ノルウェー国防省は2020年3月11日(現地時間)、3月18日まで実施する予定だった多国間共同訓練「コールド・レスポンス2020」について、ノルウェー国内での新型コロナウイルス感染拡大のため、継続を断念すると発表しました。参加部隊は訓練を終了し、撤収します。
多国間共同訓練「コールド・レスポンス」は、ノルウェーが主宰するNATO加盟国による共同訓練。ノルウェー北部からフィンランド北部にまたがる北極圏で、極地環境における作戦行動の実地訓練を行います。2020年は3月2日~3月18日のスケジュールで実施されることになっていました。
厳冬期の北極圏は、非常に厳しい気象条件。人間をはじめ、車両や航空機、艦船などの装備品は、通常の気温帯とは異なる環境に慣れていません。
この厳しい気象条件に習熟し、有事の際に効率的な部隊運用ができるようにする、というのが「コールド・レスポンス」の目的です。戦車や装甲車などの車両も、雪氷路独特の路面状況で安全に走行するテクニックを学びます。
訓練開始前の段階で、すでに新型コロナウイルスの感染が広がりを見せていたため、訓練地ではいざという時に備えての医療体制も整えられていました。仮設の兵舎には、入り口に手洗いと消毒を行う場所が設けられており、参加者は防疫に気をつけていました。
今回の訓練中止に至った経緯について、訓練を主宰するノルウェー軍の統合参謀総長、ルネ・ヤコブセン中将は「訓練を今すぐに終了することにより、民間医療システムに不必要な負担を与えることを回避できます。これは兵士たちが新型コロナウイルスに感染することだけでなく、訓練中の事故による負傷や、予期せぬ疾病も含まれます」とコメントしています。
今回の「コールド・レスポンス2020」には、ノルウェーのほか、アメリカ、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フランス、ベルギーの各国から約1万4000名の将兵が参加。これ以外にも、ヨーロッパ安全保障連携機構(Organisation for Security and Cooperation in Europe=OSCE)加盟国から、ロシアをはじめ56か国のオブザーバーを招待していました。
ノルウェー国防省によると、今回の訓練中止はノルウェー軍全体の任務に影響するものではなく、すべての部隊は通常任務についており、安全保障上の問題はないと説明しています。また、参加国の部隊は本国からの命令に基づいて行動することになるので、完全に撤収するには時間がかかるという見方も示しています。
<出典・引用>
ノルウェー国防省 ニュースリリース
Image:ノルウェー国防省/USMC
(咲村珠樹)