おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【新作アニメ捜査網】第49回 2013年アニメ!勝手にアカデミー賞

アニメ!勝手にアカデミー賞 この企画も今回で4回目となりました。今回もまた、2013年に上映されたアニメ映画を振り返り、権威ある賞「アカデミー賞」になぞらえて、私の独断と偏見で賞付けしてみたいと思います。あまり肩肘張らずに行きたいと思いますので、「こんなこともあったな」ぐらいの気持ちでご覧いただければ幸いです。それでは張り切ってまいりましょう!

※注意:本稿には読み手によりネタバレと感じる内容が含まれています。ご注意ください。

【関連:2012年アニメ!勝手にアカデミー賞】

アニメ!勝手にアカデミー賞

  • ――最優秀脚本賞・・・『劇場版薄桜鬼 第一章 京都乱舞』(脚本・藤澤経清、ヤマサキオサム)

     本作におけるストーリー展開の優れた点は、謎が謎を呼び観客を飽きさせず、ストーリーに引き込んだ点にあります。新選組が密かに行っていた実験とは何か、その実験と行方不明となった主人公の父親との意外な関係とは何か、正体不明の超能力の持ち主は何者なのか、そして主人公の正体は何者なのか。畳みかけるような謎の数々を波状攻撃的に繰り出したことで、本作の面白さが高まり、観客に息つく暇も与えない作品になったと言えましょう。

     

    ――最優秀作画・美術賞・・・『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』(総作画監督・柴田由香、美術監督・三宅昌和、色彩設定・千葉絵美)

     本作の特徴に、画面サイズがシネマスコープである点があります。近年に制作されたアニメ映画はビスタビジョンが多いので、シネスコのアニメ映画は珍しい存在となっています。シネスコの長所は、映画の中の世界が観客を包み込むかのように存在することであり、観客としてはいかにも映画を見たという気分に浸ることができます。本作は、魔法が登場する物語でありますから、このようなシネスコの特性を巧みに利用し、観客を非現実の世界へいざないました。ヨヨ(声・諸星すみれ)が魔法の世界から我々の世界にワープする時に画面一杯に広がった不思議な空間はその白眉であり、まるで観客自身がワープしているかのようでした。他にも祭りの場面におけるおどろおどろしい空の描写や、ヨヨが歌いながらジャックランタンを出現させるシーンの遠近法など、画面全体を余すところなく存分に用いて作品世界を構築していました。

     

    ――最優秀音楽賞・・・『かぐや姫の物語』(音楽・久石譲)

     本作における特に優れた劇伴は、かぐや姫(声・朝倉あき)が山に住んでいた時代に木々や生き物の描写と合わせて流れた劇伴と、都から花見に出掛けたかぐや姫が桜を見て喜び舞を舞う場面の劇伴だと思います。この2つの描写に共通するのは、自然に対する慈しみであり、ことほぎが、映像と劇伴の両面から表現されているということです。本作の劇中では歌の形を取って繰り返し地球上の生き物と植物に言及されますが、上記の2つのシーンは、地球上の生き物と植物を象徴的に表したシーンではないでしょうか。そして、そのような地球上の生き物と植物、言い換えれば地球上の生命の躍動感を高らかに表現した本作の劇伴を最優秀音楽賞としたいと思います。

     

    ――最優秀主演男優賞・・・『聖☆おにいさん』の星野源&森山未來

     本作で星野源と森山未來が演じた主人公コンビの魅力は、相手を思いやる慈愛に満ちた語り口と、随所に出現するユーモア溢れる大ボケっぷりです。無邪気な2人の語り口を聴いていると心が洗われるようであり、観客であるこちらまで優しい気持ちになるようです。本作の喜劇性を盛り上げる2人の慌てっぷりも大変愉快でした。世知辛い世の中に一服の清涼剤を提供した功績に対し、最優秀主演男優賞としたいと思います。

     

    ――最優秀主演女優賞・・・『劇場版あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 めんまからの手紙』の茅野愛衣

     本作における茅野愛衣の功績は、演じるヒロイン・本間芽衣子のいじらしさを表現し観客を感動させた点にあります。芽衣子は元々クラスで友達がおらず孤立していました。この時の様子を語る芽衣子のモノローグが泣かせます。しかし、そんな芽衣子も友達に恵まれ、グループは超平和バスターズと命名されました。メンバーと携帯ゲームをしたりかくれんぼしたりする芽衣子の楽しそうな姿には、友達に恵まれた喜びとメンバーに対する感謝の念が溢れており、茅野の語り口によって芽衣子の心情を観客に伝えることに成功しました。そして一番泣けてくるのが「生まれ変わったら何になろう」で始まるモノローグです。その功績を讃え、最優秀主演女優賞と致します。

     

    ――最優秀助演男優賞・・・『風立ちぬ』の野村萬斎

     本作で野村萬斎が演じたのはイタリアの飛行機設計者カプローニ。劇中では主人公の夢の中に度々現れ、大空の世界へいざないますが、この時の野村の語り口は、後進を導き包み込むような豪放磊落さを持ちつつ、同時に、夢を追い求める子供のような雰囲気も漂わせていました。本作の主人公は苦悩も抱えていましたが、野村の語り口は苦悩する後進を励まし、その精神的苦痛を和らげようとするもので、大変ありがたい存在となっていました。その結果、作品全体に夢を持たせることに成功したと思います。そのような野村の功績に敬意を表し最優秀助演男優賞と致します。

     

    ――最優秀助演女優賞・・・『小鳥遊六花・改 劇場版中二病でも恋がしたい!』の上坂すみれ

     エキセントリックな言動をする登場人物が多い本作の中でも独特の存在感を放ったのが上坂すみれ演じる凸守早苗でした。ツインテールの髪を華麗なアクションで振り回す映像面のインパクトのみならず、上坂による「○○デース!」というユーモラスな喋り方は、作品の雰囲気を和ませ、作品をほのぼのとした作風に仕上げることに貢献しました。上坂の貢献に敬意を表し、最優秀助演女優賞としたいと思います。

     

    ▼過去の記事はこちらです。

    【新作アニメ捜査網】第30回 2010年アニメ!勝手にアカデミー賞
    https://otakuma.net/archives/4104840.html

    【新作アニメ捜査網】第41回 2011年アニメ!勝手にアカデミー賞
    https://otakuma.net/archives/2012011601.html

    【新作アニメ捜査網】第46回 2012年アニメ!勝手にアカデミー賞
    https://otakuma.net/archives/2013010103.html

    (文:コートク)

    あわせて読みたい関連記事
  • 精子たちが生死をかけて大冒険!各国で社会現象を起こした「スペルマゲドン」が日本上陸
    エンタメ, 映画

    精子たちが生死をかけて大冒険!各国で社会現象を起こした「スペルマゲドン」が日本上…

  • ベルサイユ宮殿庭園・愛の神殿
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    劇場アニメ「ベルサイユのばら」美術設定画が解禁 ベルサイユ宮殿やジャルジェ家など…

  • ガンダムSEED公式が劇場版キャラの「声優当てクイズ」 予想の声が続々
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    ガンダムSEED公式が劇場版キャラの「声優当てクイズ」 予想の声が続々

  • (C)バード・スタジオ/集英社 ©SAND LAND製作委員会
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    鳥山明原作 「SAND LAND(サンドランド)」がアニメシリーズ化 ディズニー…

  • 「銀河英雄伝説 Die Neue These 激突」メインビジュアル
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    映画「銀河英雄伝説 Die Neue These 激突」メインビジュアル解禁 第…

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    新作アニメ映画「シドニアの騎士 あいつむぐほし」制作決定 原作者・弐瓶勉が総監督…

  • アニメ/マンガ, 放送・配信

    「泣きたい私は猫をかぶる」がオーディオコメンタリーを公開 映画本編のその後を描い…

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    ビッケが帰ってくるぞ!3D映画「小さなバイキング ビッケ」が10月2日公開決定 …

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    京アニ「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」公開日決定で本予告解禁

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    ジブリ4作品の劇場上映が決定しファン歓喜 「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」な…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起

  • 博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢
    エンタメ, 舞台

    博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢

  • 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく
    社会, 経済

    雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

  • 駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開
    社会, 経済

    駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    2. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    3. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    4. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    5. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト