「うちの本棚」、竹宮恵子作品集の最後に収録されたのは代表作の『ファラオの墓』です。
古代エジプトを舞台にしたふたりのファラオの愛憎劇は、質・量共に竹宮恵子の代表作にふさわしいものでしょう。
小学館の「竹宮恵子作品集」、最後を飾るのは代表作の『ファラオの墓』だ。「フラワーコミックス」版全8巻を作品集では全5巻に編集している。古代エジプトを舞台にした壮大な歴史物語で、質・量ともに代表作と呼ぶにふさわしい作品だ。
5巻に収録された部分の「こぼれ話」(初出時には広告スペースだったと思われる余白に作者が手書きした解説)には、本作がもともとデビュー前の習作であり、それが編集者の目に留まり連載作品に発展したとある。
『ファラオの墓』というタイトルは印象的だし、秀逸だとは思うが、作品中「ファラオの墓」であるピラミッドやその建設シーンが描かれるのは物語の最初のほうの短いシーンのみ。印象的なタイトルではあるものの、本作の内容を象徴するものではないという気もする。
本作が描かれた時点では、これが竹宮にとってもっとも長い作品であったし、歴史ものというジャンルも竹宮にしては珍しいものだった。さらにいえば『空に好き!』でパリやモンマルトルといった特定の都市を舞台にしていながら、はっきりとその風景を描いていない印象があったのだが、本作では古代のエジプトの町や砂漠の風景を充分に描いてもいる。また女性キャラクターが全編にわたって重要な役割を演じているのもそれまでの竹宮作品には見られない特徴といっていいと思う。
主人公サリオキスの妹ナイルキア、敵国王スネフェルの婚約者アンケスエン、物語の最後でサリオキスと結ばれるアウラなど印象的な女性キャラクターが多い。もちろんほかの作品に印象的な女性キャラクターが登場しなかったわけではないが、要所要所に顔を出すだけという感じで、ストーリーの進行を左右しているのは殆どが男性(少年)キャラクターだったという気がする。
そういった意味では、本作は竹宮の代表作であるとともに異色作ということも言えるのかもしれない。
小学館の「プチコミックス」はこの竹宮恵子作品集のほか、萩尾望都、上原きみこの作品集を刊行。それぞれ第一期として一端完結したあと、萩尾のみが第二期を刊行してシリーズは終了している。
初出:小学館「週刊少女コミック」昭和49年38号~昭和51年8号
書 名/ファラオの墓(全5巻)
著者名/竹宮恵子
出版元/小学館
判 型/B6判
定 価/第1巻・480円、第2巻・450円、第3巻・480円、第4巻・480円、第5巻・480円
シリーズ名/プチコミックス・竹宮恵子作品集9~13巻
初版発行日/第1巻・昭和54年6月15日、第2巻・昭和54年7月15日、第3巻・昭和54年8月15日、第4巻・昭和54年9月15日、第5巻・昭和54年10月15日
収録作品/ファラオの墓
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)