毎度趣味の海底探査のような話題をお送りしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。
最近なにかと深海魚が話題でございます。かくいうワタシも深海魚は大好き。小学生の頃、子供向け図鑑に載っていたSaccopharynx の絵を見て、一発で深海魚ファンに。しかし今ほどブームでもなく、生きて捕獲されることが少ないので水族館にもいるわけがなく、たまに発売される本の写真を見て楽しむ程度でした。ここ数年の深海ブームはとてもうらやましいです。
さてそんな思い入れある深海魚ですが、飼育は個人レベルでできるものではありません。特に深海の水圧を再現するのは至難の業。ダイオウイカなどは、その大きさも手伝って、飼育には億単位の費用がかかるとの試算結果もあります。ですが、観賞魚として流通するものの中にも、深海魚っぽい魚がいます。それがこちら。
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流通名はバトラクスキャット。アマゾン川水系に生息する、ナマズの仲間です。大きく育てても30cmくらいと思われます。写真のものは売っているものとしては大きな方で、20cmを超えたくらいです。まあナマズなのですが、深海魚っぽさを醸し出しているナマズなのです。
・体に対して口がかなり大きい
・目も同様に大きい。しかも見えているのかどうかあやしい。
・流れがあるのが苦手なようで、泳ぎはゆっくり
・エサを感知すると大きな口でばくり
・自分と同じくらいのサイズの魚でも食べてしまうことがある
大きな口は、写りの悪い写真で申し訳ありませんがこちらでどうぞ。
バトラクスキャットの生息場所は川の深い所だそうで、なるほど深海魚っぽくなるわけだ、という感じです。アマゾン川は濁っているので、深い所では視界も悪いでしょうから、深海魚と似通ってくるのも納得です。底生性のナマズには、底に居てほとんど動かないものもいるのですが、ほどよく動くところが深海魚を連想させます。
そんな深海魚っぽさのあるバトラクスキャットですが、飼育はそれほど難しくはありません。ポイントは、他の魚を一緒にしないこと。バトラクキャットがおいしく食べてしまいます。単独か、バトラクスキャット同士での飼育になります。あまり泳がず、すみっこでじっとしていることも多いので、1~2匹であれば水槽もそれほど大きくなくてよく、60cmの標準的な水槽で十分でしょう。ヒーターや濾過なども特別なものは必要ありませんが、底でじっとしていたりするので、ヤケドしないようにヒーターにはカバーを付けましょう。照明は明るすぎると魅力がやや落ちるかな~と思いますがこれは個人的感想です。
エサは基本的には活餌で、金魚などを与えます。ワタシの飼育経験では、金魚10匹入れれば10匹食べます(笑)。また一度ある程度食べると数日は絶食が可能なようです。この、「食べられるうちにたべておく」あたり、とても深海魚っぽいところです。慣らせば人工飼料も食べるようになるようですが、少々時間がかかるようです。生きているままの魚が食べられるところは見ていられない~、という方には不向きです。一匹でも存在感があり、ほどよく泳ぎ、深海魚を思わせる行動も楽しめる一匹です。
■取材協力:あくあしょっぷ石と泉
東京・阿佐ヶ谷にある熱帯魚店。いわゆる小さくてきれいな熱帯魚もたくさんいますが、珍しい種類も多数。ストック水槽もとても多いので、よーく見て回ってください。お店イチオシはもちろんバトラクスキャット。わからないことは大きくてやさしい店長が丁寧に説明してくれます。「買うのではなく、飼うのです」。
(取材:エドガー)