おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

あの『薄桜鬼』が進出した「絵ノベル」って何? :開発者インタビュー

薄桜鬼 『薄桜鬼』というゲーム作品をご存知だろうか? 「おたくま」をお読みの女性ファンのみならず、アニメ・漫画などのメディアミックス作品に触れたことがある人も多いだろう。幕末を舞台に、見目麗しい新選組隊士らとの恋愛模様と、「鬼」と呼ばれる一族の存在が物語を盛り上げる、魅力あふれる作品となっている。

  • 【関連:タイトル詐欺の鑑だ!『魔法少女・オブ・ジ・エンド』第01巻(だけ)レビュー】

     『薄桜鬼』は、アイディアファクトリー株式会社の乙女ゲームブランド「オトメイト」より発売されている作品の一つだ。好評により数々の続編を重ね、テレビアニメの放映や劇場版の公開、舞台やミュージカルなどなど幅広く展開され、今も多くのファンを生み出している。

     この『薄桜鬼』をはじめ、女性向けコンテンツで確固たる地位を築いている「オトメイト」が、「絵ノベル」という新分野に進出したという。今回は、こちら「絵ノベル」を提供する電子書店・パピレスの関係者に話を聞いた。

    薄桜鬼

    ■「得意分野=女性向けコンテンツ」で勝負

     主に小説、実用書、コミック、雑誌など電子書籍を販売・配信しているパピレスだが、紙に無いデジタルコンテンツならではの特徴を盛り込んだ次世代コンテンツにも注力しており、「絵ノベル」もその一つだ。
     「絵ノベル」は、小説やゲームをTwitterやLINEのように小分けにされた文章を縦のスクロールで読んでいくコンテンツ。セリフの横に登場人物のアイコンが添えられ、背景画像が表示されるなどビジュアル面も強化され、読書に親しみのないユーザーでも気軽に物語を楽しむことができる。

    絵ノベル

    (参加者:株式会社パピレス コンテンツ企画開発部 矢内丈博氏、畑正文氏、阿部佑一氏)

    ――「絵ノベル」の企画はいつごろスタートしたのでしょうか。

    矢内丈博氏(以下、矢内氏):2013年4月ごろに企画が立ち上がり、本格的に動き始めたのが7~8月にかけてのことですね。同時期既に「コミックシアター」というサービスを行っていました。こちらは「次世代ブック」という企画から生まれたものですが、絵ノベルはこちらの第二弾という位置づけでした。

    畑正文氏(以下、畑氏):コミックシアター以前にも、将棋や囲碁の棋譜を、盤面上で一手一手確認できる商品や、動的コンテンツをコミックに取り込んだ商品を販売しており、通常の紙書籍をデジタル化したものとは違う、デジタルならではの取り組みを長らく行ってきました。

    ――「絵ノベル」のターゲットはどういった層ですか。

    矢内氏:普段あまり本を読まないお客様ですね。弊社の既存ユーザーでいえば「電子貸本Renta!」でコミックやライトノベルを購読頂いているお客様に、新たな楽しみを提供できないかと考えました。

    ――男性向け・女性向けといった視点でみた場合、「絵ノベル」には女性向け作品が多くなっています。これは、意図的なものですか。

    畑氏:現在「電子貸本Renta!」では、コミックを中心に女性ユーザーによる購買が非常に伸びており、ユーザーの男女比でも女性の割合が多くなっています。言わば女性向けコンテンツが弊社の得意分野と言えるでしょう。そのため「絵ノベル」の開始時には新たなユーザーだけでなく、既存ユーザーにもアピールできる女性向けコンテンツを多くしました。
    もちろん、男性向け作品の導入も検討しています。ゆくゆくラインナップに加えていきたいですね。

    ■「コミック並みにわかりやすく」操作性はシンプル

    ――「絵ノベル」は画面をスクロールして物語を読み進めるわけですが、このスクロールも含めて、操作まわりは快適なものに仕上がっていますね。

    矢内氏:ありがとうございます。Twitter、LINEのタイムラインや、スマートフォンの普及で「スクロールして文章を読む」という行為は浸透しているという確信がありましたので、スクロール式の導入は当初から決定していました。そこからは細かな調整で、1回のスクロールでどれだけ進むのか、ボタンの配置はどこが適切なのかなど、3~4ヵ月かけて検証、実装しました。

    阿部佑一(以下、阿部氏):「絵ノベル」の方向性として、多機能ではなく分かりやすさを重視しています。使いこなせれば便利であったとしても、わずかでも「絵ノベル」を体験することの敷居を高くしてしまいそうな機能は、導入を見送っています。普段電子書籍を読んだことのない、それこそスマートフォンを手にとって日も浅いお客様でも楽しめるようにというのが、絵ノベルの操作性で注意した点です。

    矢内氏:ある程度わかりやすい操作性を実現できたと実感したのは、「絵ノベル」と電子書籍版コミックの操作性を比べたご意見を、お客様から頂いた時です。活字コンテンツである「絵ノベル」の操作性を小説ではなくコミックと比べるということは、小説以上にわかりやすく、コミック並みの操作性として捉えられている、ということですから。

    畑氏:現行の「絵ノベル」が完成形とは考えていません。今後もお客様からのご意見を参考にしつつ、操作性や機能性をアップデートしていければと考えています。

    スチルシーン

    ■「短文文化」の定着。「絵ノベル」を受け皿に

    ――よく「人々の活字離れ」と言われますが、「絵ノベル」はその活字離れに歯止めをかけるような存在と言えるかもしれませんね。

    畑氏:本を読まないということが、本当に活字離れなのか疑問に感じているというのが正直なところです。確かに最近は、本としての活字が読まれる機会は減ったかも知れませんが、毎日Twitter、LINEなどソーシャルツールで膨大な活字に触れているわけですし、ブログを読んだり書いたりもしている。ニュースをスマホで読んだりもするでしょう。つまり活字との接触機会は減っていないどころか、むしろ増えていると見ています。

    ――対象メディアが紙からデジタル(Web)へ移り変わっただけで、人々は活字離れしているわけではないと。

    畑氏:そうですね。ただ、それらのメディアはいずれも短文で構成されているのが特徴で、長文の塊である「本」というものは読みづらいと避けられているというのが、実情ではないかと。だからこそ、ウィンドウに表示される短文で読み進められる「絵ノベル」が受け入れられやすいのだと思います。

    ――今後の「絵ノベル」の動きに関して、うかがえますか。

    矢内氏:ありがたいことにお客様からも好評いただき、コンテンツの要望の声もいただいております。今後も更なるラインナップの拡充に注力していく予定です。アイディアファクトリー様の乙女ゲームブランド「オトメイト」より、第一弾として『AMNESIA』、そして第二弾として『薄桜鬼』が配信開始されました。今後もオトメイト作品は『猛獣使いと王子様』、『神なる君と』、『源狼 GENROH』、『CLOCK ZERO~終焉の一秒~』などの人気作品を毎月連続でリリースしていく予定です。

    阿部氏:好評もあり、版元様によっては、同タイトルの書籍版・電子書籍版・絵ノベル版の3バージョンを同時リリースなどのご提案を既にいただいています。また、過去の小説に新たな描き下ろしイラストを挿入して「絵ノベル」化するという手法も、ホラー小説『学校のおぞましい話』シリーズで実施しています。版元さんと「絵ノベル」の共同出版といったことにも取り組んでいきたいですね。

    畑氏:男性向け作品に関しては、ライトノベルはもちろんですが、アドベンチャーゲームを中心にいくつかゲーム会社さんにもお声がけしています。ぜひ男性のお客様にも「絵ノベル」の新作を期待してお待ちいただければと思います。

    ――ありがとうございました。

    参考:
    「絵ノベル」http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/page/index_n.htm
    「オトメイト」(アイディアファクトリー株式会社)http://www.otomate.jp/

    (C)IDEA FACTORY/DESIGN FACTORY

    あわせて読みたい関連記事
  • 休止から5か月、「マンガ図書館Z」ついに再開 クラウドファンディングで復活
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    休止から5か月、「マンガ図書館Z」ついに再開 クラウドファンディングで復活

  • 「マンガ図書館Z」のサイト再開予定日が4月25日に決定 支援額は900万円を突破
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「マンガ図書館Z」のサイト再開予定日が4月25日に決定 支援額は900万円を突破…

  • 電子書籍サービス「マンガ図書館Z」のクラウドファンディングが目標金額達成 4月のサイト再始動に向け前進
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    電子書籍サービス「マンガ図書館Z」のクラウドファンディングが目標金額達成 4月の…

  • 電子書籍サービス「マンガ図書館Z」がサイト停止へ 今後も再始動への道を模索
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    電子書籍サービス「マンガ図書館Z」がサイト停止へ 今後も再始動への道を模索

  • TVアニメ「俺だけレベルアップな件」第2期ティザーPVメインカット
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    TVアニメ「俺だけレベルアップな件」第2期ティザーPV公開

  • アイエエエエ!?漫画版「ニンジャスレイヤー」が全巻一冊33円セールを敢行
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    アイエエエエ!?漫画版「ニンジャスレイヤー」が全巻一冊33円セールを敢行

  • プレゼンリモコンに電子書籍のページめくりという新しい役目を与えよう(深水英一郎氏寄稿)
    ライフ, 雑学

    プレゼンリモコンに電子書籍のページめくりという新しい役目を与えよう(深水英一郎氏…

  • わんぱっくコミック・リバイバル
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    懐かしの漫画雑誌「わんぱっくコミック」がデジタル版で復刻!第3弾が刊行

  • ゲーム, ニュース・話題

    ミュージカル「薄桜鬼 真改」相馬主計篇 2021年上演決定

  • 企業・サービス, 経済

    「カッパ発見」「マドンナ痔だった」 東スポの伝説の1面がブックパスで配信

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 新作ゲーム「裏バイト:逃亡禁止 たつ子の謎」
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「裏バイト:逃亡禁止」の恐怖をゲームで 小学館がマダミス「たつ子の謎」を11月配…

  • 新物板うに手巻きセット(5貫分)
    商品・物販, 経済

    くら寿司、旬の「新物うに」登場 板うに手巻きセットや北海たこうにも販売

  • 無印良品、大盛りカレーを拡充 和出汁仕立てと香味野菜デミグラス登場
    商品・物販, 経済

    無印良品、大盛りカレーを拡充 和出汁仕立てと香味野菜デミグラス登場

  • OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能に
    インターネット, サービス・テクノロジー

    OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能…

  • 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕
    ゲーム, ニュース・話題

    将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

  • 綾瀬はるか出演CMで新商品「ハピネスミスト」デビュー 洗えない布製品に5つ星ホテルの香り
    商品・物販, 経済

    綾瀬はるか出演CMで新商品「ハピネスミスト」デビュー 洗えない布製品に5つ星ホテ…

  • トピックス

    1. 「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「もしかして、フツーの人っておなか空いてる時以外おなか空いてないの?」そんな衝撃の(?)問いかけとと…
    2. コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      10月1日は「コーヒーの日」。そんな記念日に合わせて、かどや製油公式Xが提案してきたのは……まさかの…
    3. 「えもじの子(仮)」

      LINEの人気キャラ「えもじの子(仮)」が有料で復活 一部未収録に完全復活を望む声も

      つぶらな瞳ととぼけた表情で人気を集めたLINE絵文字「えもじの子(仮)」の無料配布版が10月1日、有…

    編集部おすすめ

    1. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    2. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    3. pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      アパレルブランド「pium」が9月30日、店舗スタッフの接客に対する多数の指摘や批判を受け、公式Xにて謝罪文を公開しました。併せて再発防止策…
    4. 「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」のロケ地として知られる静岡市清水区で、作品ゆかりの企画を集めた大型オフラインイベント「清水 ビー・バップ・…
    5. 第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京アニのセカイ展―』

      京都アニ「第7回ファン感謝イベント」追加情報を公開 新商品や書籍予約、グッズ二次予約も発表

      株式会社京都アニメーションは、10月25日・26日の2日間で開催予定の「第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト