラント島にあるヴリホルズ射爆場。フリーラント島はワッデン海に浮かぶ西フリースラント諸島の1つで人口は1100人余りと、オランダの基礎自治体の中では2番目に人口の少ない場所ですが、観光地としても知られています。
大部分が砂丘という環境から「北国のサハラ」と呼ばれることもあるフリーラント島。人が住んでいるのは北東部に位置するオースト・フリーラントという小さな町くらい。そこから離れた、広い砂丘となっている島の西部にNATOが共同使用するヴリホルズ射爆場があります。
今回、ヴリホルズ射爆場でオランダ空軍が実施したのは、Mk.82という500ポンド通常爆弾の投下訓練。Mk.82は最も一般的な通常爆弾の1つで、オランダ空軍ではそのまま無誘導の爆弾として使用するほか、弾体をレーザー誘導ユニットを組み合わせてGBU-12ぺイヴウェイIIやGBU-49エンハンスド・ペイヴウェイII、GPS誘導装置と組み合わせてGBU-38といった精密誘導爆弾としても使用しています。近年中東などで続く「テロとの戦い」で、最もよく使われている爆弾です。
人里から離れた砂丘にある射爆場とはいえ、飛行するF-16のエンジン音や、投下した爆弾(訓練弾なので炸薬量は少ない)の爆発音といった騒音が訓練中に発生します。大事な訓練とはいえ、周辺住民にとっては迷惑になる場合も。
そこでオランダ空軍では専門の部署である騒音公害局を設け、訓練時に発生する騒音を常に計測しています。今回のフリーラント島ヴリホルズ射爆場での爆撃訓練では、フリーラント島の南西に隣接するテセル島に騒音観測ポストを設置。
テセル島で、オランダ空軍騒音公害局の係官は、午前と午後の2回のセッションで騒音をモニタリング。騒音のレベルが規定値を上回ると訓練統括官に報告し、その時点でいったん訓練は中止されます。
騒音は風向きや、風の強さによって大きく聞こえたり、小さく感じたりします。訓練開始時にも予想される騒音レベルを勘案して、爆弾を投下する場所や飛行コースを設定しているのですが、訓練中に気象条件が変わるのはよくあること。このため、常に騒音をモニタリングする必要があるのです。
また、オランダ空軍では騒音被害について知らせるためのホットラインも設置。電話だけでなく、インターネットの通報フォームからでも騒音についての報告を一般市民から受け付けています。
練度を維持するためには必要な訓練ではありますが、国民の理解と支持があってこその軍隊。オランダ空軍はその原則を守って、訓練に励んでいます。
<出典・引用>
オランダ空軍 ニュースリリース
Image:オランダ空軍
(咲村珠樹)