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【宙にあこがれて】第47回 オスプレイだけじゃない!~航空機の新ジャンル、ティルトローター~

2014年11月21日、陸上自衛隊のティルト・ローター機(防衛省の表記)として、V-22オスプレイを採用する旨、防衛省から発表がなされました。現状、実用化されているのはV-22だけなので当然の結果だった訳ですが、様々な意味で話題になっている航空機でもあります。恐らく、ティルトローターというものが「航空機の新ジャンル」であり、今まで見たことがないからこそ「得体の知れないもの」として良くも悪くも話題になるんだと思います。よい機会なので、V-22に至るまでの「ティルトローター」という航空機の歴史、そして近い未来についてご紹介しましょう。

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    ティルトローターというのは、VTOL(垂直離着陸機)の一種。プロップローター(proprotor)と呼ばれるプロペラ兼ローターの取り付け角を変化させ、推力を上横に変えることで垂直上昇・下降と水平飛行を実現する航空機のことです。垂直に上昇する際はヘリコプターと同じように、プロップローターが揚力を発生し、水平飛行時は飛行機と同じく、主翼が発生する揚力で飛んでいます。
    このティルトローターというアイディアは昔からあり、ジョージ・レーバーガーという人が1930年9月16日付けでアメリカの特許を取得しています(現在は期限切れ)。

    レーバーガーによる最初のティルトローター特許

    レーバーガーによる最初のティルトローター特許

    レーバーガーの特許は仕組みに関してのアイディアだけで、実機が製作され、飛行した記録はありません。実機の製作に取り組んだのは、世界初の量産ヘリコプターを開発したことで知られるドイツのフォッケ・アハゲリス社。第二次世界大戦中の1940年代にFa-269という機体の開発をしていたのですが、度重なる空襲で施設が破壊され、機体の完成を見ることなく開発計画は中止されました。
    実際に飛行した最初のティルトローターは、アメリカ空軍の資金援助を受けて開発された、トランセンデンタル・モデル1-Gという機体。1954年のことでした。残念ながら、1機だけしか作られなかったこの機体は事故で失われ、現存しません。
    続いて飛行に成功したのは、ベルXV-3。これもアメリカ空軍と陸軍の資金援助を受け、ティルトローターの実験機として作られたものです。トランセンデンタル・モデル1-Gの翌年、1955年に初飛行し、こちらの方が有望と見られた為、1960年代まで試験が続けられました。XH-33というヘリコプターが設計の源流にあった為、コクピットはコレクティブレバー(上昇・下降をつかさどるレバー)とサイクリックスティック(飛行機で言う操縦桿)があり、ヘリコプター的です。

    胴体部にプラット&ホイットニー(P&W)R-985ワスプ・ジュニア空冷星形9気筒エンジンを搭載し、延長軸で両翼端にあるプロップローターを駆動する仕組み。プロップローター部の角度を変更することで、垂直離着陸モードと水平飛行モードを切り替えました。一番の重量物であるエンジンを翼端に取り付ける為には主翼を極端に強化する必要があり、しかもそれごと角度を変更させる……というのは技術的に不可能だったのです。エンジンを翼端に取り付けるというアイディアは、小型軽量・高出力のガスタービン(ターボシャフト)エンジンの実用化を待たねばなりませんでした。
    ターボシャフトエンジンを搭載して飛行した初めてのティルトローターは、1960年に初飛行したカーチス・ライトX-100。1基のターボシャフトエンジンを胴体内に搭載し、延長軸で主翼両端のプロップローターを駆動するというもので、この後拡大型のX-200、空軍のプログラムとして、胴体前後に串型配置した2枚の主翼端にプロップローターを合計4つ搭載したX-19(1963年初飛行)が作られますが、1965年の試験中にX-19が墜落し、あえなく中止となっています。これはX-100の貴重な映像。

    その他、ターボシャフトエンジンを使ったティルトローターとしては、イギリスのウェストランド(現:アグスタ・ウェストランド)社が1968年のファーンボロ・エアショウ(コンコルドの試作1号機が初登場したことで知られる)で、小型(6人乗り)のWe-01C、旅客機型(84人乗り)のWe-02Bというコンセプトモデル(模型)を発表しましたが、これは結局機体の製作には至りませんでした。
    現在のように、ターボシャフトエンジンとプロップローターを主翼の両端に配置した機体として初飛行したのは、1977年のベルXV-15が挙げられます。アメリカ陸軍とNASAの合同研究計画に応募した、ボーイング・バートル社、シコルスキー社、グラマン社などの設計案からベル・ヘリコプター社の案が採用されたもので、これがV-22オスプレイの直接の先祖、ということになります。

    XV-15は1980年代前半まで、様々な試験が行われました。その中には1982年8月に実施された、イオー・ジマ級強襲揚陸艦トリポリ(LPH-10)への着艦試験も含まれます。V-22オスプレイが運用される環境に関しては、既にXV-15の時点で「ティルトローターはどれだけのことができるのか」という調査・研究が綿密に行われていた訳です。その後、ベル社の側でティルトローターのデモンストレーションを1990年代初頭まで行い、プログラムは終了しました。
    XV-15の技術的成功からティルトローターの有用性・実現可能性が証明され、これを受けて実用機として開発されたのがV-22オスプレイです。1980年代初頭にアメリカ4軍(陸海空・海兵隊)が統一して使える「ヘリコプター(回転翼機)のように垂直に離着陸でき、飛行機(固定翼機)のように速度の出せる航空機」に関しての開発計画がスタートし、ティルトローターを長年研究開発していたベル社と、CH-46(V-107)やCH-47といった大型輸送ヘリコプターを製造しているボーイング・バートル(現:ボーイング)社の共同設計案が採用されました。
    結局、大型輸送ヘリコプターCH-47を運用中の陸軍は採用を取りやめ、海兵隊向け(MV-22)と空軍向け(CV-22)、そして海軍向け(HV-22)が作られることになりましたが、基本的な設計はどれも同じです。途中、予算削減等で開発が遅れましたが、1989年に初飛行。初めての実用ティルトローターとして、じっくり飛行試験が続けられ、1999年に本格的な量産体制に移行しました。
    これまで何件か墜落事故が起きていますが、これは今までにないタイプの航空機であるが故、手探りを続けながらの状態だったからと言えるでしょう。飛行機もライト兄弟の初飛行(1903年)から1020年ほどはよく墜落していて「飛行機は墜ちるもの」という認識が世間にあったので、ある意味同じ道ということができます。パイロットも、ヘリコプター(回転翼機)や飛行機(固定翼機)とはまた違う操縦感覚に戸惑う面があったことも否めません。これらの経験により設計やパイロットの育成方法が熟成され、現在の事故率は他の軍用機(海兵隊でオスプレイの置き換え対象になっている、老朽化したCH-46Eなど)と較べても少ないものになっています。

    騒音に関してですが、自宅の上を陸上自衛隊のCH-47や海上自衛隊のP-3C、その他民間航空会社の定期便が飛ぶ筆者の感覚からすると、CH-47の方がよりうるさく、空気を振動させる割合が強い(屋外で聞くと腹に響き、屋内では窓がビリビリ揺れる)ように思います。双方のローター、プロップローターの長さや回転速度、それによって発生する音の質も関係するのですが、CH-47よりはマイルドな印象です。
    実機を見てみましょう。胴体部はボーイング社、翼等のティルトローター機構部分はベル社と製造を分担しているのですが、そう言われると胴体形状はどことなくCH-46やCH-47に似ています。機体の大きさ(全長)は17.7mと、CH-47(胴体のみで15.88m、ローターを含むと30m強)より少し大きく、F-15(19.4m)より小さい程度。ヘリコプターとしては大きく、飛行機としては小型ということになります。展示された機体を見た人達からは「大きい」とか「思ったより小さい」という声が聞かれますが、基準がヘリコプターか飛行機かで感想が分かれている印象。

    海兵隊のCH-46E

    海兵隊のCH-46E

    同じ飛行隊に配属されたMV-22

    同じ飛行隊に配属されたMV-22

    ティルトローターの重要部分である、プロップローターの角度を変更する機構ですが、主翼とエンジンナセルの接続部に油圧のアクチュエータが斜めに取り付けられており、これがエンジンナセルを押し上げるように動くことで、角度が変わるようになっています。

    主翼端のエンジン取り付け部

    主翼端のエンジン取り付け部

    エンジンナセル角度変更用のアクチュエータ(赤丸部)

    エンジンナセル角度変更用のアクチュエータ(赤丸部)

    駐機時のスペースを最小限にする(これは艦載機として運用することを考慮しているからでもあります)為、プロップローターは一方向に揃えて折り畳めるようになっており、主翼も90度回転させて胴体の上にまとまるようになっています。プロップローターが畳まれた姿は、ちょっとカニの爪のよう。

    収納時の姿

    収納時の姿

    プロップローターの折り畳み部

    プロップローターの折り畳み部

    これらの収納・展開はスイッチひとつで自動的に行われ、1分少々で完了します。

    また、ヘリコプター(回転翼機)でも飛行機(固定翼機)でもないティルトローターは、実用機であるV-22オスプレイの登場により、アメリカ連邦航空局(FAA)で1997年8月、新たなパイロットライセンス区分が作られました。「パワードリフト(Powered Lift)」という名称なのですが、ヘリコプターのようにローターが回転して揚力を生み出すというよりは、強力なエンジンで駆動されるプロップローターが生み出す推力(パワー)によって機体の浮揚(リフト)を実現している、という解釈によるものです。
    オスプレイは軍用のみで、民間転用される予定はありません。しかし、純粋な民間機としてのプロップローターも開発が進んでいます。
    アグスタ・ウェストランド社のAW609。1996年にベル社とボーイング社の共同開発でスタートし、ボーイング社が離れてアグスタ・ウェストランド社が参加した1998年に「BA(BellとAgusta-Westlandの頭文字)609」となり、2002年12月に初飛行に成功しました。当初は2011年の型式認定を目指していたのですがスケジュールは遅滞し、最終的にベル社からV-22からの技術移転契約を結んだ上で、現在ではアグスタ・ウェストランド社単独で開発が進められています。2014年春には無事オートローテーション試験が終了し、2015年中にはアメリカ連邦航空局(FAA)と欧州航空安全機関(EASA)の型式認定が受けられる予定です。

    こちらは全長14m強と、小型のビジネスジェットと同等の大きさ。メーカー側はビジネス用途だけでなく捜索救難用、またはドクターヘリより高速な急患搬送手段としての需要も期待しています。特にオスプレイと違い、室内が与圧されていることで気圧変化が少なく快適性が高い為、急患搬送では患者をより安定した状態を維持できるのが大きな強みと言えるでしょう。
    また軍用では、オスプレイでは大きすぎる小規模な部隊による突入作戦に投入できるものとして、V-280という機体がベル社から提案されています。これは導入開始から既に30年以上が経過したUH-60の置き換えを狙っており、V-280のモデル名は巡航速度280ノット(時速約518.5km)を表したもの。これはUH-60のほぼ倍です。ベル社ではこのようなPVを制作しています。

    無人機(UAV)にもティルトローターを採用したものがあります。アメリカ沿岸警備隊向けに作られたベル社のイーグルアイは計画がキャンセルされましたが、イスラエル・IAI社の無人観測機パンサーの他、韓国でも研究が進められているようです。

    航空機の新ジャンル、ティルトローター。日本ではオスプレイしか知られていませんが、長い開発の歴史と様々な機体があることを知ってもらえたら幸いです。

    (文・咲村珠樹)

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