皆様こんにちは。ミリタリーにおける『食』、特にレーションについてご紹介していくDachoの『ミリヲタ的グルメ』。
第二回目となる今回からは、前回の駆け足でのレーション紹介に対して、各国のレーションを細かくご紹介していきたいと思います。
という訳で、第二回は、アメリカ軍のMREをご紹介。
▼アメリカ軍のレーション
アメリカ軍には、用途に応じて何種類ものレーションがあります。
寒冷地用、長距離偵察用、紛争初期用、宗教戒律用、部隊用などなど・・・
写真は、アメリカ軍で現在使用されている各種レーションの一部です。
そうした中で、MREは一番標準的なレーションです。「アメリカ軍ある所、MREあり」と言っても過言ではありません。
▼歴代のMRE
写真は、歴代のMREです。左から1989年製、2003年製、残り3個は2008年製です。
1980年代に登場したMREは、濃い茶色のパッケージでした。
これが1990年代半ばにデザートカラーへと変更されます。この数年前の湾岸戦争でアメリカ軍は高温下でのMREの備蓄と運用を経験しましたので、それがこの改良に影響したのかもしれません。
そして2008年、これまで1種類だったパッケージデザインが変更され、3種類でちょっとオシャレになりました。
▼MREのメニュー
MREには、24種類のメニューがあります。
そんなに種類があるのは、できるだけ食べ飽きないようにするためです。
戦場では、来る日も来る日もMREを食べ続ける事になったりします。
そんな状況で食べ飽きた兵士が食欲を落とすと、戦力に影響してきます。
そのためメニューの数を多くし、さらに毎年少しずつメニューが入れ替えられます。
ビーフラビオリ、スパゲティーミートソース、バッファローチキンなど様々なメニューがありますが、中には「スロッピージョー」のように日本では全く馴染みのない料理もあります。
また、24種類中4種類はベジタリアン(菜食主義者)用メニューとなっています。
▼MREの内容物
MREのパッケージを開くと、色々なものが出てきます。これで1食分です。
写真は、2008年製メニュー18「ビーフパテ」です。
【内容物】
・ビーフパテ
・小麦スナックパン 2枚
・バーベキューソース
・ベーコン入りチーズスプレッド
・メキシカンスタイルのマカロニとチーズ
・ナチョスチーズプレッツェル
・食塩
・アイスティー(粉末)
・ラズベリージュース(粉末)
・チューインガム 2個
・スプーン
・ウェットティッシュ
・トイレットペーパー
・マッチ
・ヒーター
・飲料温め用バッグ
MREとは、「Meal, Ready-to-Eat」つまり「すぐに食べられる食事」という意味です。
粉末飲料以外は、基本的にそのまま食べることができます。
ヒーターを使うと、料理と飲み物を温めることができ、よりおいしく食べることができます。
このメニューには含まれていませんが、チョコレートやクッキーが入っている場合も多いです。
1食当たりの平均は、エネルギー1300kcal、タンパク質13%、脂質34%、炭水化物52%となっています。
▼MREを食べる
通常MREはパックから直接食べるのですが、写真撮影の都合もありアメリカ軍のトレイに盛り付けてみました。
温めたビーフパテを開封すると、いいにおいが漂います。
他のメニューに小麦スナックパンが入っている場合は1枚だけなのですが、これが2枚入りなのは「ハンバーガーみたいな食べ方をしろ」ということなのかも。
というわけで、パンにパテを挟んでバーベキューソースとチーズスプレッドをかけてみました。
食べてみると、かなり旨いです。
ジューシーなパテにソースがよく合い、ちょっと甘みのあるパンとの相性もいいです。
チーズで和えられたマカロニは、薄味ですがピリ辛で食べやすいです。
このメニューは、見事なまでに野菜ゼロですが、味もボリュームも十分に満足できました。
▼MREは不味い?
さて、MREに関して日本国内でよく聞くのは、「不味い」ということ。
海外、特にアメリカでは、そのような意見はあまり聞かれないようです。
(いつもMREを食べざるを得ないアメリカ兵は、うんざりしている人が多いようですが。)
私が初めてMREを食べた時の感想は、「あまり美味しくない」・・・ちょっと残念な感じでした。
そんなある日、同趣味のアメリカ人と色々なレーションを交換しました。
アメリカから届いた箱に入っていたMREを食べると、これが結構いけます。
国内で手に入れたMREと同じとは思えません。
両者は何が違うのか、それは製造からの経過年数でした。
日本で出回っているMREの大半は、在日米軍が古くなったために廃棄物として払い下げた物です。
私が手に入れて食べたMREも製造から4年が経過していました。
一方、アメリカでは、ハリケーンなどの災害が起こると大量のMREが配給されるため、比較的新しい物が出回っています。
私がアメリカから受け取ったMREは、製造から1年ちょっとだったので、味が劣化していなかったのでしょう。
そして最近、どうしたことか非常に新しいMREが国内でも出回るようになりました。
私もいくつか新しい物を手に入れましたし、さらになんと製造されて半年のMREを箱ごと入手できました。
箱がグシャっと歪んでいましたが、どうやら演習でダメージを受けて廃棄処分となったらしいです。
しかし、MREは飛行機から投下されることも想定しているので、食べるのに何も問題はありません。ラッキー!
▼賞味期限のないMRE
ところで、世界中のレーションのほとんどには、賞味期限が設けられていますが、MREには明確な賞味期限がありません。MREの箱には、TTI(時間と温度指標)というシールが貼られています。
製造直後には、TTIは明るいオレンジ色ですが、時間の経過や温度により円の中が徐々に黒ずんでいきます。
円が黒っぽくなってしまうと食用に適さないと判断され、廃棄処分となります。
MREには検査時期が設定され、製造から3年経つと必ずTTIのチェックが行われます。
【注意してください!!】
MREを初めとする各国のレーションは、我々民間人が手に入れて食べることを前提としていません。
これらを販売する業者なども、あくまでコレクション品として取り扱っています。
食品としての安全性は、各国政府、製造業者、販売者の誰も保証してくれませんので、万が一食べる場合は、すべて自己責任になります。