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【うちの本棚】202回 七階からの手紙/竹宮恵子

update:

七階からの手紙/竹宮恵子「うちの本棚」、今回は竹宮恵子の初期作品を集めた作品集『七階からの手紙』を取り上げます。
 少年を主人公にした「陽」の作品群といえるかもしれません。

【関連:201回 サンルームにて/竹宮恵子】

七階からの手紙/竹宮恵子


  •  朝日ソノラマの「サンコミックス」から刊行された「竹宮恵子傑作シリーズ」の2冊目は、明るい雰囲気の漂う作品が集められている。『風と木の詩』以前に代表作として知られた『空が好き!』に通じる雰囲気を持った作品たち、といえばわかりやすいだろうか。

     竹宮恵子は少年愛をテーマに据えない作品でも「少年」を描くことが好きで、ギャグシーンが多かったりコメディー調の、読後感がさわやかな作品群がある。そういった作品群と「少年愛」「SF」というジャンルに、竹宮作品の主なものがカテゴライズできるだろう。

     表題作『七階からの手紙』の最後には「ガラス・シリーズ No3」と記されている。昭和51年11月に小学館の「フラワーコミックス」から刊行された『ガラスの迷路』が「ガラス・シリーズ」を集めたもののようだが、この作品もそのひとつということになる。幼年期から思春期になろうとする少年たちを、美しく壊れやすい、はかない存在として「ガラス」と表現したのだろうが、竹宮らしいといえばらしい。

     また『ロベルティーノ』は、巻末の大沢健一の解説中、作中のセリフを引用したあとに(『空が好き!』「ロベルティーノ』より)としているので、『空が好き!』のシリーズに含まれる作品であるようだ。もっとも、タグ・パリジャンは登場しないし、単独の読みきり作品として読めるものになっている。
    『ナイーダ』は同人時代の作品を改作したもの。『トゥ・リップルくん』はドタバタコメディ。『星くずたちの夢』はアマチュア時代の仲間たちとの夢を元にしているのだとか。

     いずれにしろ70年代前半の竹宮恵子初期作品を堪能できる作品集であることには間違いない。
     古書店で見かけるなどしたら、ぜひお手にとってみてください。

    初出:七階からの手紙/1974年3月「週刊少女コミック」、ナイーダ/1971年8月「週刊少女コミック」、トゥ・リップルくん/1971年8月「週刊少女コミック増刊号」、ロベルティーノ/1972年3月「別冊少女コミック」、星くずたちの夢/1971年12月「週刊少女コミック冬の増刊号」

    書 名/七階からの手紙
    著者名/竹宮恵子
    出版元/朝日ソノラマ
    判 型/新書判
    定 価/350円
    シリーズ名/サンコミックス・竹宮恵子傑作シリーズ②
    初版発行日/昭和51年5月20日
    収録作品/七階からの手紙、ナイーダ、トゥ・リップルくん、ロベルティーノ(旧題・愛の調べにのせて)、星くずたちの夢
    こぼれ話/竹宮恵子
    ボクの竹宮恵子さん/大沢健一(TVディレクター)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

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